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『君と明日の約束を』 連載小説 第十一話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)です。いつも有難うございます。
1投稿数分で読める青春小説の投稿をしています!
全部で文庫本一冊分のボリュームです、よければ覗いてみてください!
一つ前のお話はこちらから↓

「倉本さんも……本、好き?」

 頷いた彼女を覆う空気がどっと熱を持つ。それだけで彼女がかなりの本好きだと分かるくらいの熱量。

 彼女が目をきらきらさせながら訊いてくる。

「小坂くんはどんな本が好きなの?」
「えっと……ってか、掃除いいの?」

 教室の前で数人がゴミを集めているのを目の端で捉え、僕は言う。

「あ、そうだった。ありがと」

 彼女は「ちょっと片付けてくるねー」と言って当番の生徒の所に歩いて行った。

 しばらくして戻ってくると、彼女は僕の前の席の椅子をこちらに向けて座る。
 みんな部活動があるのだろう、教室にはほとんど人が残っていない。

「で! どんな小説読むの?」

 彼女が机に身を乗り出すような格好になる。近い。
 僕は少し椅子を引いてから、持っていた本を彼女に見えるよう裏返す。

「推理小説」
「小坂くんらしいね」
「らしい?」
「うん。なんとなくそんな気がした」

 彼女は意味ありげに微笑む。

「倉本さんは?」

 一応彼女に聞き返す。

「うーん、私も推理小説は結構読むなあ」
「え、そうなんだ」
「なにその顔」
「いや、なんとなく青春小説とか好きそうだなって思ってたから」
「ああ、恋愛系とかも好きだよ! 恋愛系と推理小説が同じくらい好きで、あと、SF小説とか時代小説とかも有名どころは読むって感じかなー。で、推理小説を好きなのは、一番初めに読んだ小説がミステリーだったからなんだと思う。小さい時にある子に読ませてもらって、そこからかな」

 彼女は目に光を湛えながら熱弁していた。

「本を好きになったのもそれが原因……あ、ごめんね! 私の周り小説読む子あんまりいないからテンション上がっちゃって」

 申し訳なさそうに、「ひいた?」と言う彼女。

「全然いいよ、ちょっと驚いただけ。知らなかったから」
「私が本好きなこと?」

 頷く。

「あんまり学校で読まないからね。……本は家でゆっくり読みたい派だから、いつも家に帰ってから読んでるの」

 そこではたと気づく。

「倉本さんは、部活入ってないの?」
「入ってないよ、帰宅部。私の友達はみんな何かしら入ってるんだけどね」

〜〜十二話につづく〜〜

【2019年作】恋愛小説、青春小説

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