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北国の空の下 ー 週末利用、自転車で北海道一周【22】8日目 女満別〜網走〜ウトロ① 2015年9月26日

『週末北海道一周』第5レグは、秋色のオホーツクから知床峠を越えて、根釧原野へ轍を進めます。

9月下旬。上空から見下ろす朝のオホーツクの大地は、牧草地、耕作地、森林に湖水の織り成すモザイク模様に彩られていました。この中を一日走るのだと思うと、胸の高まりを抑えきれません。
天気予報では「雲の多いハッキリしない天気」と出ていたが、石狩山地を飛び越えて北見盆地の上空に出た途端、見事に雲が消えたものだから、嬉しさもひとしお。

但し、50人乗りジェット機に乗客は9人。新千歳発7時半と早い上、土曜なのでビジネス客が少ないことも理由でしょうが、採算性が大いに気になってしまいます。

▲ 女満別上空にて
▲ 朝の女満別空港にて、旅装を整える

◆ 再び、卯原内へ

朝8時半、飛行機は定刻通りに女満別空港に着陸。今回はいよいよ知床峠を越えて、オホーツクから根室地方に分け入る一泊二日の旅です。

9月中旬に出張と休暇を兼ねて東京に戻り、秋冬ジャージーの新作を色々買い込んできました。その中から、カペルミュールのクラシックなメリノ風のジャージーをザックに入れてきました。
今日着ているのは、海外駐在する前から愛用しているSTEM DESIGN のグレーのニットジャージー。

本日の旅程には余裕があるので、まずは前回訪れた能取湖畔の卯原内を再訪することにしました。9月も下旬となり、珊瑚草が赤く色づき、見頃を迎えている模様。

9時過ぎに女満別空港を後に走り出しました。卯原内へは約20Km。
まず、網走湖の南岸まで10Kmほど平地を走り、続いて丘陵の上へ50mほどの標高差を登ります。
登り口に「サラカオーマキキン川」なる、一昔前の競走馬のような名前の川がありました。アイヌ語では「サル・カ・オマ・キキン」、「葦原・の上を・入っていく・キキン川」の意味と、河畔の看板に記されている。川のほとりに赤い車が停まり、傍にサングラスをかけた強面の男性が立っています。一瞬身構えるが、地元の高校の強歩大会のチェクポイントでした。

丘陵の上には農地が広がっていました。
秋も次第に深まりつつあるこの時期、平地でもそろそろ木立には黄色や紅色が混じり始めています。清涼な朝の大気の中、ウォームアップということで、ゆっくりとペダルを回すつもりが、道は卯原内まで概ね下り基調ということもあり、ついつい飛ばしてしまいます。

▲ 卯原内への道

卯原内のサンゴ草群生地には、海外からの旅行者も多く見られました。そのうちの一組の夫婦が、記念撮影をしています。前を通り過ぎようと立ち止まると、にこやかに笑って道を譲ってくれました。その雰囲気から、もしやと思って聞いてみると、やはりタイから来たそう。
残念ながら私の幼稚園児レベルのタイ語は殆ど通じなかったが、懐かしく嬉しくなりました。

湿地帯が隙間なく朱に染まっている、というわけではなく、ところどころに禿げた場所も見られますが、それでもかつて見たことがない、独特な美しい風景です。岸から全容を俯瞰するのも良いが、木道を歩いていって、身を屈めてみると、毛足の長い深紅の絨毯の中にいるようです。

▲ 卯原内の珊瑚草群生地

先へ進む前に、卯原内駅跡の蒸気機関車に挨拶に立ち寄ると、幼稚園児と保母さんたちがいて、こんにちは〜、と手を振ってくれました。

◆ 卯原内→網走

ここからは、前回も走った、国鉄湧網線跡のサイクリングロードを行きます。この道は網走市内までずっと続いているので好都合です。
両側を林に包まれた緑のトンネルの中、アップダウンを繰り返しながら道は続きます。やがて網走湖岸に出ました。このサイクリングロードから網走湖を眺められる区間は長くはないのですが、国道よりも一段高いところから、湖の広がりを堪能できます。

