#12 / 渋谷区100人カイギ 若松保治さん「街とつながる 子どもが主役のゴミ拾い」
“& stories” は、100人カイギに関わって頂いた方の想いを、深堀り、紐解き、お届けしていくマガジンです。
今回ご登場いただくのは、全国で2番目の開催地となった渋谷区100人カイギ にご登壇頂いた 「 街いく探検隊 」 ファウンダーの若松保治さん。
『まちとつながる 子どもが主役のごみ拾い』を掲げ、まちの清掃&まち歩きを企画運営されている若松さんに、前半は「街いく探検隊」を始められた経緯や活動への想いを、後半では「100人カイギ」との関りと今後の展望についてお話を伺いました。
―― 本日は宜しくお願いします。若松さんは、とてもユニークな活動をされてらっしゃると聞きまして、今日のインタビューとても楽しみにしていました!早速ですが、まずは若松さんの簡単な自己紹介をお願いできますか。
都内在住で、会社員をしています。先日、還暦を迎え、いよいよ人生も折り返しだなと思っています。
―― え、還暦には見えないです!?60歳でようやく折り返しって感覚だからこそ若々しく見えるのかもしれないですね!そんな若々しい若松さんが取り組まれている「街いく探検隊」という活動について伺っていきたいと思います。まずは活動概要を教え下さい。
『まちとつながる 子どもが主役のごみ拾い』をキャッチフレーズに、子どもを中心に多世代交流を目的とした清掃活動を企画運営する団体です。
街を探検しながらゴミ拾いをする活動を通じて、子どもたちの持つ 「感性」「主体性」「自立」を醸成するとともに、地域の多世代交流、地域活性化につながる活動を推進しています。
―― 活動をはじめるきっかけは何だったんでしょうか?
友人が、恵比寿駅前で毎日ゴミ拾いをして、その様子をフェイスブックにアップしてたんですね。
毎日続けるって本当に素晴らしいなと思い「超イイね」を押していましたが、そのうちソファーに寝そべりながら「超イイね」を送ってる自分に違和感が出てきてゴミ拾いに参加するようになりました。
で、実際に参加してみた時に、友人が通りすがりの人に「一緒にやらない?」と声を掛け続けていたら、子どもが面白がって一緒にゴミ拾いをやってくれて。その時の子どもの表情が、とにかくキラキラと楽しそうで。ゴミを探すことも、トングでゴミを挟むことも、大人も子どもも皆でやることも、子ども心をくすぐる貴重な体験なんだなと実感、清掃活動を通じて子どもの成長機会を創るって良いなと思うようになりました。
その後、他の清掃活動にも何度か参加してみましたが、多くの団体は「街をきれいにするためのゴミ拾い」として動かれていて、「子どもを育てるゴミ拾い」がやりたい自分とは文脈がちょっと違ってました。
そこで、子どもが主役の清掃団体が無いなら、自分で作るかと(笑)。プレゼン資料を作って、仲間を口説いて回り、2017年「街いく探検隊」が誕生しました。
―― 街いく探検隊ならではの特徴的な活動を教えて下さい。
色々ありますが、主だったところを3つほどお伝えします。
1つ目は、子どもが楽しんで参加できるような工夫です。
例えば、「ゴミ拾いビンゴ」。街にどんなゴミが落ちてるかを子ども達が予想して、予め用意したゴミカードの中からビンゴの並びを決めて、スタートします。
そうすることで、予想通りのゴミが落ちていればうれしいですし、予想外のゴミが落ちていれば驚きが生まれます。ゴミ拾いをゲーム感覚で楽しみながら、世の中のゴミ問題に自然と向き合えるようになります。そして、予想外のゴミを発見したら、それもビンゴシートに記録して後で振り返ることで、なぜここにこんなゴミが?という探求学習的な要素もあります。
2つ目は、参加者が積極的に活動に関われる余白を残すこと。
毎回、子ども達の感想やアイデアを聞くようにしていますが、「ゴミ拾いの参加のご褒美で駄菓子をもらえるのはうれしいけど、文房具もあると嬉しい!」とある男の子から声が上がったんですよね。
そして、「家に眠っている文房具を寄付してもらったらいいんじゃないか」とその子の発案で、自ら商店街の幾つかのお店と交渉して不要な文房具の回収ボックスを設置してもらったところ、2週間でなんと700点を超える文房具が集まりました。
子ども自身、アイデアを出して関われることは嬉しいですし、そういった経験が子どもの主体性を育みますよね。運営側としては、ついつい良かれと思って全部準備しがちですが、あえて「余白を残す」ことを意識しています。
3つ目は、目利き力と愛着心を育てること。
ゴミ拾いをしながら、街をゆっくり歩いていると「ナンデ?」って思う風景や物が意外とあります。例えばこの写真
