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北国の空の下 ー 週末利用、自転車で北海道一周【19】7日目 佐呂間〜網走〜女満別① 2015年8月16日

「週末北海道一周」7日目。朝のサロマ湖は、どんよりと曇っていました。今回は前回の反省を踏まえ、日焼け止めを持参したのですが、使うことなく終わりそうです。
いずれにせよ、このひんやりと心地良い気候は、自転車乗りにはありがたい。
地図を見る限り、今日のルートには、ここぞというランチポイントが見当たらないので、朝食をしっかりとって出発しました。

朝のキムアネップ岬〜浜佐呂間

今日の旅程ははっきり決まっていません。
女満別空港発18時15分の新千歳空港行きフライトを予約していますが、そこまでのルートは、天候、気分、自分のヘタレ具合、等によって臨機応変に対応するつもり。
因みに、国道を一目散に走れば、網走駅まで52Km。しかしこれでは、ワッカ原生花園、湧網線の廃線跡を利用した能取湖畔のサイクリングロード、能取岬等、多くの見どころ・走りどころを省略することになってしまいます。
また網走から女満別空港まで、時間と体力に余裕があれば、少し遠回りして走りたい道もあります。
走りながら、どの辺までルートに取り込むかを考えるつもり。

昨夕走った道を、再びキムアネップ岬へ向かいます。静かな朝の湖水では、浅瀬で青鷺の番が憩っていました。
岬に向かう湖岸沿いの道端には、野イチゴが群生していました。昔から、サイクリング中にはよくおやつにしていました。お目にかかるのは久し振り。幾つか摘んで、口に含みます。最初はよく熟していないのを選んでしまい、渋い酸味が口の中に広がりました。

野いちごの群落

※後日知ったこと。北海道で自生する野イチゴをよく洗わずに食べると、エキノコックスに感染するリスクがあるそうです!私みたいな不用意なことをなさらぬよう。

キャンプ場の駐車場で出発準備をしているライダー達と挨拶を交わし、半島の反対側の道をたどります。

白樺だろうか、ドロだろうか、幹が白く葉色のみずみずしい木が緑のトンネルを作っていました。車は殆どやってきません。清々しい道です。

朝の湖岸道路

と、森の中に、ユースホステルが姿を現しました。ここには昔、泊まったことがあります。こんな森の中だったろうか。サロマ湖のユースホステルは、設備が良く食事も美味しいと、ホステラーの間で評判だったことを思い出しました。

※このユースホステルは、既に閉館しています(2022年末現在)

サロマ湖畔ユースホステル

道はやがて浜佐呂間に至り、国道と合流。行く手には、栄浦のリゾートホテルや、第2湖口にかかるアーチ橋の姿が大きくなってきました。
国道は、これらのあるエリアを通ることなく、いわば三角形の斜線のように、能取町の中心部を一直線に目指しています。ここは湖畔を辿る道を選択。
陽は差してこないが、青空が覗き始めました。
海風が真正面から吹きつけるのがやや厳しいが、道の両側は緑に包まれ、木の間から湖水が輝いています。自動車もあまりやってこない。森の冷んやりした大気が、肌に心地よい。

ワッカ原生花園

常呂町の栄浦に到着。一般に、サロマ湖観光、というと、この辺りが中心になるようです。湖を一望できるポイントがあり、リゾートホテルもあります。それでも観光地然とした感じではなく、少し走ると漁港の雰囲気となりました。

栄浦からのサロマ湖の眺望

栄浦大橋を渡り、ワッカ原生花園へ。ここは「日本最大の海岸草原」とHPに紹介されています。

ネイチャーセンターと駐車場がある場所から先は、車は進入禁止となり、歩くか、自転車をレンタルするか、観光馬車を利用することになります。小心者故、自分の自転車で乗り入れていいのか、また入園料は要らないのか心配になってしまい、一応売店で確認。
もちろん、どちらも杞憂で、原生花園の花々と生き物たちを紹介するパンフレットを頂戴して、原生花園へ乗り入れました。

鈍重そうな重種の馬たちが、観光用の馬車に繋がれていました。ここの馬たちは自転車にすっかり慣れているようで、傍を通り過ぎても気にかける様子がありません。
脱線するが、北海道の観光地では、もっとホース・トレッキングを取り入れてはどうかと思います。子供の頃、身近に馬がいる環境で育ったので、世話が大変でお金もかかることも、故に料金も相応のものとなってしまうこともわかります。ただ、北海道の魅力を最大限体感するには格好の手段とも思うし、経験者ならばオホーツクの砂浜を疾駆するなんて、堪えられない快感だろうと思うのであります。

