【読書】『人口減少の未来学』その4【「空気」に流されない】
『「超」入門失敗の本質』が指摘している”空気”の弊害は
(1)本来「それとこれとは話が別」という指摘を拒否する
(2)一点の正論のみで、問題全体に疑問を持たず染め抜いてしまう
これでは”イメージ”をもとにして議論を進めてしまい、”現実”とはかけ離れた回答を出してしまっても、不思議ではありません。
”イメージ”と”現実”のあいだに、乖離が生じてしまうのは―――――”現実”が変わっていくからです。
なので、”知識をアップデートしよう”と、『ファクトフルネス』は教えてくれます。
このことを、古代ローマ時代のカエサルは、
と言っています。
”空気”にひたって議論を進めてしまうと、”正しい現実”を見ていないため、間違った戦略を立ててしまうことになります。
正しい戦略を立てるためには、正しい情報を集めましょう。
ところが、「空気」が厄介なのは、
・実態がないこと
・反証があったところで「空気」にいっさい傷を与えない
ゆえに、”空気”を変えるのは、困難なことなのです。
「空気」が少しでも現実と整合するように、調整努力を行わないと、社会の不安定性が増してしまう。
なので、人口減少社会の”空気”と”現実”を整合するための、”事実”を見てみましょう。
少子高齢化は地方よりも東京のほうが深刻
【誤】高齢化は地方のほうが深刻だ。
【正】後期高齢者は東京に一極集中している。
高度経済成長期に、東京を含む都会に出てきた団塊の世代が、65歳を迎えているからである。
そして、団塊ジュニアの世代がこれから65歳を迎えることになるので、東京の後期高齢者は増え続ける。傾向は、あと十数年は続く。
一方、都会に若者を送り出してしまった地方では、高齢者のなり手がいないので、絶対数は減り続けることになる。
「高齢化は地方のほうが深刻だ」
という”イメージ”と”現実”は違うのです。
日本全国で少子高齢化が進んでいるのに、
「東京だけは大丈夫」
と、どうして考えてしまうのか?
”空気”は思い違いを起こしています。
藻谷浩介さんは”プロ野球”で比喩表現しているのが、面白いので引用します。
おっしゃるように、
日本だけがダメなわけではない
こういうことを書いていると、
「日本だけがダメだ」
という悲観論が出てきますが、実はそうではなかったのです。
どこの国でも問題はあるのです。
なので、安易な悲観論に染まらないで、打てる手を打ち続けるしかないのです。
また、
日本人であろうが、移民であろうが、条件は一緒です。
”現実”は変わっています。
”空気”を変えるのが困難なことは上述しましたが、”イメージ”と”現実”の整合努力を続けることは大切です。
同じ日本でも差がある
藻谷さんは「次世代再生力」というものを計算し、都道府県別のグラフをつくりました。
「次世代再生力」をは、25~39歳の数を3で割って、0~4歳の数と比較した数値である。
24歳までを含めないのは、大学に行っている人を含めてしまわないようにするため。
合計特殊出生率に比べたメリットは、年ごとのムラを排除できるということです。
このグラフを見ると、明らかに西高東低です。
また、全国平均の68%に対して、東京都は55%、東京特別区は52%です。東京に出てきてしまうと、次世代を残せなくなっているのです。
同じ日本人が営む現代社会でも、西日本と、東京を含む東日本で大きな差がでているのは、DNAの変化ではなく、暮らし方・生活環境が一因だと考えられます。
したがって、生活環境さえ是正できれば、子どもは再び増加することが考えれます。
”空気”や”イメージ”で考えて、少子高齢化が永遠に続くと考えるのは間違いです(しばらくは続くが)。
しかし、暮らし方・生活環境を是正すれば、どこかで止まります。
”空気”や”イメージ”に染まって悲観している時間があるのなら、暮らし方・生活環境をよりよくする方法を考えましょう。
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