持ち家と賃貸の判断基準
持家が良いのか、賃貸が良いのか。これは昔から議論が盛んなテーマですよね。
一般的に「住宅コスト」は、ぼくたちが生きていくうえで一番大きな出費だと言われています。だからこそ、住宅の選択を失敗したくないという思いが強いと思います。
持ち家派と賃貸派は普段は冷戦状態ですが、ネット上では過激なバトルを繰り返しています。ただお互いの主張を聞いていると、どこか話がかみ合ってないような印象を受けます。
ぼくは持ち家か賃貸か選択する際には、大きく以下の2つの要素に分解して考えるべきだと考えています。
①経済的合理性
②ライフスタイル
今回の記事では
・将来持ち家にすべきか賃貸にすべきか迷われている方
・家族が増え住宅の購入を迷われている方
・すでに住宅を購入したものの将来が不安な方
に向けて、FP資格を保有し元銀行員である身から私見を述べたいと思います。最終的にはご自身の判断にはなりますが、結論を出すうえでの手助けになれば幸いです。
1.経済的合理性について
経済的合理性とは、投資したお金に対していかに利益を上げられるかという意味です。この判断は
リセールバリューと生涯支出額
という側面から行います。
まず、リセールバリューとは一言でいうと「売却時の金額」のことです。たとえば、
①5,000万円で買った家が、30年後に4,500万円で売れた
②3,500万円で買った家が、30年後に500万円で売れた
というケースを考えます。①の場合、購入時と売却時の差額は500万円ですが、②の場合は3,000万円となり、①の方が有利に売却できたという事になります。30年間の住居費を500万円でおさえることが出来たので、かなりお得ですよね。よって、①の物件の方がリセールバリューが高い家という事になります。
ただ、これは結果に過ぎません。税制上、日本の建物は約25年で価値はゼロになります。そのため、リセールバリュー=土地の値段になることが多いのですが、未来の日本では今よりも人口が減ることが確実視されていますので、土地の値段は下がる可能性の方が高いといえます。
その一方、例えば東京の一等地だったり、地方では人口増加地域などは土地の値段が上がる可能性もありますが、これも予測はできません。少なくとも資産価値のある良い土地であれば、土地の所有者は手放しません。これらのことからリセールバリューの高い住居や不動産を手に入れることは難しいという事になります。
次に、生涯支出額についてです。これは住宅取得にかかる生涯コスト(ローンの場合は金利等諸経費も含む)と賃貸住宅を借り入れた場合の生涯コストを見積もり比較します。
なお、持ち家の住宅コストには、火災保険料、固定資産税、老築化に伴う修繕費、増改築、新しい設備購入費用などを概算として含めなければなりません。目安としては、少なくとも取得価格×1.5倍は見積もりたいところです。
長生きすればするほど、持ち家は有利になります。ただ、ぼくたちがどれだけ長生きできるか、正確な計算はできません。その一方、賃貸の場合もずっと同じ家に住み続けるわけではなく、家族の増減に合わせて、コストの低い家に引っ越すなど柔軟な対応も可能になります。そのため、生涯支出額の比較も難しいという事になります。
リセールバリューの高い家は購入できない。生涯支出額の比較も難しい。結局、確実に言えることはシンプルで経済合理性の高さ=住宅取得コストが低いこと、経済合理性の低さ=住宅取得コストが高いことです。そのため、中古物件や賃貸であれば経済合理性が高くなるし、新築物件であれば経済合理性が低くなるという事です。
その一方、経済合理性を求めない人とはどのような人たちでしょうか。それは人間の本能や感情を重視する人たちです。以下の図は有名な社会学者、マズローが提唱している人間の欲求5段階説です。
ぼくたち人間は、昔の農耕社会においては土地を所有しないと生き延びられませんでした。そのため土地や家を所有したいという欲望は人間の本能です。(安全の欲求)
また、持ち家を持つことで家族の間で良好な関係が生まれるのだとしたら、そこには目に見えない「価値」が生まれてきます。(「所属」と「愛」の欲求)
さらに、社会的ステータスが高くご近所さんや友達に自慢できる家に住むことが出来れば、他人からも認められます。(承認欲求)
このような人間の本来的欲求を満たすことにも合理性があるとぼくは考えています。※この記事では、社会的合理性と呼ぶことにします。
ですので、あなたが経済的合理性を求める人なのか、社会的合理性を求める人なのかによって結論は変わってくるのです。
①経済的合理性を求める方
・経済的な自由を求める方
・感情面よりもお金が最優先の方 など
→中古持ち家、安価な賃貸物件など
②社会的合理性を求める方
・家を持つことで、本能的な欲求を大切にしたい方
・お金は十分にある方 など
→新築持ち家、高価な賃貸マンションなど
2.ライフスタイルについて
ここでいうライフスタイルとは、シンプルに
永住を求めるか自由を求めるか
という点です。
例えば地元企業のサラリーマンや、市役所職員の方であれば、転勤することがほとんどないので、同じ場所で住み続けたいと思う方が多いでしょう。他にはご近所付き合いを大切にしたい方、家族関係を大切にしたい方も含まれるかもしれませんね。
その一方、例えば一家の大黒柱が転勤族であれば、持ち家という選択肢はないですよね。また、将来海外に住みたいという夢を持っている家族にとっても、その選択肢はないわけです。
結局、ライフスタイルの考え方も人それぞれという事です。
③永住を求める方
・地元が好きでずっと住みたい
・家族やご近所付き合いを大切にしたい
→持ち家 など
④自由を求める方
・一家の大黒柱が転勤族だ
・将来は海外で暮らしたい
→賃貸物件 など
3.まとめ
それではここまで見てきた①~④の要素を、図に表してみます.
この図に自分の状況を当てはめてみて、持ち家か賃貸か判断する際の一つの材料としてみてはいかがでしょうか。
ここで注目すべきは、賃貸物件であればすべてのケースをカバーできてしまうという事です。持ち家にすべきか確信が持てないなら、賃貸物件にしておきましょう。
特に、新築住宅の購入は慎重になりましょう。勢いで買ってしまうとあとで後悔する可能性もあります。人間の感情は空調と同じで、暑くなればいつかは冷めるという性質を持っています。新築住宅を買った時は幸福感でいっぱいになりますが、半年程度で元通りになってしまうという研究結果もあります。
ちなみに、ぼく自身は自由に暮らしたいという理由から賃貸に住んでいます。ただ、将来的には田舎に住んで中古物件をリノベして住んでみたいという思いもありますので、持ち家否定派ではありませんよ。
今回の記事が、皆さんの参考になれば幸いです。
最後まで記事をご覧いただきありがとうございました。😁
ではまた。
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