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「山頭火全句集」を一章ずつ⑥

「山頭火全句集」を一章ずつ読んでいくこの試み。

今回は「大正五年」の章です。

全体的にどことなく悲しげなトーンの章でした。

「兵隊おごそかに過ぎゆきて若葉影あり」

など、戦争が始まった頃なのかな、ということをうかがわせる句があっただけでなく、

「鉄柵の中コスモス咲きみちて揺る」

など、明るそうな句も何となく悲しげに見えてしまうんですよ。

コスモス咲きみちて、のところは華やかで、悲しくはないのですが「鉄柵の中」という言葉が何というか・・・。

そこにあるのに触れない、とか人間は入っていけないような疎外感を感じます。

ひとつだけ出されたら「秋だな。」「いい風景だな。」と思う句ですが、章全体を読むとまた違った印象を受けますね。

山頭火がどのように思ってこの句を作ったのかはわかりませんが、この違いを楽しむのもまた一興。

全句集を読んで良かったなと思います。

「石ころに夕日しむのみ鳥も来ず」

この句は特に寂しそうな雰囲気ですよね。

夕日、って綺麗なのに鳥も来ない。

「鳥も来ない」というより、誰も来ない、で生き物の気配がないのか人々の声やざわめきは聞こえるのに鳥も来ないのか。

はたまた全然違う情景なのか。

そこはよくわかりませんがこういう瞬間、ありますよね。

さっきまで続いていた音が消えて、「え?」って。

急に静寂が耳に痛いほどになって思わず周囲を見渡すと石ころが夕日に真っ赤に染められていて、夕日が石ころにしみこんでいるように見える。

鳥も来なくて・・・。

夕日がよけいに寂しさを感じさせていますね。

私の体験の場合、この後すぐに鳥が飛んで来たりするので一瞬の緊張感と寂しさと風景の美しさに浸る瞬間は五秒くらいで終わってしまうのですが、その瞬間を切り取ったものなのでしょうか。

「石ころに夕日しむのみ鳥も来ず」

もう一度書いてみましたが、やっぱりこの句に関しては何も連想しなくても心にしみこんでくる句ですね。

「いいなぁ。」と味わっておこうと思います。



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