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『君と明日の約束を』 連載小説 第四十話 檜垣涼
檜垣涼(ひがきりょう)と申します。
小説家を目指して小説を書いています。
よろしくお願いします🌷
毎日一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています
数分でさくっと読めるようになっているので、よければ覗いてみてください!
コメントやいいねいつもありがとうございます。大歓迎です!
一つ前のお話はこちらから読めます↓
彼女の気持ちをよく理解できるくらいには僕も空腹を感じていたので、少し早かったが彼女の意見に乗ることにした。
「どこに行く? ここで食べる?」
「んー、あ。そうだいいこと思いついた」
「……なに?」
彼女がにやつく。
悪い予感を抱きながら続く言葉を促すと、
「君の働いてる所は?」
彼女が目を輝かせながら僕を見つめる。
「嫌だよ」
「なんで」
「変な誤解を……」
僕の意見は彼女の「勉強頑張ったんだからそれくらい許してよ」というよくわからない論理で押し切られ、結局僕の案内で彼女は僕のバイト先に行くことになった。混んでいたら免れられるかもという淡い期待は、昼食にしては早い今の時刻のせいで、すぐに潰された。
「いらっしゃい――……」
僕たちが入った瞬間、対応しようとした店長の顔が凍る。
中であったことは説明するのも嫌なので省略する。まとめると、大方僕の懸念通りの反応をシフトに入っていたバイト仲間全員にされ、挙げ句の果てに店長が彼女とやけに仲良くなっていた。
一つだけ可も不可もないことは、この店で一番美味しいと推されているバーガーをお勧めしたところ、彼女が脂っこいからと言って食べなかったことで、その会話を聞いていた店長が彼女にミニバーガーを作ってあげていた。
店が空いているので、数分後にはメニューが運ばれて来る。
「どうしてキッチンでバイトしようと思ったの?」
さっき彼女がメニューを見ながら料理に使われている食材を細かく訊いてきたとき、全てスラスラ答えていると、彼女が驚いたように、「全部覚えてるの?」と言った。僕は「毎週のように作ってたら覚えるよ」と返した。その続きらしい。
「家でも料理してたから、ホールよりいいかなって思って」
「えっ、家でも料理するの?」
「うん」
「買い物頼まれてるだけだと思ってたー」
以前、タイムセールの時間に合わせて帰ることを彼女に言ったけど、料理をしているとは言わなかった。
驚嘆の表情を浮かべている彼女を見て、普段人に言わないことを口に出す。
「親がシングルマザーだから」
「……そう、なんだ」
彼女は重い話になりそうだと判断したのか、少し構えた表情でつぶやく。
ーー第四十一話につづく
【2019年】恋愛小説、青春小説
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