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かわいそうな子羊のお話


「ねえ ねえ 知ってる?
かわいそうな子羊の話」
「知らないねえ」
「知らないよ」
「知りたくない」

「ひとりぼっちの子羊が
森の中で迷子になりました」
「それから」
「心配だわ」
「ふーん」

「子羊は泣いて 泣いて 
泣きじゃくって
最後には倒れてしまいます」
「聞いていられない」
「ひどい」
「涙がでた」

「でも 大丈夫
お母さん羊が
子羊を迎えにきてくれて
子羊は助かりました」
「そうなんだ」
「…この話続くよね」
「どこがかわいそうなの?」

「けれど 子羊とお母さん羊が
ふたりで家に帰る途中 
恐ろしいオオカミが現れて 
二匹に襲いかかったのです」
「キャー」
「それで それで」
「かわいそう」

「もうだめだと思った瞬間
お父さん羊が現れて 
おおかみをやっつけました」
「あらら」
「まあ よかったよね」
「これがラストではないな」

「その後 子羊 お母さん羊 
お父さん羊の3匹は
山奥で幸せに暮らしました」
「えっ!」
「おかしいでしょ」
「全然かわいそうじゃなかった」

かわいそうな子羊の話
ひどい目にたくさんあったのに
ハッピーエンドだと 
かわいそうだと思ってもらえない
かわいそうな子羊の話





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