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【短編】〜I'm so happy〜

満月は優しい。丸くて、光あふれて。そうだね、お母さんに似てるかな。お団子にも似てるね。照らしてくれてるんだよ、僕らを、ぴかぴかと。
タンポポが言うと、
君もじゃないか満月のようなフォルムで色で。ぴかぴかと。お母さんに似ているよ。
はつかねずみが言った。
お母さんていうと、この棉かな。僕たちをくっつけて飛んでくれるんだ、偉大だよ、僕たちの母は。
タンポポが言うと、はつかねずみは
ふう〜ん、それは羨ましいなぁ。僕の母は仕掛けでとうに亡くなったから。その代わり、僕には恋人がいるんだ。
と言った。


だん、だん、だん、
と音が聞こえ、屋根裏の階段を上がってくる音がすると、
「ピッキー!!!」
と女の子の声がした。するとはつかねずみは
ちゅう
と鳴いて懐へ飛んで行った。
「ピッキー、探したわよ!」
と女の子が言うと
ちゅうちゅう、懐で幸せそうに鳴くのでした。


タンポポは
身の丈の合った恋で素晴らしい
と言うと、
月も、飛んでゆく草原も無いからね
と屋根裏部屋の床板の間に生まれた自分を諦めるのであった。
すると、
ぶち
女の子はタンポポを古い床からむしり取ると、
「ふー」
窓の外へ綿毛を飛ばすのであった。







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