『君と明日の約束を』 連載小説 第七話
檜垣涼(ひがきりょう)です。
1投稿数分で読める青春小説の投稿をしています🌸
全部で文庫本一冊分くらいになります。
前回の話はこちらから↓
慎一を見習い、僕も問題に取り掛かる。全く分からなさそうな問題もあったけれど、慎一の邪魔ばかりはしていられないので、とりあえずできる問題から解き始めた。
しばらくして慎一が思い出したように言う。
「あ、鞄サンキューな」
「あんまり遅くならなかったんだ」
「おう」
軽い感じで慎一が頷くので、僕も何気ないノリで訊く。
「――告白?」
「そ。この時期は多いからな」
「それ、なんか前にも同じこと聞いた気がするんだけど」
「そうだっけ?」
「うん、文化祭前にも」
「まあ文化祭前後はそういうこと多いよな。文化祭のテンションが残って、的な? あと、もうすぐ夏休みだから」
僕には分からないけど、そうなんだろう。飄々とした様子で答える彼は去年、高校に入って数ヶ月の段階でも数人から告白されていた。
「で?」
「――断ったけど」
慎一が聞いてほしいのかよく分からない感じで呟いた。だから僕はなんとなく調子を合わせる感じで応える。
「そっか、相変わらずだね」
「まあ」
慎一が一気に溜息を吐き出し、勉強に集中し始めた。
結局宿題は終わらなかった。でも、結構集中できたから、このままだと明日までには終わるだろう。
僕は下校の放送を聞きながら渡り廊下を駆け足で職員室に向かっていた。夜間照明に照らされた運動場からは運動部の声が聞こえてこない。最近校則が厳しくなったせいで下校時刻を過ぎて鍵を返すと怒られるからだろう。
職員室の前で軽く息を整え、なるべく静かに扉を引く。
「……失礼します」
電気は煌々とついていたが、奥を見ると職員室にはほとんど先生がいなかった。
ほっと息を漏らす。そう言えば田内が「会議がある」と言っていた。僕はすぐに鍵を返却し、職員室を後にした。
「うそ!」
最寄り駅から駐輪場までの道、交差点で信号を待っていたら、スマホを見ていた慎一が声を荒げた。
「何?」
「部活減らそうとしてるらしいって、あの七三」
七三と言うのは髪の毛の通りの安易な教頭のあだ名だ。
【2019年作】恋愛小説、青春小説
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?