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まばたきの回数を数えながら

今まで笑っていたのに
彼女は急に黙り込んだ
ふたりの間に流れる沈黙

何か言わなくちゃ
僕は言葉を探すけれど
どうしてだろう
何を話していたのか思い出せない

彼女の瞳のまばたきの回数を数えながら
動かない唇を見つめ続ける

時間が止まってしまったのではないかと思うくらい
さっきから何も変わらない

「ごめん……」
僕の口から出た言葉に自分で驚く
何を誤っているのだろう

彼女もそう思ったらしく
「何?」と僕に尋ねる
しまった 僕は黙り込む
ふたりの間に流れる沈黙

何か言わなくちゃ
僕は言葉を探すけれど
どうしてだろう
何を話したらいいのか思いつかない

彼女は僕のまばたきの回数を数えながら
動かない唇を見つめ続ける

時間が止まってしまったのではないかと思うくらい
さっきから何も変わらない

「何?」もう一度 彼女が僕に聞く
「何?」もう一度 僕が僕に聞く
ふたりの間に流れる沈黙

彼女が僕の心を読もうとする
僕が彼女の心を読もうとする
見知らぬ他人同士に戻ったようだ

「何って何?」少し怒った彼女が言う
「何って何って何?」大真面目に僕が答えると
不意に彼女は笑い出した




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