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仕事中に起きている脳の働き(注意機能を主に) 

 前回は、タスクに必要な作業記憶と注意機能のおはなしでした。

 今回は仕事に使われている注意機能を見てゆきたいと思います。

 神経科学的には注意は自分の外からの刺激に対して自分が意識せずに反応することと自分に必要な何かに対して意識的に向けることの二つに分けていました。
 そして医療や療育分野では注意機能は四つあるとされています。

 ・対象に注意を向け続けること
 ・周囲から適切な対象を選んで注意を向けること
 ・複数の対象に同時に注意を向けること
 ・いま向けている対象から違う対象に注意を切り替えること
 
 わたしたちは日々、仕事の中でこれらを適切に瞬時に切り替えてタスクを遂行しようと苦闘しています。

 たとえば、あなたはデスクのPC端末にむかって、プレゼンテーションの資料を作っています。 
 自分のデスクの上にある端末に向かってプレゼン資料を作成している最中はモニターに注意を持続していますが、視覚の端にチラチラする光の変化ーたとえば隣の席の人が立ち上がるとそちらに強制的に注意が移るし、上司やメンター、先輩なんかがこぼれ落としたタスクの割り込みなんかが生じます。

 これらの外側からの強制的に脳へ叩き込まれる感覚、知覚に対して自分が今しなくてはいけないタスクのプライオリティを切り替えつつ、元々しなくてはいけないタスクの遂行度合いを記憶しつつ、注意の対象とその進行度合いを記憶してゆきます。

 言葉にするとすごい無理ゲーなんですが、人は自然にこなしています。

 最近、AIが人の仕事を肩代わりしてくれるという未来がすぐにでも出てくるとか、人の仕事が奪われると言われていますが、単体のAIがこのような注意の持続と切り替えに対処できるモデルができているとかは寡聞にして聞いたことはありません。今後できるとは思いますけど。

 まあ、現在はある程度人が選択してこの作業はこのAIに、これは次のAIにと丸投げするセンスとマニュアルが必要だと思います。

 さて、話は戻して(閑話休題)

 神経科学的に記憶や視覚、聴覚は中枢神経の領野ー主にそれをする場所、会社組織で言うと営業や総務、開発などーが決まっていますが、注意は領野がなく、中枢神経ー小脳、大脳、基底核とそれを繋ぐwebシステム、職種横断的な継続的プロジェクトーで注意機能は成立しています。

 もともと生物の歴史の中で感覚刺激に対して注意を向けなきゃ、捕食生物によってゲームオーバーになっちゃうので、注意機能は生物学的に歴史の長い生き物から徐々に繊細に複雑化しています。

 なので、中枢神経系と言われる脳の階層でも進化の過程で古いと言われる基底核を通過します。
 基底核は生物にとって生き抜くために必要な相手に対する恐怖やここは進んでいいな、これをやって成功したぜと感じる感情を生み出すドーパミンやセロトニンなどのモノアミンと呼ばれる神経伝達物質によって強い影響を受けます。

 生物を注意深く環境を監視して何かあったらすぐに反応するし、緊張状態になると今まで注意を向けていた物事に見切りをつけて新しい物事へと注意を向けようとします。
 
 モノアミンの家族のドーパミンやアドレナリンが出ると一時的にワーキングメモリーが改善することもありますが、ずっと続くわけではないです。

 で、作業や作業の結果、なんかの報酬をもらうとドーパミンが出て、今のタスクの解決方法は正解だったんだ!! って学習するし、逆にタスクの結果を持っていっても否定されて失敗だと言われ続けるとしおしおとドーパミンを受け取るドーパミン報酬系が萎縮してワーキングメモリや作業記憶なんかの記憶の機能や注意機能の低下してミスが多くなり、さらに否定されて、その記憶だけが学習されてタスクの作業遂行が遅くなってしまい、今までできていた問題→解決のための思考演算の答えが出てこない、自信が無い→解決できない→遂行が遅くなる→ミスや遅いこと自体で怒られる→タスクの遂行ができなくなるの悪循環となってしまいます。

 元々は人が進化の過程で掴み取った外敵からの対処が現代社会では、それが上司やプロジェクトメンバーからの侵襲的な刺激によって対象と結果が変化してしまったのかなと思っています。

 次は外敵侵襲刺激ーもしくは上司の変な指示ーによって歪む脳機能についてみてゆきたいです。
 

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