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英語:楽器にtheは付ける?付けない?

英語では『演奏する楽器にはtheをつける』と学校教育で習ったことを覚えている方は多いのではないでしょうか。英作文でtheを付けずに減点された経験がある人もいるかも知れません。しかし、実は楽器にtheが必要かどうかは度々議論になる点です。


学校文法での説明

『楽器を演奏する』と言う時の楽器の前にはtheを付けるというのがルールとして説明されることが多いです。

例:
I can play the piano. ピアノを弾くことができる。
I played the piano on stage. ステージでピアノを弾いた。
I have played the piano for 10 years. 10年ピアノを弾いてきた。

筆者が適当に作成

そもそも楽器のtheは何?

楽器のtheは総称のtheであると言われています。そもそもtheには、一語で様々な機能があります。そのうちの一つに、theをつけることでその種類全体を表現することができる機能があります。

例:
The dog is a friendly animal. 犬は友好的な動物だ。
The giant panda lives in China. ジャイアントパンダは中国に生息している。

筆者が適当に作成

このtheの使い方は、前述のものを示すtheとは全く異なるものです。つまり、"I have a dog. The dog is Pochi." のような使われ方のtheとは異なります。"The dog is a friendly animal." での the dog は、犬というカテゴリー全体を示しています。楽器の場合も同様です。play the pianoは『そのピアノ』ではなく、ピアノというもの全体をイメージしています。

実際の英語使用

では、play pianoという表現は全く使用されないのでしょうか。実はそうでもないのです。

play the piano と play piano の頻度

Google Ngram Viewerという出版物のデジタルデータベースから出現頻度を調べてみると、the有りよりも頻度は少ないものの、play pianoが近年使われるようになってきていることが分かります。この傾向は、trumpet(トランペット)、flute(フルート)、saxophone(サックス)、cello(チェロ)でも同様です。

興味深いのは、楽器によってはthe無しが一般的になってきていると考えられる点です。pianoをguitarに変えて検索し直してみた結果が以下です。

play the guitar と play guitar の頻度

guitarに関しては、the無しで表現するのはほぼ市民権を得ていると言っても過言ではないでしょう。他にも筆者が調べた限り、ドラムもthe無しでの表現が一般的になっています。

play the drums と play drums の頻度

theは必要?不要?

theが付く場合と付かない場合での違いには、文法書でも母語話者の見解においても、諸説あります。演奏する際の楽器につけるtheについては、私の知る限り以下のような特徴があると言われています。

  • the無しでは楽器がより抽象的に捉えられており、職業としての演奏など、演奏自体に焦点が当たっている。

  • the無しではオーケストラやジャズでの演奏などのグループがイメージされている。グループでの役割が意識される。

  • 演奏する楽器のtheは単純に省略してもよい

  • the無しでもthe有りでも意味はだいたい同じである

  • 『play+楽器』で演奏する動作や練習する行為を示している。一方、the有りだと楽器の種類や名前の方が強調される。

  • 『play+the 楽器』で楽器の代表を示している

  • the無しの用法はアメリカ英語で顕著であり、イギリス英語では珍しい。

人によって "play piano" という表現の捉え方は様々であり、多様化する用法に単一の応えを見出すことは難しいのではないか、というのが私の個人的見解です。そのうち、集団での場面ではthe無しが多用されるというのは、play drumsの例からも最も納得できるとは感じます。

まとめ

楽器にtheを付けるか付けないか、は意味に重大な差をもたらすものではないでしょう。冠詞theの用法は、文法というより慣習的な面も多く、例外なく誰もが納得できる統一見解を見出すことは難しいのではないかと感じます。どちらでもいいよ、ではだめでしょうか。

参考文献


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