ラザニア at 神田
だんだんと春の兆しが見えてきた、3月のある日。
ぼくらは、お茶の水駅にいた。
今回の目的はラザニア。
ラザニアを食べるのって、いつぶりだろう。思い出せない。もしかして、食べたことないのか。いやそんなはずはない。
そんなことを考えながら、ニコライ堂を通り過ぎ、小川町の方へと歩いていく。
お店に着いたものの、やはりラザニアを食べた記憶は思い出せなかった。
大通りから、路地に入ると、トラットリアカンティーニはあった。
(この旗が目印)
この日はたまたまラザニアDayなるものが実施されていた。ラッキー。
地下へ続く階段を降りる。店内はこぢんまりとしていて、カジュアルな印象。スーツ姿のサラリーマンやOLがちらほら。まだ12時前だったので、そこまで混んではいない。
席につくと、もちろんラザニアを注文する(ラザニアDayはラザニアのみの提供)
まず、有機野菜のサラダが出てきて、ついでたっぷり野菜のスープリボリータと全粒粉の自家製パン。
小さい頃、野菜嫌いだったのが嘘のように、体が野菜を欲している。野菜がおいしいと感じるのは、年を取ったおかげか。すべての野菜に敵意を持っていたことが懐かしい。
スープはやさしくて、ホッとする味。自家製というパンもモチモチでおいしい。
そして、とうとうメインディッシュのおでまし。この頃になると、店内も満席になる。
たっぷりのチーズに焦げ目がついている、その姿はどうしてこんなにも人を魅了するのだろう。おいしい料理は、目でも人を楽しませる。
何層かに重ねられたソースとチーズ、合間に挟まる野菜と平たい板状のパスタ(そのパスタがラザニアという名称であることをはじめて知る)
その最高の組み合わせを見つけるまでにどれほど時間を要したのだろう。あまたの料理人が試行錯誤した成果が目の前にあるのだと思うと、心して食べねばと思う。
スプーンに小さなラザニアをつくり、口に運ぶ。
チーズの香ばしい香りに、ソースと野菜、パスタの完全なる融合。外見だけでなく、中身も備わっているのか。まったく隙がない。うますぎる。
それにしても、チーズが伸びるのって、なぜあそこまで食欲をそそるのか。
結局、最後まで、ラザニアを食べた記憶を思いだすことはできなかった。
これからは、このお店のラザニアの味が、ぼくが思うラザニアの味になるのだ。
そんな勝手なことを思いながら、会計を済ませ、階段を上がると、気持ちの良い春の空が広がっていた。
最後まで、読んでくださってありがとうございます!