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「フラット」「リンク」「シェア」

「おせっかいワーカーになろう③」

 子育て見守り訪問の業務を福岡市から受託するにあたって、子ども家庭福祉の理解と経験のある人に参加してほしいと考えて、福祉系の大学の先生に、卒業生の紹介をお願いしました。平日夜間や土日の勤務が体力的に難しい、兼務が難しいという理由でやんわり断られることが多かったですが、もう一つの理由は、そもそも虐待等の深刻な問題を抱える子どもの安全確認を目的とする訪問を、児童福祉司(児童相談所のケースワーカー)ではない民間のスタッフが行ってよいのか、という疑問があったと思います。はっきりと「民間が行う仕事ではない」と強い口調で断言される先生もいました。

 それまでも今までにない新しい仕事に取り組む意識はありましたが、偉い先生に強く否定されて、一瞬落ち込みましたが、これはもしかしたら本当にやりがいのある大切な仕事かもしれない、と改めて思うようになりました。それは、その後世の中を大きく変えることになるサービスや商品が社会に出たときには、支持されたりほめらることはなくて、当初大反対されることが多いことを学んでいたからです。

 パラダイムシフトが起こっているのです。人は小さな変化には対応できても、社会の価値観が大きく変わるような物事に接すると、何が起こっているか分からず、とりあえず拒否反応を示すものなのです。2001年に出版された『インターネット的』の中で著者の糸井重里氏は、インターネットが生まれたこの時代に新しく必要な価値観は「フラット」「リンク」「シェア」だと予言的に述べています。これらがそれぞれに対応する状況は「上下」「分断」「独占」で、おそらく社会が進んでいる人々にとってよくない方向に対して補完あるいは逆行する次の新しい価値観が求められると語っているのです。

 かつてご近所や親戚など地域で担ってきた子育てや介護などを、私たちは行政等のサービスとして補ってきました。しかしそれが進んでいくと、いつのまにか当たり前になって、サービスして頂くという上下関係、する側される側という分断、資格を持った専門家でないとできないという独占、を生んでしまい、人々を「自分には何もできない」と無力化してしまいました。

 子育て見守り訪問は、同じ市民である仲間が、事情や気持ちを共感共有してつながり、地域全体みんなで子育てしてましょう、という新しい地域づくりの第一歩目の活動になると考えています。

         【労協新聞2017年「おせっかいワーカーになろう③」】


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