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スタバ青年「H」

わたしはスタバが好きです。

毎日のように
スタバに入り浸っていたころがありました。

今でも、スタバの年間滞在時間を競うコンテストがもしあれば、かなり上位に食い込めるはずです。

そんな
スタバヘビーユーザーの「さきさん」には、
これだけスタバ好きであるにもかかわらず、
スタバ好きとして致命的な欠陥があります。

それは…

実は、
コーヒーも乳製品も苦手なんです…。

コーヒーにしても乳製品にしても、
飲むとおなかを壊しちゃうんです。

ちなみに豆乳も試してみましたが、
ピーピーでした。
一体なんでなんでしょうね。

じゃあ、なに飲むの?

もっともな疑問だと思います。

スタバで、
コーヒーも乳製品も豆乳も使用していない
飲み物なんかあるんでしょうか?

あります。

消去法でいけば、
答えはおのずと導きだされます。

紅茶です。

わたしは「紅茶好き」と公言していますが、
それは紅茶しか飲めないからです。

ほんとうのところは
「ラテ」とか「フラペチーノ」とか
頼みたいんです。

堂々ときらびやかな飲み物を
頼んでるみんながうらやましい。

でも、
自分はいつもアールグレイのストレート…

卑屈な気持ちになります。

毎日のように押しかけて、
紅茶ばかり頼むヤツなんて
おかしいと思われてるんじゃないか…

ほらほら、
また紅茶しか飲まない「T」が来たよ。
そんな風に店員さんどうし、
陰でささやき合っているんじゃないか…

妄想がわたしを責め立てます。

しかし、
わたしは本当の不幸を知らずにいました。

こんな自分ですら、
まだ幸福であったと振り返る日が来ようとは
想像だにしませんでした。

紅茶の飲みすぎで
胃を痛めてしまったのです。

わたしは絶望しました。

胃が痛くて紅茶が飲めません。

スタバとの関係が
重大な危機に直面しました。

今度ばかりは大好きなスタバへの愛を
断念せねばならないのか…。

わたしは諦めませんでした。

そして、
こんなわたしにもやさしい
奇跡的なメニューがあったのです。

あなたはお分かりでしょうか?

それは…

ほうじ茶。

きっとみなさんの
目には留まらなかったでしょう。

責めているのではありません。

わたしも追い詰められて
ようやく目に留まった次第です。

ああ、ほうじ茶。

彼には救われました。

これでようやく
スタバとの関係が保たれたのです。

しかし、
それは平たんな道のりではありません。

あなたはスタバで
ほうじ茶のストレートを頼む勇気がありますか?

「フラペチーノ」でも
「ラテ」でも
「紅茶」ですらもなく
「ほうじ茶」ですよ。

とうとう「T」から「H」になってしまった…

わたしがさらに卑屈になってしまったのを
だれがとがめられるでしょう?

ある日、
ほうじ茶をカウンターで頼むと、
優しそうな女性の店員さんが、
優しい声で、

「ほうじ茶おいしいですよね!」

わかります。
わかりますとも。
あなたは優しい。
心から優しい気持ちで言っている、
それは疑えません。

店員さん、
あなたはわたしの苦境を
察してくださったんでしょう?

でも、優しさがときにひとを
傷つけることがあるんです。

ずっと以前、高校生のころ、
母だけがくれたバレンタインチョコ。
あのときの気持ちを思い出します。

その優しさが真心であるだけ
傷つくんです。

いま再び紅茶が飲めるようになって、
あのとき優しさに
素直になれなかったことを、
懐かしく思い出すことができます。

店員さん、
傷つけたなんていってごめんなさい。

スターバックス、
わたしはあなたをあきらめませんでした。
片想いかもしれないけど、
これからもずっとあなたが好きです。

どうかこれからもよろしくお願いします。

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