ホット・バター(新大久保のための下書き)
失うものが多すぎた。けれども目の前のにごった夜明けに、あと少しだけ手が届かないだけさ。少しの風にもさらわれてしまって、陽気な言葉も出せない今を、新大久保のベンチに座ってホット・バターは過ごす。夜明け。ホット・バターは夜の絹糸を自ら生み出す蚕となり、それを編む人間機械にもなるだろう。
恋人の一人でも作れば気分も変わるだろうか。しかしホット・バター、つまり彼女の血で作る子など、また同じ、発作の子を産むばかりなのではないか。少しの風にもさらわれてしまう子。かつて日本には、仁義のため