#56 タイピングに慣れていって

4年前に大学生になってから初めて自分用のパソコンを購入した。

それまでパソコンを使う機会といえば、高校の情報室にあるパソコンで動画や画像の作成をする課題の作業をしたときや、とある学外活動でのレポートを作成するときに私の親が所有するパソコンを使ったくらいで日常的に利用することはなかった。

それは、スマホで済むこともあるからで、スマホを持っていなかった小中学生の頃の方が、自宅にあるパソコンでYoutubeを見たりネットのゲームなどで頻繁にパソコンを(そこまでではないが)利用していた気がする。だが、それはマウスを用いた操作がほとんどであり、文字を打つことはほとんどしなかった。

だから、大学生になって自分用のパソコンで授業のレポートをを作成するようになってはじめて本格的にタイピングをするようになった。パソコンのキーボードには各ボタンに様々なアルファベットが書いてあるが、それはABCという順に書かれているわけではなくある程度乱雑に配置されている。だから、始めの方はどこに打ちたいアルファベットがあるのかを探すのに精一杯だった。キーボード全体をきょろきょろしていたため、実際よりもキーボードが広く感じられ、これを難なく操作していた予備校の事務の方はすごいなあと感心させられた。

そんな時期も数か月すれば過ぎ、オンライン授業がメインの年でもあったことから増えたレポートを何枚も書くうちに、キーボードを一々目で追わなくとも手が動くようになってきた。特に、文の終わり方は「ーだと考えられる」や「ーだと感じられた」など、典型的な表現が多く、打ち込んでいくうちにタイピングに慣れていっていることを実感させられる機会となった。

自宅で1年間オンライン授業を受けていたが、翌年からは大学での対面授業がメインになっていった。そこでは授業中にパソコンを持参して何かをメモしたり図書館で何か課題等をしているのだろうかタイピングをする人たちの様子を目にする機会が多くなった。私はオンライン授業でタイピングに慣れたと言えども、その人たちは私よりはるかにタイピングのスピードが速くあっけにとられた。中には、タイピング音が大きい人もおり、こんなにも強い力でキーボードをたたく人もいるのだなあと気づかされた。

大きな音は立てたくないが、あの人たちのように速くタイピングできればもっと気持ちがよいのだろうなあと思い、少し速度を上げてみようと試みたが、タイピングミスが増えるだけだったので途中から気にしなくなった。

それから3年後の現在、私は大学院修士1年であるがそこまでに実験の授業でのレポートや卒論など文章を書く機会を確実に増やしていった結果、頭の中である程度タイピング時の手の動きをイメージできるようになった。スマホだと、五十音順になっているから慣れるのは分かるが、キーボードはアルファベットがバラバラに配置されているのにそれができるようになるのは、やはり慣れというものの偉大さを実感をさせられた。

このようにタイピングに慣れていった一方、手で文章を書く機会が激減した。だから、漢字を忘れてしまいそうだがそうでもない。それよりも、英単語のつづりを忘れてしまうようになった。最近英語で文章を書く機会があったが、何個か知っている単語でつづりがパッと出てこずネットで検索することがあった。手書き云々というより単純に英語を利用する機会が減ったからだと思った。

タイピングばかりになったと言えども、私はルーズリーフに授業の内容をまとめたりメモする習慣があるため漢字を忘れることが無かったのであろう。最近では、ほとんどの学生は紙を利用せずパソコンでのメモやタブレットに電子ペンでメモする形式をとっている。タブレットの学生はよいが、パソコンのみの学生は漢字を書けなくなってしまうのだろうか。

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