「お金を出してあげるから」

どうも。
東野京(ひがしのみやこ)

以前に書いた記事が特別好評だった訳でもないのですが、気が向いたので前職の頃の先輩の話を記していきたいと思います。




T先輩について

以前、以下の記事で取り上げたT先輩の話を今回も記していきたいと思います。


T先輩は良くも悪くも中々癖のある人間でした。
(前職の面々は癖が強い人間しかいなかったのですが)

生まれも育ちも大宮のT先輩ですが、一人称は「オイラ」で語尾は「〜だよ」(少し癖のあるイントネーション)でした。

他の埼玉県民とは明らかに異なるイントネーションや独特の訛り、他者に伝わらない独自の単語を用いたりします。

その為先輩から訊き返されたり謎単語の意味を問われたりすることが多いのですが、その度に少し不満気になるのが常でした。

彼の中では常識なので伝わらない我々がおかしいという論調です。
己こそが常識だという彼の芯の強さは羨ましく感じる程でした。

自宅の最寄駅は大宮駅で実家暮らしの所謂「こどおじ」(子ども部屋おじさん)です。

はじめの頃は大宮近辺という意味で大宮と言っていると思っていたので「最寄駅ってどこなんですか?」と訊いたら「大宮だけど?」と半ギレされました。

勝手に東大宮とか西大宮とか土呂あたりだと思っていたので反省しました。

こどおじであることに対して特に思う所はありませんが、寄生する実家が存在しない身としては少し羨ましいです。


金欠

私は生まれてからずっと金欠な気もしますが、その時も金欠でした。

前々職の退職に伴い社宅を追い出され、とりあえず仕事と住むところだけ確保したような状況で床で寝ていたのが懐かしいです。

T先輩も常に金欠だとボヤいていました。

趣味等は特にないそうなのですが、本人曰くそれなりの額を家に収めさせられているそうです。

また、保険業界に勤める親戚によって高額の保険に加入させられているとも言っていました。

先輩の話がどこまで本当かは分かりかねますが、かなり高額の生命保険を(先輩の自費で)掛けさせられていて身内一同が彼の死を望んでいるそうです。

本当だとしたら可哀想にも程がありますが、真偽の程は定かではありません。

ただ、やたらと小肥りで不健康な食生活をしているそうですので、親族が彼の長生きを望むならば改善させてあげるべきなのかなとは思います。


二兎を追うつもりはなかったが二兎を得られた

まだ前職に従事していた頃のある日のことです。

その日の勤務はT先輩と二人でした。

予め決められた複数の現場を回っていき、残すは最後の現場のみというところでした。

最後の現場は決められた時間からしか作業が出来ない為、それまでの間空き時間が発生しました。

空き時間がそれなりに長いことやお腹が減ってきたこともあり、何かご飯を食べることにしました。

その時何処に寄ったのかを忘れてしまったのですが、コンビニか24時間営業のお弁当屋さんのどちらかだったはずです。

早々に購入を済ませる先輩とは裏腹に私は一人で逡巡していました。

二つの品物のうち、どちらを購入するかというよくある悩みです。

胃袋的には二つでも余裕で収納可能ですが、予算は一つ分しかありません。

悩み続ける私に痺れを切らしたのか、T先輩が声をかけてきます。

「お金出すから買ってきなよ」

思いもよらない言葉に驚きを隠せませんでしたが、ありがたく申し出に従うこととしました。

私は体育会系育ちなので先輩の好意には遠慮なく甘えるべきだという鉄則が叩き込まれています。

私は先輩からの援助を受けてお会計を済ませ、今日は良い日だなと思いながら小躍りするような心持ちで車へと戻りました。


喜んだのも束の間

車へと戻り、購入した食料達を貪りました。

お腹が減っていたこともあり、あっという間に食べ終えてしまったことは覚えています。
(そこまで覚えていて何を食べたか覚えていないのは我ながら謎です)

「先輩、ありがとうございました」

私はT先輩への感謝を述べました。奢ってもらったのだから当然のことです。

すると先輩は笑顔でこう返答してきたのです。

「代金返すのはいつでも良いからね」

……え???????

先輩としてはお金を出すというのは貸してあげるよという意味だったそうです。

今手持ちがなくて買えないのだろうと思ったそうです。

私としてはどう考えても奢りの論調だったと思うのですが、そこで揉めても仕方ありません。

その場で代金を支払いました。
そうして暫くのもやし生活が幕を開けることとなったのです。

過度に相手に期待をしてしまったり、相手の発言を自身に都合良く解釈してしまったり、相手の発言の意図を汲めないと痛い目に合うなという学びとなりました。


おわりに

今回の話を他の先輩にしたら爆笑していました。
先輩との話の種や今回の記事のネタになったので良い経験だったと思います。

最後までお目通しくださった方、ありがとうございます。

また何処かでお目にかかれたら幸いです。

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