▲ サイクリングロードから網走湖を望む

なおも、明るい並木道のような雰囲気の中を走っていきます。既に落ち葉も多く、タイヤの下でかさこそと鳴っています。落ち葉の積もったシングルトラックなど、もう何年も走っていません。昔、MTBでよく走りに行った、上越国境の三国峠や房総山中のシングルトラックを思い出します。

下の写真をFBにアップしたところ、バンコク在住のドイツ人の友人が "Looks like in Germany !" とコメントをくれました。
秋のヨーロッパには、30年近くも前に行ったきりで記憶がありませんが、北海道は緯度が高いから、秋の風景は内地より欧米に近いのでしょう。

▲ Like in Germany !

網走刑務所の近くでサイクリングロードは終わり、一般道を走って網走市内に入りました。

学生時代、網走には縁がなくて、一度も来ませんでした。その前の、高校時代の初めての北海道旅行で、ちょっと立ち寄ったことがある程度。8月のライドの時も、さっと通り過ぎてしまいました。

なので、今回はここで昼食をと思い、情報誌で美味しそうな店も物色してきました。人口3万8千人の小都市、なおも急減が続いているそうですが、魚介類にも農産物にも恵まれた土地故、大いに食指の動く店が少なくありません。
しかし、まだ11時。腹も減っていないし疲れてもいない。

そんなわけで今回も、網走は通過するだけになってしまいました。赴任中にまた来る機会はあるでしょう。次は自転車とは関係なく、流氷の季節にきてみようか、とも思います。

◆ 網走→小清水

国道244号線を一路、小清水へ向かいます。この先約8キロの鱒浦までは前回走っています。

陸風が強さを増してきました。というか、ここまでは概ね風を背にして走るか、さもなくば木立の中や市街地を走ってきたので、風を感じることがなかったのでしょう。
風力4くらいでしょうか、横風であり、風に立ち向かう、という感じではありませんが、思ったようにペースがあがってくれません。

木造の小さな駅舎が残る北浜駅を通り過ぎると、濤沸湖の湿地帯にさしかかります。遮るものがなくなった分、風は一層厳しくなりました。時速22,3キロで進むのがやっと。

▲ 濤沸湖岸を行く

濤沸湖は、ラムサール条約にも登録された野鳥の楽園。湖、というか沼と、海を隔てる砂州は原生花園としても有名ですが、さすがに原生花のシーズンは終わりと思われます。
35年前の初めての北海道旅行の時、阿寒湖、摩周湖などを巡ったあと、釧網本線で浜小清水までやって来て、濤沸湖のほとりにあるユースホステルに一泊しました。凍結した湖の果てに沈む夕日の美しさは今でも覚えています。
しかしさしあたり本日は、一直線に伸びる国道と、沼地を渡って激しく吹く風が全て。

10月末まで開設される臨時乗降場、原生花園駅で休憩。ここには展望台があり、前回訪問した能取岬を遠望することができました。
行手には知床連山が見えるはずですが、今日は靄の中に隠れています。うっすらと輪郭だけ見えるのは海別岳でしょうか。

▲ 北浜原生花園駅

この先、浜小清水駅に道の駅が併設されているようなので、そこで昼食休憩ということにして、走り出しました。

道の駅には幾つかの小さな土産物屋が入っていました。どの店でも、鹿の毛皮が目に付きます。1万8千円というのが相場らしい。
ここまで、まだ一度しか鹿に遭遇していませんが、この先はさらに鹿の生息数増加による被害が深刻なエリアに入っていくことになります。

ここにはフルサービスのレストランはなく、麺類など軽食を出す喫茶カウンターのようなものがあるばかりでした。この先、食いっぱぐれは嫌なので、取り敢えずそばを啜り、先へ進みます。

※ 横風がますますボディブローのように効いてきます…が、オホーツクの道はやはり素晴らしい。想像もしていなかった絶景に心躍ります。

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