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北国の空の下 ー 週末利用、自転車で北海道一周【18】6日目 遠軽〜中湧別〜佐呂間② 2015年8月15日

「週末北海道一周」6日目は、サロマ湖周辺を走っています。湧別から第一湖口まで砂州を走った帰路は追い風 。途中、キャンプ場そばの展望台に登ったりしながら、来た道を引き返します。

砂州先端のオートキャンプ場

湖の南西岸を走る

サロマ湖とオホーツク海を分ける砂州を往復し、南へ向かい、国道238線に出ました。
北海道一周のメインルートに戻ったわけですが、国道はサロマ湖畔から少し離れ、農地の中をアップダウンを繰り返しながら続いています。前回と同じような変化の少ない風景で、あまり面白くはありません。
部分的に湖岸を辿る生活道路もあります。芭露の先、国道は小さな半島の基部を直線的に越えていくが、半島を忠実に巡っていく道があるのです。ほんの一時ながら、通行量も少なくホッとしました。
芭露とは、アイヌ語の「バロ」、河口の意だといいます。先日読んだ「北海道『地理・地名・地図』の謎」(実業之日本社)という本によると、アイヌ語の地名には川に因むものが多いそう。これは、アイヌ民族の生活は、川が中心にあるためといいます。

芭露付近で、湖岸の生活道路から

海のほうを眺めると、アーチ型の橋らしき影が見えます。第2湖口にかかっているのでしょうか。
明日は、寄り道して、あのあたりも走るつもりです。
お盆休み故か、ライダーの数が、二週間前より相当数多くなっています。
三輪スクーターに跨った一団が追い抜いていきました。このような乗り物には、初めてお目にかかりました。普通自動車扱いになるのでヘルメットは義務付けられていないのか、金髪や長髪をなびかせながら私を追い抜き、その先で右折して、内陸の佐呂間市街の方へ向かっていきました。

計呂地交通公園


やがて、見るからにローカル線の駅前といった雰囲気の場所に出ました。旧湧網線の計呂地駅跡です。
蒸気機関車と、客車列車が2両、かつてのホームに停車していました。今では、ライダー向けの簡易宿泊所として活用されているのです。

計呂地交通公園

屋外に木製のベンチとテーブルが置かれ、傍にバイクを止めた初老の男性が腰を下ろしていました。こんにちは、とお互いに挨拶を交わし、私は駅構内を見学をさせて貰うことに。
小ぢんまりした木造の駅舎も 、よく手入れされ、事務室として活用されています。少し離れたところには広場があり、盆踊りの屋台が組まれ、何やら準備中でした。古い施設が活用され、線路はなくなっても駅の跡がコミュニティの中心となっています。思わず嬉しくなってしまいました。

湖に向かって、木道が延びています。サンゴ草の群生地、と案内板にあります。サンゴ草が紅く染まるのは9月中旬以降と聞いており、まだ早過ぎますが、折角なので足を伸ばしてみました。
木道の上に、小さな齧歯類の死骸がありました。トガリネズミのようです。ネズミ、という名だが実際はモグラの一種で、最小の哺乳類の一つと言われ、絶滅危惧種に指定されている、と読んだことがあります。
珊瑚草が紅く染まる季節にはまだ早いが、この湿原は、葦の原の向こうに草原と白樺の木立が爽やかに広がり、日光の戦場ヶ原を思い出させるような風景です。ただ、蚊がものすごい。

計呂地サンゴ草群生地

木道のどん詰まりは小さな広場のようになっていて、先ほどの初老のライダーがおり、少し立ち話しました。
旭川から来たそうで、内地からツーリングに来る仲間を待ちながら、道東を走っているそうです。
バイクが羨ましいと思うのは、快適な野営、というのも変ですが、単なる旅費節約のための野営でなく、それを楽しめるレベルの道具を積んで、かつ爽快な走り自体も楽しめること。だから簡易宿泊施設でも、ソロキャンプでも、比較的不自由がありません。

