本:豊饒の海-春の雪-
※この記事ははてなブログにて、2020年9月25日に投稿した記事の再掲です。
この本は、三島由紀夫が人生の終わりに書き残した長編小説、全4巻のうちの第1巻だ。
この話は、松枝清顕と聡子の恋愛が中心であるが、決して美しい恋愛話とは言えない。美しい点があるとすれば、若くて世間をしらず、利己的な、清顕の命のエネルギーの燃焼により放たれる生命の輝きだろう。
はっきりいって清顕は自分の事しか考えていない。聡子を愛する気持ちも、自分のいわば理想に使われているだけだ。
これをみて美しい恋愛だなどといっている人は、頭がお花畑すぎる気がする。
実際清顕の利己的行動により、聡子は心を殺され、出家をする。
この出家は家への罪の意識、清顕への想い、様々な重圧に耐えられなくなった聡子が生きていけるために残された、最後の道ではなかったか。
つまり死を選ばないための選択であると思う。
清顕は自分の理想のため、さも美しく見える生命の輝きを放ち死んでいった。ただここで言いたいのは、死をもってして放つ生命の輝きは、これほど愚かでも美しく見えてしまうという事だ。
美しく見えてしまっている時点で、我々は清顕の生き方にまんまと魅せられてしまっているのかもしれない。
その生き方が間違っていたと断言できる権利は誰にもない。
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