8月に読んだ本

8月は眠かった。とにかく。

小説を読む時間はいつも決まっていて、ベッドに入ってから目を閉じるまでだ。調子がいいときは、40ページくらい読むと、まぶたが重くなって、自然と眠りにはいれる。ぼくにとって、寝る前の読書は、ここ数年、睡眠導入剤のような役目を担っている。

ただ8月は、5ページくらい読んだらもう眠くなって、文字が頭にはいってこなかった。先へ進まなかった。亀の歩みのような読書だった。

エッセイや実用書は、空いている時間に自由に読むのだけど、小説はこのスタイルがいつの間にか定着していた。いつからそうなったか、理由もよくわからない。

では、8月に読んだ本たち。

1、庄野潤三の本 山の上の家

庄野潤三、やはりいい。この本には、庄野潤三が長年住んでいた家の写真、エッセイ、未収録の短編が収録されている。彼が書く文章は、素直で、飾り気がなく、すとんと胸に落ちてくる。難しい言葉を使わずに、身の回りの平凡な日々を、等身大で、やさしく愛に満ちた視線で見つめる。その文章に触れると、平和な気持ちになれる稀有な作家だ。

2、本を贈る

本が自分たちの手元に届くまでには、たくさんの人の想いや手間がかかっている。そんなあたりまえのことに気付かせてくれる。編集者、装丁家、校正者、印刷、製本、取次、営業、書店員、批評家・・・。それぞれの喜びや楽しみ、苦労や工夫。本を必要としている人に、本が届くのは、本に携わるひとりひとりの強い気持ちの結晶なのだ。

3、我らコンタクティ 森田るい

どんなに無謀な挑戦でも、自分たちの手で、なにかをやり遂げるって、それだけで、楽しいし、血がたぎる。無計画、上等。ロケットを一人で制作していることを「バカだ」と笑い飛ばすことは簡単だけど、熱中することがあるということは、それだけで尊い。

4、ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集 斉藤倫 画 高野文子

なんだかやさしい気持ちになれる一冊。ぼくは、これまで詩にはあまり触れてこなかったのだけど、本文中にでてくる「ことばに、ならないものが、詩なんだよ」「ことばは、ことばになる前は、ただの音なんだよ」という言葉に、腑に落ちるものがあった。意味がよくわからないという感想を抱くことが多かった詩だけど、意味を探るのではなくて、音として感じればいいのか。頭で理解しようとするのではなく、心の奥で感じる。

5、結婚式のメンバー カーソン・マッカラーズ

「緑色をした気の触れた夏のできごとで、フランキーはそのとき12歳だった」この書き出しですぐに心を掴まれた。思春期特有のいらだちと自分勝手な妄想。行き場のないパワーを持て余し、わけのわからない行動に出る。振り返れば、「なんであんなことしたんだろう?」ということも、その当時はそうするしかなかったし、ほかに方法がないのだ。変わりたくて、何か人と違ったことをする。けど、結局はなにも変わらない、あの10代のなんともいえない感じが鮮やかに。

他に読んで、面白かったのは、

テレビ東京の「家、ついて行ってイイですか?」のディレクターによる、人を惹きつける表現法について。



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