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『君と明日の約束を』 連載小説 第二十六話 檜垣涼
檜垣涼(ひがきりょう)と申します。
よろしくお願いします!
毎日、長編小説の連載を投稿しています。
最後までいくと文庫本一冊分くらいになります。
1投稿は数分でさくっと読めるようになっているので、よければ覗いてみてください!
一つ前のお話はこちらから読めます↓
「うん、さっき買ってきた」
「そっか、推理小説読むって言ってたもんね。ミツ君は恋愛小説とかは読まないの?」
僕は今まで読んできた本を思い浮かべる。
「いや、推理小説だけ」
「なんで推理小説、だけ?」
彼女が相変わらずキラキラした目で尋ねてくる。そういえば、彼女みたいにわかりやすい理由はない。でも、多分、推理小説にこだわりだしたのはあの頃からだったと思う。
「結末がわからないのは安心して読めないから」
「ん、どゆことどゆこと?」
彼女は興味深そうに首をかしげる。疑問を持たれることは予想していたので、あらかじめ用意しておいた説明をした。
「あくまで僕が読んだことのある小説の範囲でだけど、推理小説って何か事件が起こったら、ちゃんと探偵とかが犯人突き止めてくれるから。謎が謎のままで終わってしまう小説は今まで一度も読んだことがない。でも恋愛小説とかって、例えば最終的にくっつくのかどうか分からないし、病気の話とかだったらヒロインが死ぬかどうか最後になるまで分からない」
僕は普段あまり人に対して言語化しない思考を整理し、順番に広げていく。
「それがいいって思う人もいるだろうけど、僕は、読んでいる間それが分からないと不安なんだ。でも推理小説だったら、犯人は分からないにせよどういう風に締められるのか分かっているから安心して読める。現実は先がわからないからさ、小説の中くらいは安心したいんだ」
彼女は真剣な表情で僕の話を聞いていた。なんでこんなことを彼女に話しているのだろう。言い終えてから少し恥ずかしくなる。
「ミツ君、面白い」
「どこが」
「そこまで考えてる子珍しいと思うから」
確かに、それは僕の境遇の問題もあるのだろうけど。
「推理小説、すごく好きなんだね」
彼女はいつもより数段楽しそうだった。普段は仲のいい友達とははしゃぐけど、どこか一線置いて見ている人だと思っていた。周りが談笑している時でもその輪の中でよく寝ている姿くらいしか僕が知らないからそう思うのかもしれないけど。
推理小説以外を選ばない理由はあるけど、でもやっぱり、
「そうなんだと思う」
これだけ続いてるのは好きなんだろう。
「そっかー、私は広く浅くだからなあ」
「あ、そういえば」
気になったことを訊く。
「日織が書いてるのはどんな小説?」
「恋愛小説だね、ミステリーは謎が難しくて書けないなぁって思って」
確かにどうやって思いつくのか分からない。でも、恋愛も同じくらい難しいと思うけど。
「恋愛もしたことあんまりないからわからないんだけどね」
ーー第二十七話につづく
【2019年】恋愛小説、青春小説
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