着ぐるみのアルバイト

大学生の頃、お世話になっていた先輩からの紹介で不定期で着ぐるみのバイトをしていた。かわいいゆるキャラ、ビビットでカラフルなキャラ、某交通系電子マネーのマスコットなどその日のイベントによっていろんなキャラクターの着ぐるみを着てその都度いろんなイベントに参加をするアルバイトだった。

ものすごく着ぐるみの中は暑くて、夏場だと本当に倒れちゃいそうなくらい過酷なアルバイトだということは、また違う機会にお話するとして。(ただ、わたしがアルバイトさせてもらっていたイベント会社さんはこまめに休憩を入れてくださったり、塩分チャージや糖分補給のお菓子など差し入れをくださったり、かなりよくしてもらいました)

そんなわけで中はめちゃめちゃ暑いが、着ぐるみを着ていると、無邪気な子どもたち、そのこどもたちのお母さんお父さん、スマホで一緒に写真を撮ろうと近寄ってきてくれる女子高生、イベントを嗅ぎつけやってきたゆるキャラファンのおじさん等、無条件で人が寄ってきてくれてものすごくたのしい仕事だった。

7割くらいの人が警戒心ゼロでそのキャラクターとして「かわいい」と言って近づいてくれるので本当にありがたい。嬉しい。

残り3割は「着ぐるみには結局生身の人間が入っているんだよね?」というのをこちらに伝えてくる人たち

大人にボソッと「大変ですね、お疲れ様です」と声をかけられることもしばしば。心の中で「ありがとうございます」と思いながら手を振りました。これはなんかありがたい。

また違う日に、とあるお店の懇親会にゆるキャラで出席したときにはギャルのお姉さんたちに「えー!これくらいの背丈だから、これ女の子入ってんじゃん???お姉さん!良い波乗ってんねぇ〜〜↑↑↑↑」とパリピの圧を感じたり。これは怖かった。

大変だったのは小さな子ども。まだ小学校低学年位で、後者なのはあきらかに「サンタクロースはお父さんとお母さんだよ」って早めに気づいてしまったタイプの子どもだ。

一度、その手のタイプの小さな男の子に「この中って、人いるんだぜー!」と言ってボコボコとパンチされたりキックされたことがある。多分、これで痛がったり身をよじらせたりしたら相手の思うつぼだったんだろうなあ。「ほら!やっぱり人間じゃん!」って面白がれるからね、子どもが。

でもこればかりは駄目だったわたしが。

中に人が入っているのなら余計にパンチやキックをしてはいけない。(わたしはぬいぐるみをボコボコにしているネネちゃんすら苦手だ)

着ぐるみを着て、顔が見えない状態だからそういう相手にはパンチやキックをしても、大丈夫だと彼が思ったことがものすごく悲しかった。そういう大人に育ってはいけないよね

とにかくものすごく感情が高ぶってしまったわたし(着ぐるみ)は彼の両肩を掴みジッと目を見つめた。しゃがんで同じ目線で。

きっと何かメッセージを受け取ってくれたのだろう。怖くなったのか、お母さんのところへ逃げてしまったのでお母さんに手をふった。

この出来事を書いているうちに思い出したんだけど、そういえばわたしの父親も大学生のころ着ぐるみのアルバイトをしていたらしい。そして同じような経験をしている。着ぐるみアルバイトあるあるなのかも。

子どもたちがたくさん寄ってきてくれる中に、一人だけ父の足を着ぐるみ越しにずっと踏み続けたり、あきらかにみんなが分からないようなところで執拗に攻撃されていたらしい。父親はその子の手をとり、みんなが見えないところまで連れて行ったのち、着ぐるみの顔を取り「どういうつもりだ」と静かに注意した話を聞いた。そのときの時代も時代だし、今これやっちゃうと本当に駄目なんだけど(その当時でも駄目でしょとわたしは思った(笑))血は争えないなと思った。ちょっと気持ちは分かるから。同じようなことやってるし。

でも、ものすごくいろんな人と接することができるし面白いアルバイトだったな。思い出すことがとても楽しい。

皆さん、何か面白かったアルバイトの思い出話があったらわたしに聞かせてください!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?