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L(人件費)管理

人件費管理は飲食業、小売業にとって利益に直結する大事な数字。
原価管理に関しては以下記事を参照していただきたい。

何も考えていなければ驚くほど膨らむし、気づいたら適正値になっていたということは一切ない。
本記事では人件費の基本的な考え方から管理の内容について説明していく。

人件費とは

営業にかかる人件費の総額である。
PAを抱えている場合社員の給与とPA給与の合計支給額が人件費である。
と、考えてしまいがちだが従業員が加入する『保険料』の会社負担分も立派な人件費である。
つまり「人件費(PA社員人件費+保険料)÷売上=人件費率」となる。

管理するためのツール

人件費を管理するために必要不可欠なもの、それが予想と実績である。
・シフト表
・タイムカード
上記2点無くして人件費の管理はできない。
さらにそれぞれに管理するため必要な項目がある。

シフト表
・提出された全シフト
・調整後の実際のシフト
・調整後のシフトの人件費合計目標が計算できる状態
タイムカード
実績が記録されている状態
人件費合計が把握できる状態

シフト表

みなさんがシフト表に求める意味とは一体なんでしょう?
出勤の日を把握するもの?アルバイトに共有するためのもの?
もちろんシフト表の一つの大切な側面ではあるものの、人件費管理という観点において重要な意味が他にある。
それは売上目標に対しての人件費目標を設定し、実行させるということ。
ではどのように目標を設定し実行していくか、以下説明していく。

最低人数の把握

まず初めに考えなければいけないこと、それは店舗を運営していく上での最低必要人数の把握。
それはいろんな要素によって左右されるので店舗に合わせてどうなのか考えてみて欲しい。
例えばカウンターのみ8席のお店なら1人だろうし1フロア30席のお店なら4人。
同じ30席のお店でも売上予想によって最低人数は変わってくる。
これがわかればどんなに売上が低くても必要な人件費の下限が把握できる。

さて、その次にするべきことは売上予想を立てて『人事売上高』から使える人件費を決定していく。

人時売上高

人事売上高(にんじうりあげだか)とは
「その売上を獲得するために、何時間の労働を費やしたのか」ということ。
言い換えると、「従業員が1時間働くと、いくらの売上を上げることができるのか」ということ。

初めて聞いた人には何のこっちゃな言葉でしょう。
なにせ私もそうだった。

売上を500万と仮定する。
従業員の総労働時間を1,000時間と仮定すると
人事売上=500万÷1,000=5,000円

つまり1時間でスタッフがいくら売上作れてるかということ。

架空店舗を一例としてあげる
売上500万社員給与30万円アルバイト時給1,000円
社員労働時間180時間と総労働時間1,000時間と仮定すると
人時売上は5,000円
アルバイト労働時間は
1,000-180=820時間
820時間×1,000円=820,000円
人件費合計が
30万円+82万円=112万円
112万円÷500万円×100=22.4%

内訳によっても変わってくるが人事売上高が5,000円で保険料抜き23%弱の人件費率となる。
飲食店の人時売上高が3,000円から5,000円と言われているのでそれをベースに売上目標から逆算してシフト必要人数を調整していく。
以下、説明の都合で保険料を抜きとして計算式を展開していく。

労働可能時間の決定

日別売上予想から目標とする人時売上高に応じて日毎のシフト人数を決定する。

月間売上予想500万円の場合
日〜木の予算を14万円、金土の予算を25万円に設定。
日〜木22日、金土8回と仮定すると
(14万×22日)+(25万×8日)=508万円
日〜木の人時売上高を4,000円、金土を5,000円と仮定すると
14万円÷4,000円=35時間
25万÷5,000円=50時間

この場合、
(35時間×22日)+(50時間×8日)=1,170時間(月間総労働時間)
500万÷1,170時間≒4,274円
月間人時売上高は4,274円となる
この時の人件費率が
1,170×1,000円÷500万円×100=23.4%

