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人に教えて成長する仕組み

こんにちは。ひいろです。

かぼちゃとレバーの煮物を作ったら思った以上に美味しかったです。
今日はだしで薄めてうどんにでもしようと思います。

今日は東洋大学の伊藤氏他1名の論文

説明はなぜ話者自身の理解を促すか
—聞き手の有無が与える影響—

を読んだので書いていきます。

はじめに

人に教えたり、プレゼンテーションしたりするとその内容についての理解が深まる

そんな経験ないでしょうか?

大学で勉強会を開催する身として
私は結構その経験があります。

しかし、説明する環境によって理解の深まりの度合いも変わってくるようです。

今回の論文は
説明する側が説明によって得られる効果(内容理解)を
説明自体に焦点をおいて研究しています。

つまり、聞き手からのリアクションがない状態でも
効果はでるのかといったことを検証します。

理解と説明の研究

心理学には様々な分野があるようですが
特に「理解と説明」を扱った研究領域とその内容を紹介します。

自己説明研究
個別指導研究
共同学習研究

自己説明研究では
問題解決中に思考内容の自己説明を行わせ、
そこで生成される推論が多い人ほど成績がよいと指摘されています。

つまり、問題を解く中で自分がどういうステップを経て今に行きついているのかを考えることが内容理解につながりやすいということです。

前回の記事で少し触れたメタ認知に近いのかなと思ったりします。


個別指導研究
マンツーマン指導での相互作用や学習効果を検討する分野です。

そして、この分野も
学習者だけでなく指導者にも学習効果がみられることを指摘しています。


共同学習研究では
個人ワークよりもペアワークでの活動の方が説明的活動が活発なため内容理解がよいとしています。

これに関して
問題解決のやり取りは「課題遂行者」とそれを吟味する「モニター役」に分化し、これにより理解の深まりが支えられているとされています。

モニター役は課題遂行者のやり方を批判的に吟味し
課題遂行者はそれに対応することで解法を洗礼させるということです。

確かにプレゼンとかも
ペアに限らず他の人から突っ込まれることで、より良いものになっていくと思います。

問題提起と仮説

上記の3つの領域での結果は相手からの相互関係や、自己完結によるもので
説明行為そのものには焦点をあてていません。

聞き手からの具体的な質問や批判がない状況でも
説明者の理解を促す効果は得られるのでしょうか?

研究では、
説明自体に効果に対して2つの可能性を示唆しています。

1:説明を生成する行為が理解を促す可能性
2:相手の反応がモニターとして機能している可能性

1:説明を生成する行為が理解を促す可能性

他者に向けた説明が自己説明と同様に機能してるとすれば
説明の生成だけでも理解が促進されると考えられます。

2:相手の反応がモニターとして機能している可能性

具体的な質問などがなくても
うなずきや返事などから聞き手の理解状況を予測することはできます。

こうしたフィードバックが
共同学習研究でのモニター役に近い役割をはたし

結果、説明者の理解を促していると考えられます。

実験内容

実験は大学生を対象に統計学の内容をつかって行われました。

流れとしては、
統計学の内容についての説明を読んで、他の人に説明してもらいます。
その後確認のテストを受けて説明者の理解度をはかります。
テストには基礎問題と理解度問題として少し発展的な内容の問題が組み込まれています。

実際に集まった大学生を3つのグループに割り振ります。

1:対面群
2:ビデオ群
3:統制群

1:対面群
実際に対面で説明するグループ
このとき、
説明者は「はい、いいえ」で答えられる質問以外を禁止
聞き手も「はい、いいえ」以外の発話を禁止しています。

2:ビデオ群
対面で説明ではなく
説明を録画して後で見てもらうという設定のグループ
相手からの反応が得られない状況です。

3:統制群
説明行為をしないグループ
統計学の内容をよんで他のグループと同じくテストを受けます。

対面群、ビデオ群については、説明を録画し
説明での使われている発話を分類しています。

説明効果

結果と考察

説明効果2

実験でのテスト結果は上のようになり、
対面群において効果がでていることがわかります。

また、ビデオ群と統制群に差がみらないので
説明生成自体には理解の促進に貢献しないことが示唆されます。

そして、先ほど画像にあった分類した発話と組み合わせて分析したところ、
説明行為の理解促進効果は説明者自身の発する
意味付与的説明」「繰り返し(意味)」に起因するようでした。

ビデオ群にもこれらの要素は含まれていたようですが
対面群の方が多く含まれおり

これは、聞き手の否定的な反応に対して
意味付与的説明などが行われていったと考えれらます。
もっとも実験では聞き手は「はい、いいえ」でしか回答できない条件下でした。

相手の反応がモニターの作用を担っていた可能性は十分にありそうです。

最後に

反応してくれる相手の有無は説明行為の理解促進効果に大きく関わってくるようです。

しかし、今回の実験では
テキストをみて直ぐに説明を行ってもらったので
現実の状況とは少し差異があるように思えます。

たとえば、
誰かに教えるための内容を考えるとき
レジュメやスライドを自分で作ることで
より自分の中で意味付与的説明が行われていくのではないかでしょうか。

YouTubeの解説動画とかそれにあたるんじゃないかなと。

つまり、誰かに教えるために
そのことについて深く考える時間がある時は
相手のフィードバックがなくとも
理解促進効果があるのでは思います。

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