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苦境に立たされる結婚式マフィア

結婚式が好きだ。たいして仲良くない友だちのも出たい。
厳密に言うと、結婚式のバンド演奏が好きだ。

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私は学生時代、ジャズのビッグバンドをやっていた。

※ビッグバンドってこんな感じのやつ

私が社会人になってからも、学生の頃のつながりでちょくちょくバンドをやっている。別名を「結婚式マフィア」という。仲間内だけで言ってる名称なので、ググっても出てこないが。

別名の由来は、 結婚式で演奏したい という理由でバンドメンバーの結婚を急がせる集団だからだ。全員が加害者であり、被害者予備軍。誰かに恋人ができたときは即、「結婚式は何の曲やる?」から会話が始まる。呼ばれるかも決まってないのに。おかしい。私自身は既婚者だが、集まるたびに「もう一回結婚式しない?」と言われる。やっぱりおかしい。

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一体なにが我々マフィアを突き動かすのか。答えはシンプル、結婚式におけるバンド演奏ほど楽しいものはないからだ。楽しすぎてみんな結婚式ジャンキーになっている。

なにが楽しいって、結婚式のビッグバンドは絶対にすべらない。絶対にだ。勝利を約束された演奏。音楽のエクスカリバー。

結婚式バンドは、「楽しい演奏」の条件が整いまくっているのだ。出席者は酒を飲んで上機嫌。全体的にハッピーな空気。演奏者もノーストレスで酔いどれながら演奏、ミスっても怒られないどころかちょっといい思い出になる。そして何より、めっちゃ喜ばれる。最高。
なので楽器を背負って結婚式場に向かうあの高揚感たら、ないのよ。

式場に向かう時の脳内は完全にMaroon 5、Sugar状態。(ジャンル違うけど)

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それが、このご時世である。
演奏はおろか、リアル空間で結婚式ができない事態になってしまった。実際、今年予定されていた仲間の式は全て中止。一番残念なのは新郎新婦だが、我々マフィア一同も非常に残念である。質が違うけど。

溜まりゆくマフィアのフラストレーション。祝わせろや…入場曲やらせろや…演奏後に演奏してない方の新郎or新婦に感想聞いてはにかみながら「惚れ直しました」って言わせろや…!人の幸せを祝うという大義名分の元にドンチャン騒ぎしたいんじゃーーーーーーーー!

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という気持ちを抱えつつ、先日マフィア仲間の一人と会って飲んだ。密は避けたので許してもらえるとありがたい。

そういえば前会った時に彼女ができてたな、と思い、聞いてみた。
「最近彼女とどう?」
「まぁ普通かな」
「結婚しそう?」
「全然そんな雰囲気じゃない」
「雰囲気は作るもんだ!結婚しなきゃ演奏できないぞ!」
「今はコロナだからどのみち演奏は…」
「あ…じゃあ結婚しないでいいや…別れていいよ」
「なんでだよ」

などと会話しつつ、2人で今の状況にしんみりした。

一応補足するが、我々の仲なので結婚ジョークが成立している。普通にやるとマリハラになるので絶対にやめよう。マフィアとの約束だぞ。

時代の変化についていけなくなった古いものは、いつの時代も消えゆく運命だ。私たちも、別の生き方を模索する段階に来ている。新しいマフィアの様式が求められる(求められてない)。

…しかし、そもそも結婚式って、どうやって楽しむものだったっけ?

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いやお前が楽しむもんちゃうんよ。結婚式は新郎新婦のものなんよ。
というツッコミは至極真っ当なので、無視する。

これは私の問題だ。
私自身がどう人の結婚式を楽しみ切るかという問題。

旧友との会話?豪華な食事?新郎新婦の晴れ姿?どれも素晴らしいが、やはり演奏と比べると刺激が足りない。

どうしたものか…

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そんな中、かえるさんのTwitterがタイムラインに流れてきた。


エッモーーーーーーー!!!!(爆裂四散)
(かえるさん勝手にすみません)

そうか、エモみという手段があったわ。
しかも、こちとら三十路を過ぎている。まだうら若き女学生の使うエモとは一線を画すエモを、結婚式では感じられるはずだ。多分。

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あとはエモみを感じる手段だ。

悲しいことに、私とエモな関係性にあった女友達はすでに結婚してしまった。残念ながらおめでとう。鎌倉のオシャレ蕎麦屋で痔の相談をされたあの日が懐かしいよ。

とここまで書いて、中学生みたいなことを思いついた。やや悪質だが。

私が求めているのはエモであって、「新郎新婦と自分の関係性エモ」ではない。つまり、他人同士=参列者同士を、脳内でそういう感じに妄想してしまえば良いのだ。なにがつまりなのかは自分でもわからない。

友人AとBを既婚未婚関係なく(あくまで脳内で)いい感じの雰囲気に仕立て上げ、遠くから眺めてニヤニヤを押し殺しながら酒を飲む。エモの脳内培養。

友人同士じゃなくてもいい。新郎の叔父×新婦の叔母。新郎友人×新郎。新婦×神父。カップリングは無限大だ。楽しくなってきた。

新婦「今日、来てくれたんだ…。」
神父「仕事だからね…。」
新婦「ねぇ、子供の頃、二人で教会の扉に書いた落書き、覚えてる?」
神父「あぁ、僕と君の相合い傘だ。」
新婦「…忘れた、って言って欲しかったな、今日は。」
神父「主の前でウソはつけないからね…。だけど、おめでとう。」

え?キモいって?その通り。でも合法だから私を止める者はいない。マフィアをなめるんじゃあないよ。

次の式が楽しみですね。(犯行予告)


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(結婚式バンドがやりたすぎて変な方向に思想が向いたので、2000字ちょいで書きました。ステキな企画にノイズを挟んですみません!)


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