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高橋源一郎著『お釈迦さま以外はみんなバカ』

今日は、高橋源一郎さんの『お釈迦さま以外はみんなバカ』という本について書こうと思います。

高橋源一郎さんは元々知っていたけれど、すごく好きになったのは、NHKラジオ第一の『すっぴん』でパーソナリティーを務めるようになってから。

私はこの時間帯のラジオは、すっぴんの前の番組から聞いていたけれど、『すっぴん』になってから大分内容が変わって、切り替え当時は、元々聴いていた人からのとまどいや、批判的メッセージも結構多かった気がします。

『すっぴん』は多分今年で6年目だと思うのですが、もはやその切り替えの頃飛び交った様々な意見が懐かしく思えますね。すっかりNHKラジオ午前中の番組として、多くの人の生活に定着しているんじゃないかと思います。

私もこの間6年近く会社員だったので、山梨に帰ってきたばかりの頃のように聴くことができなくなってしまったけれど、ここ1年は当時のように、再び午前中は『すっぴん』を聴く時間となっています。

それぞれの曜日が個性溢れていてとても楽しいのですが、私が特に好きなのが、金曜日の高橋源一郎さん。

その中のコーナー『源ちゃんの現代国語』では、高橋源一郎さん独特の視点で選んだ、自分ではなかなか出会えないひねりの効いた面白い本が毎回紹介されています。

そのコーナーが1冊になったのがこの本『お釈迦さま以外はみんなバカ』。

最所から最後まで、この新書を読みながら声を出して笑ってしまう、ちょっと外では読めない本なのですが、その中でも特に面白かった部分を幾つか書いてみます。

いちばんの天才は「偶然」だった。

いなにわ,せきしろ著『偶然短歌』という本は、「一見、何の変哲もない普通の文章の中に、偶然57577のリズムが含まれている」ことに気づいた著者が、あらゆる偶然の57577を紹介している本のようです。

例えば「踊り念仏」を説明したウィキペディアの中のこんな文章

「踊り念仏は、鎌倉時代には一遍上人が全国に広めたが、一遍や同行の僧らは念仏で救済される喜びに衣服もはだけ激しく踊り狂い、法悦境へと庶民を巻き込んで大ブームを引き起こした。」

この「念仏で/救済される/喜びに/衣服もはだけ/激しく踊り」の部分が偶然に57577になっているという!

他にも
「アルメニア、アゼルバイジャン、ウクライナ、中央アジア、およびシベリア」

(この、「および」が素晴らしいのだと。確かに)

ちなみにこれは、ロシア正教から生まれた「モロカン派」と呼ばれる人たちが追放された地域の名前。

一宮市立北部中学校に関する記述の中では
「柔道部・バレーボール部・卓球部・ハンドボール部・吹奏楽部」

などなど、『偶然短歌』にはまだまだ面白い短歌が溢れているようです。

日常の中にひそむ、素晴らしいなにか

佐藤雅彦著『考えの整頓』という本から、こんなことをピックアップしています。

お父さんの背広が入っているタンスをそっと開けて、どれかの背広の胸ポケットにメモカードを入れておこう。そのカードには、お父さんへのメッセージやお願いを書いておこう。お父さんがそれを見るのはいつのことかわからないけど、いつか見てくれることを期待して、そのワクワクをそっと自分の胸にしまっておこう。
「おとうさん、こんど、やきにくいこうよ、さいきん、いってないよ。」
その瞬間、お父さんの胸の中できっと何かが「爆発」するだろう。疲れがとれ、電車の中が明るく輝くだろう。それは「幸せの時限爆弾」が爆発したからなのだ・・・・。

これに対しての、高橋源一郎さんの解説は、

佐藤さんがやろうとしたのは、ふだん、目に見えない、触ることも、変えることもできない「時間」という装置を使って、幸せを未来に放りこむことだったのだ。・・・というもの。

自分も誰かにやってみたくなりますね。


『すっぴん』源ちゃんの現代国語を聞いていると、この世のどこにそんな本があったんだ!笑

みたいなことをいつも思っていたのですが、改めてコーナーがまとまった1冊を読んでいると、どれも捨てがたく面白くて、ある意味くだらなくもあるのだけれど、本当に救われます。

手元に置いて、落ち込んだ時や気分を変えたい時に開きたい一冊です。

#高橋源一郎 #すっぴん #NHKラジオ第一 #日記 #エッセイ #本 #お釈迦さま以外はみんなバカ

いろいろな方にインタビューをして、それをフリーマガジンにまとめて自費で発行しています。サポートをいただけたら、次回の取材とマガジン作成の費用に使わせていただきます。