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ミニマリスト&作家の佐々木典士さんにお聞きしました【前編】

2015年に発売された『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は、22カ国語に翻訳。国内では16万部のベストセラー。「ミニマリスト」という言葉を、広く日本に浸透させた佐々木典士(ささきふみお)さんの2作目『ぼくたちは習慣で、できている。』は発売から2ヶ月で、すでに5万部を突破。そんな佐々木さんのツイートやブログからは、今も日々坦々と習慣をこなす、変わらない姿がうかがえます。

2作目の出版から2ヶ月経った佐々木さんが、今どんなことを考えているのか、お聞きしました。

以下、『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』を『ぼくモノ』
『ぼくたちは習慣で、できている。』を『ぼく習』と表記します。

ー『ぼく習』のあとがきで、次回は「たのしい断酒」という本を書くとありましたが、今実際、次の本を書いてるんですか?

確かに「この本が終わった次の日から新しい本を書きます!!」と宣言したんですけど、『ぼく習』で、自分が思っていた以上に全てを吐き出してしまったようなんですよね。だから、今はからっぽになってしまって、何かが溜まってくるのを待っていなければと思っています。

村上春樹さんも長編小説を書き終わった後は、自分の中にあるカオスを全部出してからっぽになってるからしばらくは休まなきゃいけないと言っていて、その感覚がわかるなと思います。今は、少しずつ次のテーマを考えているところです。

ぼくは、ミニマリズムと習慣をテーマに書き終えて、個人的な課題や悩みがなくなったんですよね。
『ぼく習』を書き終えたら、自己啓発的な格言とかアイデアとかが、全く自分の中から湧いてこなくなったんですよね。以前はtwitterでもよくつぶやいてたりしたんですけど。本当にそういう問題が自分の中で解決して、終わったんだと思いました。決めた習慣を、毎日ただ続けるだけ。そこに自分を奮い立たせるような自己啓発的な考えは必要ないようなんです。

ー私は佐々木さんのブログをすごく楽しみにしていますが、最近更新少ないなあと思っていて。笑
それも、習慣の本を書き終えたということに関係してるんですか?

今まで、ミニマリズムや習慣についてメインで書いてきましたが、やっぱり今自分のテーマが変わってきたり、次のフェーズに移っているなと感じるんですよね。個人的な、内面的な課題はほとんどなくなった。だから今、そういった今まで書いてきたようなものに対して何かを感じ取る感性が失われていると思います。

もしかしたらこれから興味を持つのは、個人を超えた社会的な問題であったりとか、そういったものになっていくかもしれません。

本を書き終えて、1ヶ月ぐらいぼーっとしてましたけれど、休んでいると飽きるし、何もしてない時、楽なことだけしていることは実は苦しいっていうのは『ぼく習』にも書いた通りなんですよね。新刊が出てもう2ヶ月経ったので、また何かしら始めたいなという気持ちもあります。

ーこの2ヶ月間、具体的に何をしていたんですか?

仕事で言えば、新刊についての取材を受けたり、プロモーションの企画を考えたり、連載を書いたりですけど、まあ結構ぼーっとしていましたね。早起きとかヨガとか運動とか、そういう習慣は崩れずに続けていましたけど。

ミニマリズムを実践していると、家事や生活は簡単になります。
そして習慣は、あまり考えずにする行動のことです。

ミニマリズム+習慣のコンボは強力で、さらにぼくは1人暮らしだから本当に生きるのが楽に簡単になったんですよね。なんだか簡単になりすぎたんじゃないかと思うぐらい。

例えば他の人だったら、会社での人間関係とか、子育てとかいろんな悩みがあると思うんですよ。だから、自分にももっとカオスなものが必要なんじゃないかと思うこともありますね。

ーそれは私も分かります。今、独身で実家にいて、会社員もやめて好きなこともやっているのですが、私もそれが楽すぎるんですね。以前は、嫌なことがあっても旅行に行けば楽しいと思っていたのですが、今もう嫌なことがないから、そんなに旅行に行きたくなくなりました。