前回のライドでも、浜頓別のベニヤ原生花園を訪れましたが、200キロほども南にあるワッカ原生花園は、咲き乱れる花の種類も数も多いような気がします。
原生花の間を伸びる、細い舗装路。
整備された幹線道路を快走するのも嫌いではないが、もともとMTBに乗っていたこともあって、こういう田舎の旧道のような道は最も好むところ。しかも、ここでは正面から自動車が来る心配はないし、両側はまさに可憐な原生花の生け垣。正直、一つ一つの花をじっくり眺め、その可憐さや力強さに心打たれるのも良いが、オホーツク海とサロマ湖、広い空と砂丘、その狭間に咲き乱れる花々の群像と細い田舎道、そんなものが総体となって風景を形作っているわけであり、それら全てに包まれている感覚を味わいながらゆったりと流す時間が、何よりかけがえのないものと感じられました。


ワッカ原生花園の道

昨日、対岸から眺めていた、第2湖口にかかるアーチ橋は工事中。傍らの仮橋を渡ります。第1湖口同様に、ここも激しい流れが見られました。

サロマ湖第2湖口

その先はダート。この辺りまで来ると人影は極めて疎らであり、やがて道が行き止まりとなります。ネイチャーセンターから約4.5キロ。園地にレンタサイクルでやって来た老夫婦がいるばかり。この先、前日行った第1湖口までの砂洲は、自然保護のため立ち入り禁止になっています。よってこれでサロマ湖一周87キロのうち、走行可能部分は完走したことになります。

行き止まり地点

踵を返し、東ヘ。今度は、管理棟の方へは向かわず、海沿いを直進。
点描のように花々が咲く茂みの間を、細い道がどこまでも伸び、その向こうには海が広がっています。
左右にオホーツク海とサロマ湖が交互に現れる原生花の生垣の間を、道はどこまでも伸びていました。
やがて、道はサロマ湖東端の、鐺沸と呼ばれる沼地のようなエリアに出ます。かつてはここが唯一の湖口でした。今では、水鳥のサンチュアリのような趣。
続いて森の中へ。雲が切れてきたのか、木漏れ日が路面を照らしています。
どこまでも、どこまでも、続いていってほしい道でした。

ワッカ原生花園から濤沸を経て伸びる道

常呂〜能取湖岸へ

やがて森を抜けると、無機質な倉庫が何棟か集積している場所に出ました。地図によれば、さらに森の中を走っていく道もあるようですが、入り口まで行って覗き込んでみると草深いダートに見えます。
それより何より「7月5日 熊出没」なる立て看板がありました。そんなことも全く知らずに、人気のない森の中を一人走ってきたわけであります。

肝を冷やしました…

青空が広がりました。しかし気温はさして上がらず、涼風が心地よい夏の終わりの一日です。

再び、オホーツク国道へ戻ります。やがて「アドヴィックス常呂」という立派なカーリングホールが姿を現しました。今年の4月、札幌に着任した頃、札幌の月寒体育館でカーリングの世界選手権が行われていましたが、このような立派な施設があるならば、カーリングのメッカであるこの町で開催すればよかったのに、とも思います。
その先から、旧国鉄湧網線の廃線跡を転用したサイクリングロードが、国道と並走しています。迷わずそちらを選びました。北海道のサイクリングロードは一般に、内地に比べると利用者の密度が大変に低く、遠慮なく飛ばすことができます。
ただ、そのために、昼食をとろうと思っていた常呂の市街地を通ることなく、気がつけば町外れの常呂川にぶちあたっていました。この先網走まで、飲食店のありそうな集落も、道の駅もルート上に見当たりません。昼はコンビニのおむすびかな、これは。
一旦国道に戻り、漁港のある東浜という集落から、再び廃線跡のサイクリングロードが始まります。
ホタテの貝殻の、膨大な山がありました。

ホタテ貝の貝殻の山。彼方に能取岬を臨む

昨日から、農地に、ホタテ貝の貝殻を砕いて散布してある様子をよく見かけます。カルシウムに富んでいるそうなので、土壌改良に有効なのでしょうか。ホタテ貝の貝殻の処分は、生産地における大きな問題ですが、近年は抗菌機能が注目され、シックハウス症候群対策として、セラミックなどに利用されているそうです。
起伏のある、直線的な道が続いています。海岸線は湾曲しており、彼方のそれが尽きるところに、平べったい隆起台地の能取岬が姿を現しました。

※ どこまでも走って行きたくなるような道が次々と現れる、夏の終わりのオホーツク。引き続き能取湖岸のサイクリングロードへ轍を伸ばしていきます。

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