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『君と明日の約束を』 連載小説 第十三話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)です。
1投稿数分で読める青春小説の投稿をしています!
全部で文庫本一冊分のボリュームです、よければ覗いてみてください🌻
一つ前のお話はこちらから↓

 彼女は思い出したように振り返り、黒板の上に設置されている時計を確認する。

「時間?」
「うん、ごめんね。ちょっと楽しくなっちゃって。入部届とかはまた今度でいい?」
「いつでも大丈夫」
「分かった。じゃあ一応よろしくね、小坂君」

 僕がもう一度お礼を言うと、彼女は手を振って颯爽と帰って行く。

 しばらくして数人のクラスメイトが帰ってくる。慎一はいない。班長だから鍵を返しに行っているのだろう。

「おーミツ、お待たせ。ちょっと遅くなった」

 慎一が戻ってきたのは数分後だった。

「でも理科室の鍵返すときについでにもらってきた」

 彼の人差し指には部室の鍵がついたリングがはめられている。

「さすが」
「仕事が早いだろ」

 得意げな表情をする慎一に言う。

「慎一、倉本さん文芸部入ってくれるって」
「えぇえ」

 慎一が何だかすごく下手な驚き方をしたので笑ってしまう。

「あ、そっか。帰宅部なんだ……」
「籍を置くだけならって言ってたけど、それでいい?」

 言うと、彼は安堵したように息を吐き出した。

「……そっか。うん、助かる」

 彼は明らかにいつもと違うテンションで「仕事早いなー」と言いながら背中をバシバシ叩いてくる。
 この日の夜、慎一は久しぶりに風邪をひいた。



 週末の昼、僕の目の前には、食事中の倉本日織が座っていた。彼女は食事中も先ほど購入した小説を満足げに眺めていた。不思議だった。

〜〜第十四話につづく〜

【2019年作】恋愛小説、青春小説

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