つまり日〜木は35時間金土は50時間の労働をしてもらうことができる。

シフト作成

1日に使える人件費がわかったのでシフトの作成に取り掛かる
・提出シフト
・仮シフト
・確定シフト

の順を追って作成していく

提出シフトを集めたものを打ち込む。

提出シフト

提出シフト

人時売上ベースで労働時間を調整していく

仮シフト

仮シフト

この時にピーク時間を予測し無駄のないようにズラしながら人員調整をかける。
このエクセル上では仮想退勤時間も打ち込む。
画像は一部だがのちの項目で説明する人件費率目標が定まったのちの調整が目視できるシートになっている。
画像外で日毎の社員人数や給与額、保険料を打ち込み正確に日毎人件費を追っていける。

確定シフト

確定シフト

弊社ではこれが同一エクセルブック上で3シートに渡って保存されている。
提出シフト、仮シフトを残しておく理由としては急な欠勤等が出た場合代わりを早急に見つけることができるため。

人件費率目標

人事売上高から想定適正人件費を算出し1シフト分運用してみた結果から適正人件費率が算出できる。
人件費管理は人時売上高と人件費率両側面から調整をかけていく。
人件費率の考え方が必要な理由は、売上の増減に対し対応できる点にある。
ある程度の売上予算に対しての増減は遅入り、早上がり、休憩等で同じパーセンテージに収束させることができる
そのため利益率を変えずに変動費として意識することができる。

月間の売上目標を500万円、人件費率目標を23.5%
日〜木の売上予算を14万円、金土の売上予算を25万円と仮定する。
単純に使える人件費を人件費率から計算すると
14万円×23.5%=32,900円
25万円×23.5%=58,750円

社員日割り1万円PA時給1,000円と仮定すると
(32,900円-10,000円)÷1,000円≒23時間
(58,750円-10,000円)÷1,000円≒49時間

日〜木23時間ずつ、金土49時間ずつのPAを従事させることができる
人時売上高から算出した適正人数をこの時間内に当てはめていく。

スクリーンショット 2019-10-04 20.37.08

ざっくりだが上記の様にピークタイムに人員を固めそれ以外は必要人数に絞ってシフトを組む。
そのため1シフト分試したときのピークタイムの把握が重要

人件費率目標からズレる原因

これだけ頑張ってシフトを組んでも結果全く人件費率目標に収まっていない…
そんなことって往々にしてある。
主だった要因としては以下。
・シフト人数の組み間違い
・売上目標と実数の著しい差異
・適切な早上がり、休憩が出来ていない

シフト人数の組み間違い

動き出してしまってから市場調整が聞きにくいことが人数の組み間違いなのでメチャクチャ気を使ってシフトを組む。
サッカーで言うところのフォーメンションと同じでここがずれているとその他の戦術云々などの話ではなくなってしまう。
細心の注意を払ってシフトを組んでく

売上目標と実数の差異

売上目標500万円で人件費目標20%の設定で一切調整をかけない場合
実数300万円のときに33%になってしまう。

500万円×20÷100=100万円
100万円÷300万円×100≒33%

ここまで大きく売上がずれてしまうと人件費目標を達成することは厳しいが、最大限調整をかけていく。
シフトのスパンにもよるが月二回提出の場合は、前半の売上を鑑みて後半シフトで人数を減らすなどの施策を打っていく。

適切な早上がり、休憩

所謂人件費調整と言われている部分がここ。
目標売上をとっていてもアイドルタイムが生まれたり、前半に集客が弱い後半に集客が弱いなどエリア、業態によって違いが生まれる。
そのため売上の時間帯、比率に応じて適切に休憩を回したり、早上がりをさせていく必要がある。

最後に

基本的な考え方、管理内容を記述してきた。
ここに書ききれていない内容は定性的なものや例示でしか語れないケースバイケースの事例が多くなるので割愛させていただいている。
FLR(家賃)を絡めた全体の利益調整やブランディングに関しては別の機会に。

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