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『君と明日の約束を』 連載小説 第四十二話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)と申します。
小説家を目指して小説を書いています。
よろしくお願いします🌹
毎日一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています
数分でさくっと読めるようになっているので、よければ覗いてみてください!
コメントやいいねいつもありがとうございます。大歓迎です!
一つ前のお話はこちらから読めます↓

 一番の収穫は、人に教えるというのは、自分の勉強に対して役立つと気づいたことだった。彼女が疑問を持たないようにあれこれと考えながら準備したのが良かったのかもしれない。手応えを感じた数学のテストを僕に返却するときの田内の表情が、いつもより数段階やわらかいものだった。

 全体的に良い感触を得たテストの返却が全て終わり、二学期の終業式を終えてバイトに向かっていると、彼女からメールが入った。

『テスト終わったね、おつかれさまー。私、前より成績が上がって先生全員から驚かれたよ。君のせいだね、ありがとう! ところで、明日からは……そう、夏休みです! 本を書く時間たっぷり! ミツ君、バイトどのくらい入れてる?』

 彼女は張り切っているようだった。



 最近お金を使いがちなので、夏休みは終日バイトの日を週一日か二日つくっていた。去年の夏休みは慎一と遊んだりもしていたけれど、今年は塾の講習に追われているらしく、夜に慎一の家で一緒にご飯を食べるだけだったので、思う存分シフトを入れられたのだ。

 店長もある程度家の事情を理解してくれているから、朝から夜までのシフトをお願いすると、とくに理由も聞かずバイトの時間を伸ばしてくれた。

「小坂くん疲れない?」

 一日シフトの場合、昼と夕方にまかないが出る。キッチンの奥にあるスペースで夕方のまかないを食べている時、僕よりちょっと早く休憩に入って賄いのパスタを食べている葵さんが気遣いの表情をして訊いてきた。

 彼女はまだ夏休みには入っていないらしいけれど、全休という平日なのに授業がない幸せな時間割のおかげで今日もまた終日のバイトを入れていた。

「まあ、なんとか。でも一日バイトは流石に疲れますね」
「小坂くん最近シフト増えてない?」

 日程と時間はバイトメンバー全員に共有されるから、当然一日シフトを作ったことも知っているのだろう。彼女が他のバイト仲間の分まで見ているとは知らなかったけど。

「夏休みに入るので増やそうかと」
「なに? 夏休みがまだ始まってない葵先輩への当てつけかな?」
「いや、葵さんいつも、暇だーって騒いでるじゃないですか。というか、葵さんは疲れないんですか?」
「それとこれは別なの。うん、慣れてるからねーって、私が暇だから一日シフトに慣れてるって言いたいの? 許せない小坂くん」
「そんなこと言ってません」
「言った」

ーー第四十三話につづく

【2019年】恋愛小説、青春小説

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