一人で頑張らなくていい子育てを
ー今回取材させていただくのは、小原あさこさんにご紹介いただいた、中村 緑(なかむら みどり)さん。1児の母としてお子さんを育てながら、子育てサークル『ひなたぼっこ』を運営しています。サークル運営以外でも、母子支援の活動をする中村さんですが、その柔軟な考え方は、住んでいる環境を住人自らつくるシェアハウス『エスコーラ』で出会う方々から影響を受けたそうです。子育てに関する思いや地域とのつながりなどについて、お話をうかがいました。
困ってるお母さんがいたら、声をかけたい
ー『ひなたぼっこ』の活動について教えてください。
毎週金曜日に会館を借りて、妊婦さんやママさんがお子さんを連れて集まる場を開いています。お母さんが子育てについての悩みを相談したり、子供同士遊んだりできる場所になっています。離乳食の話とか、兄弟が赤ちゃん返りしてる悩みとか、ざっくばらんに話せる場所になっています。
ー中村さんが活動をはじめたきっかけはなんですか?
当初は別の方が運営をされていて、私が参加したのが3月だったんですけど、初めて行ったその日に、「次の年度を引き継ぐ人がいないから、サークルがなくなってしまうかもしれない」と聞きました。妊婦のメンバーの方が産後に戻ってこれる場所があったらいいなと思っていたし、他にも同じ考えの方がいたので、この場所を残したいと思い、引き継ぐことにしました。
ー行ってすぐ...すごいですね。
10年続いてるコミュニティですし、大人と子供が楽しく過ごせるような場が、児童館以外で選択肢の一つとしてあったらいいなと思いました。自分たちで考えて好きなことをやれる場なので、部活みたいな感じでやってます。
ー参加されているのは、どんな方たちですか?
児童館で友だちになった方や、道端で声をかけた方で、いま7組くらいですね。ネットで検索しても何が正解か分からないと困っている方や、引っ越してきたばかりで、どこにどんな場所があるか分からない...みたいな方たちがいます。
ー道端で声をかけられるの、すごいですね!
友だちには「またナンパしてる」って言われます(笑)よく見かけるお母さんと赤ちゃんがいたら、「こんにちは、何ヶ月ですか?」って声をかける感じです。育休産休に入って東山区に住み始めたものの、地盤がないからつながりがなくて、何も分からず困ってる人もいるんですよね。
以前ひなたぼっこのメンバーにアンケートを実施したとき、産後鬱になって病院に通っていることを打ち明けてくださった方がいたんです。私は元々その方との交流があまりなかったのですが、せっかくコミュニティがあるのに、抱え込んでしまって誰にも言えない状況だったんだなぁと、もどかしくて。少しでもこちらから声かけがあってつながっていれば、もっと楽になっていたのかなぁとか。誰にも言えないけどしんどくて抱えている方がいれば力になりたい、という思いで声かけをしています。
シェアハウスで培った、柔軟な生き方
ーとてもフランクな雰囲気が伝わってきますが、昔からですか?
実は、昔はガチガチに生きるタイプだったんです。人との交流は好きだったんですけど、「こうあらねばならない」に縛られるタイプでした。進路は受験勉強、大学進学、就職活動...と、エスカレーターみたいな感じで。でも、いま住んでいる『エスコーラ』というシェアハウスで、色んなタイプの方と出会った影響もあり、だんだん柔軟になっていきました。
ーどんな出会いがあったんですか?
当時のエスコーラの代表は、「なんでもやってみなはれ」精神で、オープンな雰囲気の人でした。100%求める系だった私にも「いいんちゃう、それもやってみたら」と接してくれて、次第に私も「60%くらいでいいや」という考え方になっていきました。
他にも、好きなことをして生きているフリーランスの方とか、自分のネットワークでは絶対会えないような生き方の方たちと出会いました。その方たちの生き方を見ているうちに、「こうあらねばという生き方なんて、ないんだな」という感覚になりました。3、4年くらいの間で、どんどん緩くなってきましたね(笑)
エスカレーターで進んでいた頃は、「仕事をやめてお金がなくなったら生きてけないんじゃないか」みたいな不安がありましたが、周りにやりたいことで生きている方がいた影響もあって、「企業に勤めなくても生きてけるやん」と思えるようになっていきました。
当時塾の先生をしていましたが、元々夢だった幼稚園の先生、保育士の夢に向けて飛び込むことができたのも、その環境のおかげだなと思います。
頼り合える子育てのサポートがしたい
ーそして無事保育士になられたんですね。保育士の経験が、いまの活動にもつながっているんでしょうか。
そうですね。出産を機に保育園を退職したんですけど、お母さんたちの声を聞いていて、みんな頑張りすぎだと感じていました。一人で抱え込んでしまうというか。
自分も母親になって同じ目線でママ友の話を聞いてみて、一対一で家で子どもをみながら家事するって、ほんと大変だなと実感しました。でも、育休中や、入園するまでに誰かに頼ったり子供を預けようと思えない人も多い。悩みを共有できる人が周りにいるといないとでは、大きく違うなと感じています。少しでも楽になれる場があればという気持ちは、『ひなたぼっこ』の活動にもつながっていると思います。
ー子育てサークル以外に取り組まれていることはありますか?
少しずつですが、ライフワークとして「母と子供の心身健やかな暮らしをサポートする」をテーマに活動しています。
特に3歳ぐらいまでは、お母さんの心の持ちようが子供にすごく影響します。だから、子供が心身健やかで過ごすためには、お母さん自身がそうであることが大事なんです。そういった部分をサポートできたらという想いで、産前産後訪問支援員の研修を受けていたり、助産院の託児スタッフや、シッターなどさせていただいています。
ー様々な面から、母子支援を模索されているんですね。
そうですね。そういった現場でも、1対1で家で子どもと過ごすのが大変というお母さんの声をちょこちょこ聞いたりするので、もっと頼り合って、「子育てをみんなでする」みたいな雰囲気が広がっていけばいいなと思いますね。
私の旦那はインドネシア人なんですが、東南アジアではシッターさんがいるのが一般的なようです。日本ではよく子供が産まれたら実家に帰る習慣がありますが、東南アジアでは逆に実家の人が面倒を見にきたり、シッターに家事や子供の世話をしてもらう環境があって。他にも中国では、お母さんが産後、産後ケアホテルなどに行って自分で自分をケアするのが当たり前という文化があるようです。お金をかけて産後ケアホテルに行き、まずは自分を癒す。「自分で自分を大事にしないで、子どもを大事にできるのか」という考え方のようです。
日本でも、お母さんが自分で自分を大事にしようという文化や考え方が広まっていけばいいなと思っています。
ー最後に、子育てを頑張るお母さんにメッセージをいただけますか?
話を聞いてもらうだけでも楽になることがあると思うので、人に相談したり、他の親子と交流したりする場所の選択肢として、『ひなたぼっこ』にも遊びに来てもらえたら嬉しいなと思います。
インタビュー動画
インタビューの様子を撮影しましたので、ぜひご覧ください!
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