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【読書メモ#1】言葉は時に世界を、時代を動かす力を持つ_『本日は、お日柄もよく』

今年のGWに読んで、図らずも感動し心が揺れ動いた小説があります。それは、「本日は、お日柄もよく(著:原田マハ)』です。

どんなストーリーかざっくり説明すると、
普通のOLだった女性が、スピーチライターの仕事に出会い、言葉のもつ力、スピーチライターの仕事に魅せられ、自身もスピーチライターとして活躍してく…というお仕事小説(後半ちょっぴり恋愛)です。

※以下、ストーリー展開にはほとんど触れません。この本の中で私にとってとても印象的だった「言葉たち」と、「スピーチライター」という職業について記載していきます。

『言葉』の持つ力・可能性を届けてくれる小説

「伝え方」「スピーチ」について悩んでいる方、真面目なビジネス書を読むより、この小説を読むことを私はオススメします。
下手なスピーチ、うまいスピーチ、その両方が登場人物を通して事例として出てくるので、事例から学ぶことができますし、
スピーチを構成する上で大切なポイントも随所に出てきます。
かなり実用的なポイントが出てくるので、少なくとも私は学びになりました。

私がこの本の中で、とても大きな気づきとしてあったのが以下の2つでした。
「言葉の持つ可能性、言葉の力に向き合っていなかったのではないか」
「もっと言葉を大切に、しっかり伝えようとしてきただろうか」
この小説の中に出てくる登場人物たちの言葉が、メッセージカードとして私に響き、問いかけているように感じました。

誰かに、何かを、心をこめて伝えようとしただろうか。
言葉の持つ力を、信じたことがあっただろうか。
深く考えて言葉を選び、発していただろうか。

もうとめどなく、自問自動が…。
そんな、私に響いた言葉たちをご紹介します。

「静」

「静」はこの物語の中で、スピーチをする上で最も大切なキーワードとして出てきます。
主人公のこと葉の師である久遠久美さんが、こと葉に伝授したポイントのひとつです。この『静』の一文字を意識し、スピーチの時には「心を平静にしてこの一文字を思い浮かべる」と説いています。
とてもシンプルな一文字です。
この一文字を思い浮かべ、周りが静かになるタイミング、自身の心が平静となるタイミングを捉えて言葉を発する。説いているポイントはただそれだけです。
シンプルだけど、これだけでずいぶん変わることができる、とても深いキーワードです。

「言葉は書くものでも読むものでもない、操るものだ」

この言葉はとても痛烈に響きました。主人公の幼馴染が、こんなことを言っています。(ネタばれすみません。)

「どんなに一生懸命書いても読んでも、広く一般に受け入れられない限り、言葉の効力って限定的なもんだろ。言葉っていうのは、操れなくちゃだめなんだ、って、おれも最近ようやくわかってきた」

…本当にその通りです。(語彙力なさすぎてすみません。)
どれだけ頭で考えて書いて、読んでも、届かなくちゃ意味がない。
受け入れてもらえなきゃ、意味がない。言葉って本当に難しい。届かないときの虚しさといったら…。
そんな言葉を、書くでも読むでもなく、「操る」。それが重要だという。
「操る」という視点を持っていなかった私にとっては、「なるほど、その観点が私にはなかったのか」と、いかに視野が狭かったのかを気づかせてくれた言葉でした。

「言葉は、ときとして、世の中を変える力を持つ」

ストーリーの中では、師である久遠久美さんが、スピーチライターについて勉強した過去に触れる場面があります。
その中で、キング牧師やケネディ大統領、ガンジー、オバマ大統領など、偉人達の偉大なスピーチに触れたことが出てきます。
改めて考えてみると、良くも悪くも世の中を変え、人を大きく動かす時に、必ずと言っていいほど偉人達のスピーチがあります。
それまで「無理だ」と、「実現可能性がない」と思われていたことでも、人は言葉によって動かされ、変えてきた過去が確かに存在しています。
歴史を変える大きな動きの中に、たしかに、「言葉の力」が存在しています。

そして、そんな「言葉の力」の大きさを感じたのが、以下の言葉でした。とある人物が、辛く悲しい状況にいるとある人物にかけた言葉です。

「困難に向かい合ったとき、
もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。
三時間後の君、涙が止まっている。
二十四時間後の君、涙は乾いている。
二日後の君、顔を上げている。
三日後の君、歩き出している。
どうだい?そんなに難しいことじゃないだろ?
だって人間は、そういうふうにできているんだ。
とまらない涙はない。乾かない涙もない。
顔は下ばかり向いているわけにもいかない。
歩き出すために足があるんだよ。」

この書籍の帯にも出てくるのでご存知の方も多いかと思いますが、
辛いとき、逃げ出したくなったとき、背中を押してくれるような言葉です。本当に歩き出そうとしてくれる人に、励みとなるような。

慌ただしい日々の中だからこそ、「言葉」の力を見つめなおしてみたい

やるべきタスクが多い毎日、言葉ひとつひとつに気を遣うのは、
言葉を扱う職業以外だと難しいかもしれません。
少なくとも私は、あまり気を配ってなかった、「言葉」の力を軽んじていた部分があったかと思います。
でも、大切な人や、誰かに届けたいメッセージに、言葉は不可欠です。
他の動物と違って、人間が唯一持っている魅力的な手段であるはずの「言葉」。この「言葉」を見つめなおして、扱いを変えるだけで、ぐっと人生の充実度が大きく変わるのかもしれません。(大きく変えられる可能性を秘めているのは、間違いないと思います。)
冒頭でお伝えしたように、話し方、伝え方の極意を知る上でも、実用的な学びになる小説です。ビジネス書とはちょっと気分を変えて、主人公二ノ宮こと葉と共にスピーチライターの仕事に魅せられるのも、いいのではないでしょうか。

【ちょっと脱線】選挙についても少し知識がつきます

物語の中では、政治家のスピーチライターのお仕事が登場するため、「選挙活動」についても触れる場面が多いです。
中でも私が学びとなったのが「公職選挙法」について。物語の中で、この「公職選挙法」についても触れているので、ちょっとだけ選挙の実態・ルールについても学びになります。
例えば、選挙期間になると必ず目にする(耳にする)街頭演説。
「街頭演説うるさいな」
「今はせっかくYouTubeとかあるんだから、ネットで発信したらいいのに」
そう思うこと、多くないですか?
でもこれ、今の選挙に関する法律上、ネットでの活動を認めていない、かつかなり限定的な手法しか認めていないが故、なんですね…。
この小説は2013年発刊で、約10年くらいたっているのに、全く日本の選挙実態ってアップデートされていないんだな、って愕然とします。
街頭演説ではどうしても、届けられるメッセージが限られてしまいます。よりよいメッセージを届けるためにも、選挙方法も、是非アップデートしていただきたいものです。(不正防止観点はわかるのですが、時代に合わせて柔軟になって欲しいものです)

スピーチライターのお仕事をもっと知りたいなら

スピーチライターのお仕事についてもっと知りたいなら、以下の書籍もオススメします。
スピーチライターの仕事の実態、スピーチライターになるために何を学んだらいいのか、と、かなり現実的な内容となっています。
アメリカだとスピーチに関する専攻科目が大学にはあるそうで、そのことについても触れられています。気になった方はぜひ。


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