ビルの入り口前に、なぜか「井戸」があるんです。ビルを建てる時に一度取り壊したはずなのに、昔ながらの情景を残したいと思ったビルオーナーが、わざわざ作り直して残したとしか思えないんです。何も意識せずに歩いてたら見過ごしてしまう謎の物が、誰かの想いで再建されたものだと分かると、感じ方って変わってきますよね。
そういったちょっとした風景に「ナンデ?」と疑問を持ち、「そうなんだ!」と理由が分かる。この探求を繰り返してるうちに、街を楽しむ「目利き力」が育っていくと考えています。
「街」という言葉って、とても抽象的なものだと思われがちですが、個々人の想いや営みの集合体なんですよね。そこで暮らす1人1人の思いやこだわりに触れ、そこに「面白み」や「暖かみ」、こんな暮らしもありなんだ!(笑)といった「ユルさ」を感じることで、街が身近なもになり「愛着心」が育っていくと思うんです。
自分のこだわりや想いをわざわざ話す人ってなかなかいないけど、子どもたちがゴミ拾いをしながらまち歩きをしていると、多くの人がありがとう!って声をかけてくれます。中には、立ち止まって、子ども達に昔のことを教えてくれたりするんです。子どもを中心に据えた活動だからこそ、世代間交流も自然と起こる。これも「街いく探検隊」の面白いところだと思います。
―― 街いく探検隊、めちゃくちゃ素敵な活動ですね!ただ、普段お仕事がありながらこれだけの活動をするのは相当大変だと思うんです。若松さんを突き動かすモチベーションはどこから来るんでしょうか?
都市の再開発に従事するデベロッパーという仕事柄、そもそも「良い街とは」といったことに興味があるのが大きいかもしれません。
良い街になっていくためには、ハード面だけでなくソフト面も重要。具体的に言えば、子どものうちから街に「愛着」や「プライド」を持って、将来「街の担い手」として活躍してもらうことが必要だと考えています。
お祭りやゴミ拾いなど、身近な地域活動ですら人手不足で、いくら参加を呼び掛けても、大人になると何かと理由を付けて参加しないものです。
であれば、子どものうちから街の活動に積極的に「主役」として参加してもらい、愛着や人間関係を育むことで、大人になっても担い手として活躍してくれるようになるのではないかと考えています。
今後避けては通れない人口減少時代に向けて、今できることをやろうという想いが強いですね。
人と言うのは、結局のところ「何を持っているか」ではなく「何を残せたか」が、自身の喜びや幸せになってくると思うんです。人生の折り返しとなって、「未来のために自分が出来ることを」という気持ちはますます強くなってきましたし、その想いこそが「街いく探検隊」を続ける原動力になってるんだと思います。
―― ここまで話しを伺って、こんな面白い人材・活動を、100人カイギが放っておくはずがないなと思いました(笑)。
ここからは、若松さんと100人カイギの関りについて伺っていきたいと思います。そもそも100人カイギとの出逢いはどんな形で始まったんでしょうか?
オフィスで僕の前に座っている同僚が、たまたま渋谷区100人カイギキュレーターの1人である金川さんの友人でした。で、同僚から紹介された金川さんから「渋谷区100人カイギで登壇しませんか」とお声がけ頂いたのがきっかけです。
―― 実際に100人カイギに登壇されてみてどうでしたか?
とても面白かったですし、様々なご縁が拡がっていくきっかけになりましたね。
―― 100人カイギのどのような点が面白いと感じられましたか?
まずは、エリアで区切って開催している点が面白いなと。そのエリアに関心が高い人が集まっている前提があるおかげで、安心して交流ができ、自然と盛り上がりやすい設計になっていると思います。
更には、登壇者はどんな人が出てくるか予想がつかないワクワク感があります。世間的に名の売れた凄い人の話が聴けるというよりも、その地域に根差した隠れた名プレイヤーとたくさん出会えるんですよ。料理に例えるならば、完成されたフレンチの美味しさというより、未完成で粗削りな寄鍋的なオモシロさが味わえる。これは100人カイギならではだと思います。
そして、最終回が初めから決められているといのも、また面白い。どれだけ盛り上がっても、最終回が来ることが全員がわかっているという一体感、儚さがたまらないですよね。だからこそ、一回一回の出会いを大切に交流するから、100人カイギが解散したあとも関係性が続いていくんだと思います。
この座組の妙、ハッキリ言って「天才かよ!」と思いましたし、これはそのまま世界に輸出できる枠組みなんじゃないかと思います。
―― こんなに褒められたら、高嶋さん、嬉し泣きしちゃうかもしれませんね(笑)。では、100人カイギに出られて拡がったご縁についても教えて貰えますか?
