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D2Cブランドが世界観を伝えるために

たいそうなテーマで書いていきます。
キービジュアルはAppleStoreですが、ほとんどの方がすぐに分かったのではないでしょうか?
これが世界観の力です。スティーブ・ジョブズは、亡くなる前にガラス張りの特許を取ったといいます。ここからも、世界観に対する強いこだわりが伺えます。

なぜ、世界観を伝えるのか

これはまさに「自社ブランドを選んでもらう確率」を高める為です。
元USJ森岡毅さんによると、消費者からのプレファレンス(好意)を得るには3つの要素があり、ブランドエクイティと、価格、製品やサービスのクオリティです。そのうちのブランドエクイティを高めるために世界観が必要となります。
こうすることで所謂ブランド力が上がり、購買する際の第一想起集合に入ったり、過度な価格競争から免れることができるので、利益に直結してきます。
特にD2Cブランドは新興ブランドであることが多く、大型の資金調達に成功しない限り、大規模なプロモーションの実施は難しいでしょう。
その中で「選んでもらう」ためには、世界観を伝えることが必要なのです。

そもそも、世界観とは何か

一言で申し上げると、ブランド・アイデンティティだと思います。
そして、Kapferer(1998)によれば、ブランド・アイデンティティとは、下記6つの要素で構成されます。(李,2019)
図の左側はハード面、図の右側はソフト面であり、図の上部は企業サイド、下部は顧客サイドの要素を表しています。
(D2Cの観点から厳密に見ると違和感があるので、ザックリの把握で構いません。)

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このままでも良いのですが、D2Cブランドに適用させやすくするため、下記のように再解釈しました。
上下左右の対応は上記と同じですが、プリズムの角度を変え、それに伴い要素を少し調整しています。
ざっくり説明すると、ビジョンを起源とする「機能・性能」や「パーソナリティ」を、顧客がどのような解釈(ベネフィット、フィーリング)するか、をまとめたものです。

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この6つを総じたもの(特に③)が「世界観」なのだと思います。

よって、⑴ブランド・アイデンティティ・プリズムを整理し、それを⑵ビジュアルで表現することが、「世界観を表現する」ということなのだと思います。

⑴ブランド・アイデンティティを整理する。

ここからは、私が解釈したものに沿ってご説明します。
事例があった方が分かりやすいと思ったので、私が担当させて頂いた株式会社iHackさんの、パフォーマンス改善に特化したパーソナライズサプリメントを引用しながら、ご説明しようと思います。

①ビジョン
そのブランドが創りたい世界です。
これはiHackさんの場合「挑戦で溢れる世の中を創る」です。創業者の富田さんは学生時代、周囲に「学歴コンプレックス」を持つ友人が多く、彼らが挑戦を諦めていた姿を見ていました。その原体験から、このビジョンを策定したのです。
このように、ビジョンは創業メンバーの原体験に基づく場合が多いです。

②-a 機能・性能
ブランドが持つ、物理的な特徴です。
iHackさんでは下記の3つがメインになります。

・パフォーマンス改善のサプリ
・パーソナライズされている
・科学的なエビデンスを読める

②-b パーソナリティ
人に例えたときの、ブランドの個性です。
Jennifer.L.Aaker(1997)によると、ブランドのパードナリティは5つの人格要因にグループ分けできる15の特質で表現されることはわかっています。下記にまとめます。

<誠実>
・堅実 / 正直 / 純粋 / 親しみやすい
<刺激>
・刺激的 / 活発 / 楽しい / 革新的
<能力>
・信頼できる / 真面目 / 成功している
<洗練>
・上流階 / チャーミング
<逞しさ>
・頑丈 / アウトドア

iHackさんの場合は、「聡明」「スマート」「クール」「インテリジェンス」「挑戦」であり、上記で言うと「能力」にカテゴライズされます。

②-c ターゲット
そのまま、ターゲットとなるペルソナのことを差します。ここで重要なのは、明確に「欲しい!」と言ってくれる人(N=1)を設定し、そこからペルソナを設定することです。(こちらは長くなりますので、詳しくは西口さんの書籍をご確認頂けますと幸いです。)
iHackさんの場合は、「ビジネス・リーダー」となります。

③-a ベネフィット
ターゲットが得られる便益を差し、「機能的便益」「感情的便益」「社会的便益」などがあります。
こちらも、考え方などは下記を参考にして頂けますと幸いです。

iHackさんの場合、下記などがあげられます。

「仕事のパフォーマンスが上がって、上司に認められる」
「パフォーマンスが上がることで、モテる」
「自信をくれる!頑張ろうと思える!」

③-b フィーリング
パーソナリティを、ターゲットが解釈したものになります。関係性は、「機能・性能」と「ベネフィット」のそれと同じです。
ケビン・L・ケラーが言う「ブランド・フィーリング」に近いです。

