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『君と明日の約束を』 連載小説 第十八話 檜垣涼

連載小説、投稿いたしました!
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 僕は何か言わないといけない気持ちになり、

「倉本さんは、この後もいるの?」
「そう、夕方までは書くつもり」
「ここで?」
「うん、もうすぐ空いてくるし」

 確かに。
 このモール内のフードコートもお昼時は混むため、昼食以外の使用は禁止されていた。でももうその時間は過ぎている。僕は、彼女がそういうことをちゃんと考えていることに安心する。

「ねえ、小坂君。私の小説手伝ってくれない?」
「手伝う?」

 彼女の言葉の意図を読み取れず、訊き返す。どういうことなんだろうか。

「……うん」
「手伝うって、なにするの?」

 彼女はその質問に、驚いた様子だった。「えっと」と呟き、何かを考えているようだった。
 しばらくの沈黙の後。

「実際に行きたいところがあったらついてきてもらうとか……」
「え、そんなことまでするの」

 口に出してから、しまったと思う。語弊がある。
 そんなことまで手伝わせるの、ではなく、小説を書くのにそんなことまでちゃんとやってるの、だ。

「ああ、そういう意味じゃなくて。ただ単純に」

 単純に驚きだった。
 作家が、実際に舞台となるところに行ったりすることがあるのは知っていた。けどプロだけだと思っていたから。

「本格的だね」
「まあ、できる限りは、だけど」

 またも当たり前だといわんばかりの表情で頷く彼女。

「バイト終わってから夕方までとかでもいいから……どう?」

 別にその時間、他にしていることはない。しいて言えば、最寄駅近くのスーパーのタイムセールが始まるタイミングに合わせて電車に乗るくらい。それまでの間は、本屋に行くかどこかで本を読んで時間を潰していた。だから別に断る理由はない。それに、もう一つ気づく。

 彼女は人質を持っているわけで。まだ入部届けを出していないんだから条件を出すくらいできるのに、そんなことはしてこない。ただ頼んでくる。
 今日話してみて分かった。多分彼女は良い人で、純粋に手伝って欲しいからそう言ってるだけなんだろう。

「部活の延長ってことか」
「そう」
「まあ、遅くならないなら」

〜〜第十九話につづく〜〜

【2019年版】恋愛小説、青春小説

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