2月に読んだ本、簡単なまとめ。

1、夕べの雲 庄野潤三

これほど日常を日常のまま、切り取った作品があっただろうか。今日あった一日の出来事を、家に帰ったら家族に話す。そんなどこの家庭にもありそうな瞬間の連続がこの小説の主題だ。読んでいて退屈だと感じる人もいるかもしれない。けれど、その平凡さにだんだんと病みつきになっていく。この小説を読んでいるときは、妙に平和な気分で、まわりの時間がスローリーに見えた。誤解を恐れずに書くと、劇的な人生を描くことは容易い。けど、ありふれた日常を小説に昇華させる、人に見てもらえる形に仕上げることは至難の技だ。ありふれた日常でも小説になる。その事実にぼくは心底驚いた。こんなに正直な小説は見たことがない。普通の人の普通の人生。それは決して刺激的ではない。けど、深く心をとらえて離さない。



2、春になったら苺を摘みに 梨木香歩

自分が理解できないものに対して、人の反応は大きくわけて2つにわかれると思う。拒絶するか、それでも理解を試みようとするか。相手の事情や育った環境、習慣...。それらを知ろうとすること。その努力をせずに、表面だけで判断するのはとても愚かなことだ。理解できないからといって、頭ごなしに否定するのも違う。下宿のオーナーであるウェスト夫人は、異文化のシャワーを浴び続け、「理解はできないが受け容れる」という答えを実地から導きだした。自分が信じることは他人にも当たり前のことだとは思わず、他人の信じることは自分の意にそぐわなくても尊重した。しかも、彼女はその考えを他人だけではなく、家族にも適用した。完璧に理解することはしなくてもいい。けど、互いの文化を尊重しあうことができれば、世界はいまよりももっと安心できる場所になるのかもしれない。




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