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文科省は不服〜教員は定額働かせ放題!〜

5月17日、文科省はNHKに対し『教員の労働条件が定額働かせ放題というのは誤解を与える表現だ』と抗議を表明しました。

文科省 日本放送協会の報道について

文科省はこの表現は誤解を与えるものだと主張していますが、多くの教育関係者は実際に『定額働かせ放題』という言葉を使っています。なぜ教員は『定額働かせ放題』と言われるのでしょうか。その理由を改めて考えてみました。


教員には残業代が支給されないから

1つ目の理由は、教員には残業代が一切支給されないためです。1971年に給特法という法律が制定されました。給特法は、教員に時間外勤務を原則命じることができないと定めています。そして、時間外勤務がないのだから残業代も支払わないということを定めています。その代わり、教員が時間外にも自主的自発的に働くことを期待し、勤務時間外を含めた取り組みに対し、給与の4%を上乗せして報酬を出すことになっています。この4%は教職調整額と呼ばれるものです。

なお、時間外勤務命令を出せる場合は超勤4項目に限られています。これは、(1)実習や校外学習、(2)修学旅行などの学校行事、(3)職員会議、(4)非常災害、となっています。

給特法を逆手に業務を無限に増やされるから

時間外勤務命令がないことは、一見教員が守られているように思われます。しかし、現状では時間外勤務命令ができないことを逆手に取った法解釈や運用がされています。

給特法が時間外勤務命令ができないことを定めているために、定時で終わらない業務は職務命令ではなく教員の自主的自発的取り組みと解釈されます。勿論、子どものいじめの緊急対応など臨時的に発生し時間外にやむを得ず及んでしまった業務ならば、本来の給特法の趣旨である『自主的自発的取り組み』でしょう。しかし、実際は毎日勤務時間を大幅超過しないと終わらない程の業務量があります。

業務が膨大な量になっているのは、新たな業務を文科省が増やし続けていることが一つの原因です。学習指導要領が改定されるたび、学校に求められるものは増え続け、脱ゆとりを目指した授業時間数の増加小学校英語教育プログラミング教育GIGAスクール構想、金融教育、観点別評価、探究学習、特別支援、全日制高校におけるオンライン授業での単位取得制度などが行われてきました。

本来、業務量が増えれば勤務時間もその分長くなります。しかし、文科省は業務を一方的に増やすばかりでそれに見合っただけの教員増はしてきませんでした。そのため、既存の教員数で小学校英語やGIGAスクールのICT、特別支援コーディネーター業務などに対応せざるをえず、時間外勤務は増加してきました。さらに、給特法の解釈により、教員の時間外に及ぶ業務については、全て『自主的自発的な取り組み』とされてきました。当然、長く働いた分の残業代も一切支給されません。

本来、人員が増やされないならば、増えた業務の分だけ残業代をより多く支払う必要性が生じます。ところが、

  • 残業代は支給しない

  • 勤務時間外は『自主的自発的』で職務命令ではない

という法律の部分を都合よく文科省は解釈して運用し、業務だけが一方的に増やされています。結果、教員は『定額働かせ放題』だと言われてしまうのです。

定時後も働くのが常態化しているから

業務だけが増え続けた結果、一日7時間45分を超えても働くことが常態化しています。それが分かりやすい形で示されているのが、以下に示す教員募集パンフレット記載の教員の一日です。

仙台市教員採用試験パンフレット

7時半に出勤し、18時15分に退勤しています。義務教育の小・中学校では、勤務時間は8時15分〜16時45分が多いと思われますので、大幅に勤務時間を超過していることが分かります。

教育委員会がこのように、明らかに時間外勤務が前提の教員の働き方のモデルを示すほど、教員の時間外勤務は常態化しています。授業数の増加に加え、新たな◯◯教育の取り組みのための授業準備、各種報告書、部活動指導、特別な配慮を要する生徒への対応、生徒指導対応、保護者対応、職員研修、職員会議など、昼休憩中も放課後も休む暇はありません。教員が行う業務はとても一日約8時間の労働時間の枠には収まりきらない程になっています。

まとめ

文科省は『定額働かせ放題は誤解だ』と主張しています。しかし、これまで文科省は業務を一方的に増加させるばかりで、それに見合うだけの人員増には取り組んできませんでした。給特法の都合の良い部分に甘えていたように思えます。その結果が、今の『定額働かせ放題』の現状ではないでしょうか。

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