鬱屈したものがないから、気分を変える必要がないのかもしれませんね。疲れてないのに温泉入ってもそんなに気持ちよくない、というのと同じで。

先日「定年後の習慣」について、インタビューを受けていたんですけど、定年した人ってまさにこういう問題に直面しているんですよね。働いていた時には不自由だと思っていた、決まった時間に出勤をすることや、付き合いにくい上司がいることって、離れてみると意外と悪くなかったんだなとか思うみたいですよ。結婚して子育てとかしていたら大変な事ばかりだと思うので、そういう人は自分みたいな自由な立場を羨ましいと思っている人もいます。人はどうしても、ないものねだりをするものなんでしょうね。

ー私も何かしらの負荷って、ある程度あってもいいのかなって最近思うようになりました。

あと自分は、全体的に少し飽きてるなと思ったりします。

先日対談させて頂いたphaさんともこの話をしたんですけど、40歳ぐらいになってきていろんなことを経験していると、大体のことは経験してしまっているんですよね。

例えば、飛行機に初めて乗るとしたら緊張したり、ドキドキすると思うんですけど、経験を重ねていくたびにそういうものは減っていく。だいたいこうすればこうなるんだろうっていう経験値も溜まっていく。

今住んでいるところも便利で素晴らしいんですけど、1~2年ぐらい住んでるとやっぱり飽きてくるので、また住む場所を変えてみたいなとか。

自分の経験が通用しない海外に住んでみるとか、慣れ親しんだ日本語から離れてみるとか、そういうことにも興味があります。やっぱり人がモヤモヤしてる時とかイラついてる時って、毎日同じことの繰り返しとか、固定した人間関係とかに飽きてることが多いんじゃないかと思います。だから、そういう時に環境を変えてみるっていうのは必要かなと思うんですけどね。

ーすごく分かります。

昔、人は移動生活をしていたらしいんですね。そうなると、環境が変わる度に、ここに川が流れてるとか、ここにはこんな木の実がなるのかとか、周りの環境を探索したり、色々やらなきゃいけないんですよね。

そういう時代は、常にやることがあるし常に新鮮だった。今はそういうこともやる必要がなくなって、住むところや職業が固定すると、暇になるし退屈になるんですよね。

快適さや便利さをみんな求めるんだけど、それが行きすぎると物足りなくなるという。

ーそうですね!自分も今そういうことろで行き詰まっています。

中山さんはこういう風に「インタビューをする」という新しいことに興味を持ったわけですけど、そういったドキドキする経験はあった方がいいですよね。ドキドキするとか緊張するっていうことは、できるかどうかわからない、新しいことをやってるっていう状態なわけですから。

ーはい。違うことをやってみるって、やっぱりいいですね!

先日、富士宮で富士山からコンコンと湧いてくるきれいな水を見ていたんですけど、やっぱりこうじゃなきゃいけないなって思ったんですよね。

本が2冊目も売れて成功したなとか、うまくいきそうな方法論が定まってきたなとか。そういう事って新しいものを取り入れ続けて押し流していったほうがいいんですよね。

生きていると、自分はえげつないな、汚れてるなって思う部分もたくさんあります。でも汚れないことが大事なんじゃなくて、汚れても新しいもので自分を満たし続けて、あっけらかんとしてる。そういうことの方が大事なんじゃないかなと思ったりしています。

後編は明日8/28(火)に更新します。

佐々木典士(ささきふみお)
作家/編集者/ミニマリスト。1979年生まれ。香川県出身。出版社3社を経て独立。初の著書『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は、国内16万部突破、22ヶ国語に翻訳されるベストセラー。現在、新刊『ぼくたちは習慣で、できている。』が発売中。
https://minimalism.jp/

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いろいろな方にインタビューをして、それをフリーマガジンにまとめて自費で発行しています。サポートをいただけたら、次回の取材とマガジン作成の費用に使わせていただきます。