渋谷区100人カイギが解散したあとに、「これで終わるのももったいない、何かできることは無いか」とアイディア会議があったんです。その時に「街いく探検隊」の活動をベースに、まちから無くなってもらいたくないものを「まち遺産」と名付けて、それを発見する「まち遺産探検隊」という形でやってみようという話しになり、渋谷区100人カイギの皆さんにお力添えを頂いて「渋谷区初台」で企画開催することができました。これが、一つ目の拡がりですね。
その後、コロナ禍に突入して活動が停滞する時期もあったのですが、2022年から、その「まち遺産探検隊」を通じて得た繋がりから、幡ヶ谷、西原、調布と、活動地域が徐々に拡がってきています。
この地域拡大の裏にあるのは、ご縁で繋がった方々自身がこの活動に賛同して自ら主催してくれてること。地域毎にチームができて自走しはじめたことは、街いく探検隊の活動において大きな転換点になったと思っています。
そして、つい先日開催された「100人カイギマーケット」に参加することで、ご縁も更に拡がりました。おかげさまで、来年には新たな地域で活動が始まりそうです。
街いく探検隊も立ち上げから5年が経過する中で、ここ1年だけで活動回数40回、1000人を超える方々にご参加頂けるまでになりましたが、これだけ拡がりが生まれたのも100人カイギで出会った皆さんとのご縁のおかげです。100人カイギに参加して本当に良かったなと思っています。
―― 100人カイギに参加することでご縁がどんどん拡がったんですね。ただ、ご縁があっても掴めない人もいると思うのですが、若松さんがこれだけご縁を活かせるのは何故でしょうか?
人と出逢う時に「何か面白いことが生まれるかも」といったワクワク感を持つこと。社交辞令的な言葉で終わらずに、接点や可能性がないかと期待を胸に会話をすることがポイントかもしれません。
また、どんなに忙しい時でも活動のオファーがあったら、基本は断りません。「やらない後悔」よりも「やった経験」を大事にしたいと思っています。上手くいってもいかなくても、行動から得た経験は必ず学びになりますからね。「迷ったらGO!」そういったスタンスが、より良いご縁を引き寄せてるような気がします。
これから100人カイギに参加される方も、ぜひそういったスタンスで積極的に交流して、皆さんならではのご縁を楽しんでもらえたらなと思います。
―― 100人カイギの楽しみ方のアドバイスまでありがとうございます!では最後に、若松さんが想い描く今後の展望について教えて頂けますか?
手前味噌かもしれないですが、街いく探検隊という活動、本当に良い企画だと思っていまして、この活動を、今後は全国に広げていきたいと思っています。
―― 全国に広げていくにあたって考えられているステップはありますか?
3つ考えています。
まずは、「街いく探検隊」を一般社団法人化すること。
ありがたいことに、色々な方からお声がけを頂けるようになってきたのですが、個人でやっている団体と、法人でやっている団体とでは、信頼のされ方が違うんですよね。一般社団法人化することによって、皆さまが一緒に動きやすい体制を整えていきたいと思います。
次に、「ノウハウのフォーマット化」を進めます。
ここまでのインタビューでもお話しましたが、ビンゴの活用方法や、参加者と一緒に創り上げる上で余白をどこまで残すか、または地域活動として根差していくための留意点など、かなりのノウハウが貯まってきてます。これを整理して提供することで、「街いく探検隊、やってみたい!」と声を上げてくれた方が、スムーズに展開できるようになると思います。
そして最後に、このインタビューを通じた実施エリアの拡大。
「街いく探検隊」の活動は、これまでも人のご縁から拡がってきましたが、ここから先もやっぱり人の繋がりで新たな展開地域が生まれて行くと思っています。今回の記事を読んで、「街いく探検隊」の活動にピンと来た方は、ぜひ気軽に連絡を頂ければと思います。
どれだけリアクションがあるかは、豊田さんの記事によるところが大きいので、ぜひ良いインタビュー記事をお願いしますね(笑)
―― 最後にプレッシャーをありがとうございます(笑)。長時間のインタビューにお付き合い頂きながら、反響ゼロだったら大変申し訳ないので、皆さまぜひ、若松さんまで問い合わせ頂けると、ライターとして救われます(笑)。
このインタビュー記事を読まれる方は、100人カイギと関わりのある方が多いと思いますし、100人カイギに関わりのある人はアクティブに何かをやってみたい人が多いと思いますので、きっと反響はあると思いますよ(笑)
全国各地で開催されている100人カイギの皆さんのお力添えがあれば、「街いく探検隊」の全国展開も夢ではないんじゃないかと思っています。ぜひ「街いく探検隊」を通して、より良い未来を皆さんと一緒に創っていけたらと思います。
写真提供:若松保治さん
聴き手 :豊田 陽介
文 :豊田 陽介
100人カイギ & stories ライター
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