美容室が見直したい当たり前のこと
美容ディーラーをしていると美容室経営の相談をされることがあります。特にコロナの影響によって経営戦略の見直しが要された今は多くなりました。経営者は孤独だし、相談相手として自分の顔が頭の中に浮かんでくれたと思うと非常に嬉しい気持ちになります。
念のため書いておくと、弊社はディーラー業であって、コンサルティング業ではないので経営の相談自体に収益は発生しません。
経営相談の中で戦略的な話があがると高付加価値やブランディングといったワードを良く聞きます。他店との差別化を図り、高単価を狙っていきたいという事だと思います。差別化は絶対必要だと思います。さらに美容師の技術を安売りするのは個人的に反対です。
では、これからの美容室はどんな戦略を立てればいいのでしょうか。
当たり前のことを大切にする。美容師としての技術、毛髪・薬剤についての知識、お客様を不快にさせない接客、このあたりの当たり前のことを大切にすることが、いま美容室が取り組むべきことではないかと思います。
既存顧客を大切にしているか?
美容室だけではないかもしれませんが、本当に既存顧客を大切にしている企業、お店はどれくらいあるでしょうか?
実際、美容室のオーナーもスタッフもサロンのホームページで既存顧客を大切にしていると思われる発言や記事はよく目にします。しかし、美容室のホームページとは別に、同じ美容室が掲載されているポータルサイトを見てみれば、ほとんどが新規客をターゲットにしたメニューばかりです。
ポータルサイトはそういうモノ(新規集客用サイト)だと割り切っているかもしれませんが、今の時代既存のお客様もポータルサイト経由で予約をしている人が多いです。ポータルサイト経由で予約をしている既存のお客様は新規向けのお得なメニューがあることを知っています。ただ自分は対象外だと判断してノーマルなメニューの予約をしているだけなのです。
どれだけ既存のお客様を大切に思っていても、新規客向けのキャンペーンばかりが目に付けば既存のお客様を大切にしていますよという想いは、届くはずがありません。
一応書いておきますが、新規客をターゲットにしたキャンペーン施策が悪いと言っているわけではありません。オープン当初は、まずはお客様に一度来店して頂く必要がありますし、スタッフがスタイリストデビューした際にも新規客向けのキャンペーンでスタッフを応援していく必要もあります。
美容室は、全国25万軒(実質営業軒数はもっと少ないと思うが)あると言われ、オーバーストア状態にあることは美容業界に属する人みんなの共通認識だと思います。
その中で新規客だけにスポットをあて、売上のベースを作るのは不可能に近い話だと思います。
ファンベースマーケティングとは?
今、美容室で取り入れた方がいいおすすめの施策がファンベースマーケティングだと思います。
低価格戦略で新規客数と回転数で売上を上げられる企業型の美容室ではない美容室(法人でも個人でも低価格で勝負しない)には特におすすめをしたいと思います。
ファンベースマーケティングはファンを大切にし、ファンをベースにして中長期的に売上や価値を上げていく考え方になります。
今記事は、著書佐藤尚之氏の『ファンベースマーケティング』を参考に美容室でファンベースマーケティングを取り入れるべき理由を記事にしています。
美容業界ではロイヤルカスタマー戦略を取り入れ、業績を伸ばした美容室が一時期全国でセミナーを行なったりしていましたが、ファンベースマーケティングはロイヤルカスタマー戦略とは似て非なるモノです。
下の図を見て頂ければ分かるとおり、ファンとはロイヤルカスタマーの上に位置する人たちのことです。
ロイヤルカスタマーと呼ばれる人たちは、来店頻度も一回に美容室で使用する単価も高い顧客のことでVIPとも呼ばれたりもします。一方、ファンとはロイヤルカスタマーのように来店頻度と客単価では判断する事は出来ません。
ファンは美容室の価値を共有してくれる点ではロイヤルカスタマーと同じですが、自分へのメリット(紹介割引などの特典)目当てではなく自発的に身近な人へのクチコミやSNSを通じての発信をしてくれる人たちのことを指します。
はじめに書いたとおり、多くの美容室が既存顧客を大切にするのが当たり前と思いながらも新規客を熱心に取り込もうと考える背景には、既にファンになってくれた顧客は黙っていてもリピートしてくれる人たちであり、売上を伸ばすにはまだ来てくれていない新規客を集客しないと思っている節があるからです。
また、上の図で分かるようにファンは少数になります。そんな少数に力を入れたところで対前年比の売上に影響が出ないのではないかと思っているのです。
パレートの法則
パレートの法則を聞いたことがありますか?