15年ほど前、私もミニバンにMTBと野営用具一式を積んで、素晴らしい一週間の夏休みを北海道で過ごしました。ホテル泊まりの自転車旅も身軽で良いですが、毎夜星空を眺めながら眠りに落ちるひと時もまた懐かしく思い出されます。

計呂地駅跡に戻ると、焼き魚の匂いが漂っていました。空腹感が増してきました。

空きっ腹を抱えて…

さらに内陸の牧草地をひとしきり走り、やがて湖岸の小集落である富武士に至りました。本日泊まるホテルは、集落の外れにありました。
サロマ湖沿岸は、意外と宿泊施設が少ない様子。そのためか、駐車場は乗用車だけでなく貸切バスも多く、ホテルは大繁盛です。

※このホテルは、既に閉館しています(2022年12月現在)

ところで、周辺に、大衆食堂か、せめて一杯飲み屋くらいはあるだろうと思ってきたのですが、そのようなものは全く見当たりません。
フロントの女性に尋ねてみました。飲食店が多い佐呂間町の中心部までは、自動車で15分ほどかかるそう。北海道で自動車15分、といえば、まかり間違えば20Km程度。食事のために往復40Kmは御免被りたい。ホテルのレストランは予約のみ。

「あと、この先1Kmほどのところに道の駅がありますが、6時で閉店なんですよね…」と、申し訳なさそうに彼女は言います。
でも要するに、自転車乗りにはそれしか選択肢はないのでした。

部屋に荷物を置いてそのまま飛び出し、再び走り出す。ホテルからはひとしきり上り坂になるが、実際には1Km弱、800mほどのところに、道の駅サロマ湖がありました。
背後には威圧感のある山が聳えています。幌岩山といって、山頂からの眺望は格別だそう。
道の駅にフルサービスのレストランはなく、軽食のカウンターがあるばかり。取るものもとりあえず、一番腹ごたえのありそうな豚丼を注文。サロマ湖といえば帆立貝が有名ですが、近年は豚肉のブランド化にも注力しているそうです。
カウンター内の小さなガスコンロで調理しているため時間が掛かりましたが、学生アルバイト風の女の子の素朴な笑顔と明るい接客が、何とも可憐で気持ち良く、全てを許してあげたい気持ちでした。豚丼もまた、分量的に夕食というよりはスナックといった風であったが、美味しく戴きました。

道の駅の背後の高台に、公営の宿泊施設らしき建物があります。まっすぐホテルに戻るのも勿体なく、そこまで漕ぎ登ってみると、雲が多いながらもなかなかの夕景が広がっていました。

道の駅サロマ湖 後背地からの夕景

キムアネップ岬の落日

今日の走行距離は77Kmほど、脚はまだまだ残っています。そこで、夕景の名所と紹介されているキムアネップ岬まで走ることにしました。
ひとしきり、森の中のアップダウンがあり、続いて夕暮れの湖岸を走ります。眺望が開け、何やら気持ちも晴れ晴れとしてきます。
地図に従って左に折れると、道はトウキビ畑の中を湖水に向かって伸びていました。

道の駅から10Kmほどのライドで、キムアネップ岬に到着。葦の原の向こうに、灰色の雲と黄金色の夕日を映した湖水は、なにやら儚げなラベンダー色のようにも見えました。スコットランドから来たというカップルが湖畔にキャンピングチェアを並べ、静かな夕べを楽しんでいました。

キムアネップ岬 夕景

この場を立ち去り難い思いと、暗くなる前に宿に戻って温泉で汗を流したいという欲求の葛藤を覚えつつ、私も湖畔の静寂をしばし楽しみました。

<第6日目 走行記録>
走行距離 72.5Km(遠軽〜富武士) + 20.6Km(富武士〜キムアネップ岬往復)
所要時間 3時間18分 + 54分
平均時速 22.0Km/h & 22.7 Km/h
消費カロリー 1614 Kcal + 458 Kcal

ー 第6日目 以上 ー

※ 7日目もサロマ湖、続いて能取湖を巡り、能取岬へ。どこまでも走りたいような幾つもの道と、感動の絶景が待っていました。

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