ブランド・フィーリングとは、ブランドに対する顧客の感情的反応のことである。ブランド・フィーリングは穏やかであったり激しかったり、ポジティブであったりネガティブであったりする。

iHackさんの場合、「スマートなサプリを飲んでる俺、かっこいい」「なんか賢くなった気分になる」などがあります。

まとめますと、iHackさんのプリズムは下記のようになります。

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⑵ビジュアルで表現する

あとは、これをビジュアル化し、実際に伝えてきます。ビジュアル化するのは、ウェブページだけではありません。商品パッケージやオフライン店舗、その全てにおいて一貫性が重要です。というのは常識ですので、別のポイントを2つお話しします。

・ポイント1:○○っぽくなさ
独自性のある表現にする、という意味です。
冒頭でも述べたように、世界観を伝える目的は消費者に選んでもらうこと、です。
この目的から考えた時に、競合と似たようなデザインでは消費者の中で同じイメージとなってしまい、認知を頑張ったところで、むしろ競合の想起を助けてしまう恐れもあります。
ここで重要なのが、USPでなく、UICであるという点です。
ブランディングの科学では、下記のように述べられています。

独自性を重視するということは、USP(ユニーク・セリング・プロポジション)の発見よりもUIC(ユニーク識別特性)の発見に注力するということだ。独自のブランド資産は消費者にブランドの購入を促すものではない。ブランドがどこに存在しているのか、購入したブランンドはどのようなブランドかを消費者におしえてくれる。このようにしてロイヤルティが構築される。

同書では、その具体的な例についても言及されております。

・色(例:コカ・コーラやボーダフォンの色)
・ロゴ(例:マクドナルドの金色のアーチ)
・キャッチフレーズ(例:ナイキのJust do it!)
・シンボル/キャラクター(例:ミッキーマウスの耳)
・セレブリティ(例:ナイキのタイガー・ウッズ)
・広告手法(例:マスターカードのプライスレスキャンペーン)

まとめると、機能や性能がどのように違うか、のようないわゆる「ポジショニング」が重要なのではなく、生活者がどう「識別」できるかの方が重要ということです。
これについては、下記の記事も参考になるかと思います。

とはいえ、どう表現するか分かんないよ!という方も多いでしょう。こんな時思い出したいのが、Wヤング先生の言葉です。「アイデアは、既存の組み合わせから生まれる」どういうことか。
例えば、プレミアムモルツはハーゲンダッツを競合、つまり同じ価値提供をしているので、似たようなクリエイティブになります。

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先程のベネフィットやフィーリングから考えることで、カテゴリー競合とはひと味違う表現の助けを得ることができます。

・ポイント2:○○っぽさ
先程と矛盾するように聞こえるかもしれませんが、どのカテゴリーに属しているか顧客が分からなければ意味がありません。ビールを飲みたい人に対して、ビールと分からない表現をしても、そもそも検討の段階に入らないからです。

D.A.アーカーによると、ブランド認知の定義は下記になります。

あるブランドがある製品カテゴリーに明確に属していることを、潜在的購買者が認識あるいは想起できるということである

これはどういう意味かというと、パッとクリエイティブを見た時に、それが何の商品なのか?を消費者が分からないといけない、ということです。
ケラーも、下記のように述べています。

カテゴリーに属していることを分からないと、消費者は混乱をする。

また、エイトブランディングの西澤さんは、これを「コード」と呼んでおり、ビールの例を使って下記のように綴っています。

ビール売り場に並んでビールに見えないような、”新しいデザイン”をつくってもはっきりいって意味がありません。

つまり、ただただ斬新なデザインを作ればいい、というわけではないのです。直近だと、この「○○っぽさ」を巡って大きな議論がありました。ローソンのPB商品です。ブランドの時間軸は長いので、良い、悪いは現時点で判断できませんが、これはまさしく「○○っぽさ」の議論だったように思います。

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iHackさんの場合ですが、とても上手だと思います。スマート家電の印象を出しながら、カプセルを鏤めることで「○○っぽさ」を担保している。

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以上、iHackさんを例に取りながら、ブランドの世界観を伝える為のステップを書いてきました。
もちろん、世界観の定義は様々かと思いますが、私が勉強した限りでは最もしっくりくるモデルなので、是非参考にしてみてください。






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