自然現象や社会現象などいろいろな場面で当てはめることが出来る法則で、ニハチの法則なんて呼び方もされます。ビジネスの上では全顧客の上位20%が売上の80%を生み出していると使われています。
上記で紹介した『ファンベースマーケティング』の中では、百貨店やコンビニエンスストア、雑誌、飲料商品など多くがパレートの法則に当てはまっていることが紹介されています。
では、美容室にはパレートの法則が当てはまるのでしょうか?
総客数の中で少ない層にもかかわらず来店頻度と客単価の高いロイヤルカスタマーに注目したロイヤルカスタマー戦略は、まさにパレートの法則を用いられた戦略だと思います。
来店頻度と客単価では測れないファンの存在をコアファン。ロイヤルカスタマーをファンと定義したとき上位20%の顧客に当てはまる美容室も多いのではないでしょうか。
『情報"砂の一粒”時代』
美容業界の集客方法はポータルサイトとInstagramが長く蔓延しています。
同時に、それぞれの集客方法に課題を感じている人たちも増えてきたとも思います。
ポータルサイトでの集客の課題は広告費です。掲載料は年々上がっていき、月々の掲載料がアシスタント一人分の給料を超えている地域もあります。
一方、Instagramの集客は広告費はかかりません。実際、Instagramでバズった美容師が多くの新規を集客をした事例もたくさんあります。
しかし、どれだけの人が集客まで効果を出せているのでしょうか?
Instagramでの集客に成功した事例は、メーカーやディーラーがセミナーを行ったり、業界紙でも取り上げられ多くの美容師に共有され、今ではInstagram集客を活用していない美容師を探す方が難しいです。要は、それだけ多くの美容室、美容師がInstagramを活用して集客を狙っています。(レッドオーシャン市場)
また過去の記事『発信力が欲しい人がやるべきこと』の中でも記事にしたが、『情報"砂の一粒”時代』(今の時代のデジタル情報量は世界中の砂浜の砂の数より多い)と言われるぐらい情報が溢れていて、ポータルサイトやInstagramで届けたい情報(広告)は、届かないことがほとんどです。
ほとんどの美容室・美容師が行っているInstagramでの集客は、バズを狙ったモノが多いですが、コロナによって変わったこれからの時代には向かないと思っています。
ファンが新たなファンを作ってくれる
『情報"砂の一粒”時代』に効果的な伝達手段はクチコミです。そして、美容業界だけでなく最強の新規集客の手段もクチコミ(紹介)なのです。
ファンベースマーケティングは既存のファンに向けた施策ですが、新規集客、しかも最強のクチコミに繋がります。
人は大好きなモノ、コトを近しい類友に言いたくてたまらない。
ファンは周りにいる価値観が近い類友に自分の言葉で広げてくれるし(ファンは紹介特典などがなくても紹介してくれる)、その影響力も高いです。
ここで言う影響力の高さとは、インフルエンサーということではありません。
これがファンが新たなファンを作ってくれることです。
ファンが類友に言いたくなる状況やオススメしたくなるきっかけを作ることがファンベースマーケティングにおいて大切になってきます。
ファンは少数
ファンベースマーケティングにおいて間違えやすいのが、全員にファンになってもらいたいと望んでしまうことです。
すべての顧客に愛される美容室になりたいと思うのは間違っていませんし、もちろん理解もできます。しかしながら、それは無理なのです。
多種多様のダイバーシティ時代に全員の価値観が一致することはありません。
大切な事なので何度も言いますが、ファンは少数です。
パレートの法則で言えば20%しかいません。既存顧客の5人に1人がファンになっていてくれたら御の字です。
全員をファンにしようとすればファンは出来にくくなりますし、今いるファンが離れていくこともあります。
ファンベースマーケティングは、今いる少数のファンを大切にする施策のことであることを忘れてはいけません。
さいごに
一般企業ではリモートワークを推進し、中にはオフィスを解約した企業も現れたほどコロナによって時代がもの凄いスピードで変化しています。
美容室は、リアルでの対面なくしては成り立たない事業であることは変わりません。しかし、オンラインによるカウンセリングや店販商品のEC販売などオンラインとの融合を積極的に取り入れようとする流れもあります。
ファンベースマーケティングは今までなかったものを取り入れるわけではありません。記事中にも書きましたが、当たり前のことを大切にするだけでいいのです。美容室が当たり前にすることは、どれだけ時代が変わっても美容師としての技術、毛髪・薬剤についての知識、お客様を不快にさせない接客だと思います。
そこにもう一つの当たり前のこととしてファンの存在を加えて欲しいと思います。
今後とも少しでもお役に立てるような情報を発信していきますので、宜しくお願い致します。
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