第二章 開花
変わらない平凡な高校生活を送ってから、気づけば一ヶ月が経過していた。
行きがいもなく、何か刺激を求めていた頃に彼女は話しかけてきた。
「成瀬君!おはよー!」
同じクラスの藤井さんだった。
出席番号が近いせいか、テストや授業などの関わりで、他の生徒と比べると少し交流があった。
だからといって何か変わるものでもないが少しばかり、退屈な生活に陽光が差した気がした。
そこからまた一ヶ月後、いつのまにか俺は藤井さんと登下校を一緒にする仲になっていた。
「成瀬君ってさー、好きな人とかいるの?」
唐突な彼女の質問に戸惑ったのも束の間、「いいえ」ときっぱり答えた。
「そっかー、じゃあまだまだ希望があるってことだね!」
と、言葉を残して藤井さんは家へと帰っていった。
そして自分も家の最寄りの駅で帰ろうとした最中、それは起こった。
「キャー!」という悲鳴が路地裏で聞こえ、恐る恐る近づく。
するとそこには、性別が判明できないほどに殴られ、血だらけの人と、見るからにヤクザのような大男がいた。
恐らくもう血塗れの人は死んでいる。
大男の手にはハンマーらしきものが握られていた。
興奮した。
初めてだった。
人が死ぬ現場を生で見たのは。
高鳴る胸の鼓動とともに、高揚感が昂ってくるには分かる。
求めていたのはこれだったのかと。
退屈な人生に。くだらない世界に。
唯一満足出来そうな瞬間だった。
このとき俺は決めた。
彼女を。
藤井美咲を。
自分の手で殺めることを。
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