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『君と明日の約束を』 連載小説 第十ニ話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)です。いつも覗いてくださって有難うございます。
1投稿数分で読める青春小説の投稿をしています!
全部で文庫本一冊分のボリュームです、よければ覗いてみてください!
一つ前のお話はこちらから↓

 だから放課後は読書に使えるんだ、と言う彼女に、

「よかったら……」

 慣れてないことをする。それこそひかれないだろうか。
 でも慎一にはいつも借りを作ってばかりだし、部員集めも慎一に任せっきりにするのは少し申し訳ないという気持ちがあった。

 あと、ちょっとだけ彼女の話が面白かったから。

「もしよかったらなんだけど……文芸部入らない?」

 僕の急な勧誘に彼女は目を丸くする。

「部活?」
「うん」
「えーと……」

 彼女はしばらく頭の中で何かを天秤にかけているみたいだった。少しずつ険しい顔になっていく。あまり乗り気じゃない空気。

「無理にとは言わないから全然――」
「どんなことするの?」
「ええと、基本自由で……ああいや、籍置くだけでいいんだ。部員少ないと色々――」

 そうじゃない。

「いや、三人超えないと廃部になるらしくって」
「え、そんなことになってるの!」
「そう、だから帰宅部の人を探してて……」

 手応えを感じて、説明を続ける。

「放課後に慎一と部屋で各自好きなことしてるだけだから、全然来なくてもいいし」
「じゃあ……いいよ」
「え、いいの?」

自分から誘っておきながら、十中八九断られるだろうと考えていたので、慌てる。

「なんでそんなに驚くの」
「いや、まさかこんな簡単におっけいしてくれるとは思ってなくて」
「私も本は好きだからね」
「じゃあ逆になんで今まで入らなかったの」とは聞かなかった。それよりも、お礼が先だ。
「ありがとう」
「うん。仲良い子も大人数の部活に入ってるから頼まれないだろうし……名前貸すくらいなら全然。気にしないで」

 その時、廊下の奥で生徒の騒ぐ声が聞こえてくる。僕も彼女もその音に自然と廊下へと目を向ける。移動教室の掃除をしていた生徒が帰ってきたのだろう。

「って、あ! やば」

〜〜第十三話につづく〜〜

【2019年作】恋愛小説、青春小説

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