頭を垂れる三角コーンと彼
どうも。東野京(ひがしのみやこ)です。
今年も暑くなりそうですね。
猛暑といえばあまりの暑さに三角コーンがふにゃふにゃになってしまう様子をSNSか何かで見たような気がします。
今回は暑さ以外の要因で頭を垂れる三角コーンのお話をしたいと思います。
深夜、吉祥寺の某所で
当時の私は夜勤に従事していました。
時刻は日をまたいで暫くした後、終電なんてとうに過ぎ去った頃の吉祥寺某所での出来事です。
深夜、人気のない商店街の中で私と先輩は作業に取り掛かっていました。
人気がないと言うと語弊があるかもしれません。
私達が作業をしている現場のすぐ近くの敷地では建築関係の方々が作業に従事していたのです。
とは言ってもそれ以外の人気はなく、閑散とした真夜中の商店街には独特の風情が感じられます。
それこそ何か怪談の舞台にでもなりそうな、そんな雰囲気が漂っていたのです。
車内で先輩を待っていた
吉祥寺での作業を終えた私は、同行する先輩を待っていました。
きっちり片付けまで終えてから、彼はお手洗いに行ってしまったのです。
それであれば先に一声掛けてくれれば片付けの段階で先輩の分まで作業を引き取ったのにという気持ちで先輩を待ちわびていました。
事前に組まれたスケジュールを終わらせればその日の仕事は終業という形でしたので、基本的にどの社員も巻きで仕事を終わらせるというスタンスでした。
同じ給料ならば早く終わるに越したことはありません。
当然、私も同じ考えです。
とは言っても真面目な方ばかりでしたので、手は抜かないというのが暗黙の了解でした。
クオリティは落とさずに以下に効率よく終わらせるか、それが仕事だ。
というような矜持を一様に持ち合わせていたように思います。
先輩は暫く戻りませんでした。
おそらく大便だったのでしょう。
生理現象を咎めるつもりはありません。
こういう時はお互い様なので、先輩の分の仕事を私に託してさっさとお手洗いに行ってほしかったという愚痴のようなものですね。
こだまする叫び声と頭を垂れる三角コーン
引き続き車中で先輩を待っていた時、外から女性の叫び声が聞こえてきました。
声の方に目をやると若い男女が歩いてきます。
言い争っているのか、女性は叫ぶように男性を引き留めようとしています。
しかし、男性は止まりません。
そんな攻防を繰り返しつつ、歩みを進めていました。
それは男女が私の乗る車を過ぎ、先述した工事現場に差し掛かった時の出来事でした。
やり取りに業を煮やしたのか男性は振り返り、すぐ近くにあった三角コーンを全力で蹴りました。
男性の蹴りをまともに食らった三角コーンは立ち上がれません。
頭を垂れて真夜中の吉祥寺の路上に突っ伏したままの無惨な姿を晒し続けています。
彼の蹴りが凄かったのか三角コーンが元々弱っていたのかは分かりかねますが、三角コーンが不憫でなりません。
私は若干の憤りを感じていました。
頭を垂れるは三角コーンのみならず
男性は女性が怯んだ隙に歩みを再開しました。
進もうとする男性、追いかけようとする女性、それを見ている私。
この均衡は揺るがないのかと思っていましたが、あっさりと破られることとなりました。
男性の前に別の男性が立ちはだかったのです。
そう、工事現場で作業に従事していた人達の一人です。
三角コーンを指差し、蹴った男性に何やら言葉を投げかけています。
男性は萎縮して頭を垂れるばかりです。
女性も声を掛けられず見つめるばかりの様相でした。
頭を垂れるもう一人の男性
そうこうしている間に先輩が戻ってきました。
「待たせちゃってごめんね」
開口一番にそう言って頭を下げてきます。
「いいんですよ。先輩のおかげで少し面白いものが見れたので」
そんな話をしながら私達は次の現場へ向かいました。
三角コーン蹴り男性と追いかけ女性がその後どうなったのかは知る由もありません。
最後に
夜勤の頃は関東各地を回っていたからか、こうしたエピソードには事欠かなかったような気がします。
また何か思い出す機会があれば記していきたいと思います。
最後までお目通しくださった方、ありがとうございます。
また何処かでお目にかかれたら幸いです。
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