今日、詩集が家に届くらしい。
夏の終わりから少しずつ編集・装幀作業をしていた詩集が、ようやく昨日レトロ印刷から出荷されたらしい。
今さっき、「配送中」という連絡がきた。
とはいえ、今日は村の収穫祭できつねうどんの出店をしているので、自分では受け取れない。きっと帰るころには、家に届いているだろう。
午後になって陽のあたるようになった芝生のステージでは、ものまね芸人の靴に赤とんぼがとまって、それをつかまえようと追いかけているうちに、哀愁漂う「あずさ2号」のイントロが始まってしまった。
木々がゆれている。まだまだ今年の陽の光は暑いが、テントの蔭に入っていればもう秋の風は涼しく、落葉松の葉と空が鮮明な色に澄んでいる。
文章もデザインも自分でやったとはいえ、PC画面上のことなので、実際に手に取れる形でできてくるのは、楽しみと、不手際は何かなかったかと心配な気持ちもある。
今回、印刷は「レトロ印刷」にお願いした。
というのも、何年も前に初めて買ったリトルプレス的な本が、レトロ印刷で作られたものだった。確か、渋谷のFlying Booksで買ったものだ。金色の糸で中綴じされた冊子と、その紙や活字の質感が魅力的で、手にとった。
それで、奥書に「レトロ印刷」と書いてあったのを、そのころまだ自分が詩集やZINEを作るということは考えていなかったが、なんとなく憶えていた。
レトロ印刷はリソグラフという特殊なデジタル印刷で、紙も雰囲気のある再生紙や特別な紙を、表紙と本文と組み合わせて選ぶことができる。普通に本屋で売っている、書籍とはまた違った風合いになるとおもう。
そうこうしているうちに、ものまね芸人がフィナーレで指を高くかかげると、そこにまた蜻蛉がとまって、おおっという歓声があがっている。だんだんと、木の影が長くなってきた。落葉松林から、斑の光が芝生に落ちる。
ステージは変わって、長野県親善大使のアイドルたちがMCに出てきて、楽しげにしゃべっている。その音響の感じや、東京からきたファンたちの盛り上がりをみると、かつてライブハウスで感じた、閉じられた熱狂がすこしなつかしい。
しかし、今、自分には自分のやることがあって、収穫祭を楽しんでいる人たちは自分から遠いところにいる。
休憩時間になって公園内を散策すると、桂の丸い葉が黄色く染まり、少しずつ落ちかけている。風が動くと、光がゆれて、澄んだ空を低い白雲が山の斜面を流されてゆく。芝生にねころがって、文庫本を読もうとしたけど、そんなに頭に入ってこなくて、結局、空を眺めている。
詩集は、そろそろ家に届いているころだろうか。
いい感じにできあがっていたらいい。