彼我見聞録―もっくん珈琲(上)

筑波大学から北へ自転車で20分、広々としたガーデンスペースを抜けお店に入ると、そこは趣味の空間。天文にまつわる本やアクセサリー、音楽やイラスト...。コーヒーを中心に人々に憩いの場を提供し続ける、元筑波大生夫婦にインタビューします。

もっくん2 (2)

基本情報

月~土 10時~18時 日(祝)休み
※コロナの影響で営業日が不安定なため、SNSで確認してください
HP http://mokkuncafe.web.fc2.com/index.html
Twitter https://twitter.com/mokkun_cafe
Facebook https://www.facebook.com/mokkuncoffee/
Instagram https://instagram.com/mokkun_cafe

筑波大生時代~キッチンカーで創業

筑波大学生時代、同じ学類だった縁で知り合ったという川村さん夫妻。カフェ開業は奥さんの葉月さんが大学近くの『どるふ』という喫茶店でバイトをしていたことが原点だったという。初めは移動販売だったが、需要や自身のライフスタイルに合わせて形態を変化させてきた。

Q)お店のはじまりについて教えてください。

A)創業はキッチンカーで販売していたんですよ。10年前当時は、西武デパートとイオンの入口の場所、今でいうQ’t(TXつくば駅前の商業施設)の前のデッキ沿いに車を出して、ハーブティをメインにベルギーワッフルを焼きながらお客さんを待っていました。

Q) どうしてコーヒーにシフトしたのですか?

A) えーっと、ハーブティがあまり売れなかったから(笑)当時私が自然派のものに凝っていてハーブティにハマったんだけど、あまり商売の観点が無くて…コーヒーのほうがよく売れたので。

Q)何かきっかけはありましたか?

A)『つくいち』という、つくば駅で月1で行っているマーケットでコーヒーファクトリーさんに出会い、コーヒーの品質や淹れ方などを丁寧に詳しく教わったのがきっかけです。それから10年間はファクトリーさんの豆を使わせてもらって喫茶業をやっていました。焙煎を始めたのは最近なんです。

自家焙煎のきっかけーコーヒーフェス

コーヒーフェスロゴデザイン

「つくばのコーヒー文化を盛り上げたい!」を合言葉に、コーヒー・フード・雑貨があつまるフェスティバル(Home | つくばコーヒーフェスティバル公式HP)。自家焙煎コーヒー店限定のイベントで、当時自家焙煎を行っていなかった川村さん夫妻は、コーヒー店としての参加はできなかった。コーヒー豆をつかむ手をモチーフにしたロゴは夫の宜央さんが手がけた。

Q) コーヒーフェスについて教えてください。

A) 2年前にファクトリーさんと共同で企画し、つくば市にも協力をいただいて開催したイベントです。しかし、当時はうちのお店は自家焙煎を行っていなかったためコーヒー店としては参加できず、イベントが終わった後悲しくなってしまって...ファクトリーさんの豆を使って同じ目線で10年やってきたのに、自家焙煎でない時点でみんなと肩を並べられないのだな、と感じてしまって。

Q)どうしてこの場所に出店しようと考えたのですか?

長男が1年生になって、学区内にお店を開けば学童を利用しないで直接帰ってこられるという理由です。以前、別の場所で喫茶店を開店し、採算がとれなくて撤退してしまったという挫折があったのですが、コーヒーフェスでまたみんなと同じ土俵に立ちたいと考え、このお店で焙煎機を買って今の状態に至ります。

コーヒーフェス_rogo

スペシャルティコーヒー

取材中も淹れたてのコーヒーが香る。実は、もっくん珈琲が扱うコーヒーは、全て”スペシャルティコーヒー”である。

参考:日本スペシャルティコーヒー協会(http://scaj.org/about/specialty-coffee

記事掲載画像_コーヒーピラミッド

Q)スペシャルティというのは具体的に?

A)コーヒーのピラミッドがあって、全世界のコーヒーにグレードがあるんですね。いろいろな評価基準で一定以上の豆をスペシャルティと定義する基準があって。味が美味しいだけじゃなく、その農園の持続可能性があるのか、トレーサビリティといって豆がどこの農園でつくられたのか履歴が明らかであることを重視しています。

Q) スペシャルティというのは一番上のランク?

A) スペシャルティコーヒーの中でも序列はあって、トップオブスペシャルティと言われる最上級ランクのものは、仕入れ値が高すぎて扱えません。お店では、自分たちの感覚で手が出るくらいの価格が付けられる範囲のものを使っています。当店のコーヒーは、量販店などで売っているものの倍くらいの値段がついていますが、それはぼったくりではなく、仕入れ値が相応な感じです。

Q) それだけ質が良い?

A) 質がいいです。国ごとのコンテストがあって、上位入賞すると値段がつくし、農園の人にとっても値段として返ってくるからフェアな感じ。コーヒー界も発展途上で、土地ごとの特徴がよく出ていることを目指して、ワインみたいな世界にしようと頑張っている感じですね。

Q) まさに、今進めようとしている感じですか?

A) そうですね。2000年くらいから急にすすんで、値段もちょっとづつ上がっている感じです。そんなわけで、コーヒーはクラシックなおじさんの趣味というより発展途上だという意味でも、探求する価値があると思えたから、焙煎屋を開くことを創業10年目で決意したというか。

Q) 10年はすごいですね、長い。

A) 長いというか、それで生きていくしかないので、ぶらぶらやっていたら、その年月が経ちました。もともとは筑波大の地質学科にいたんですよ。2人とも修士まで取って卒業して、私も夫も一旦は普通に就職しました。でも、いつかはカフェを開きたいという夢があって、計画的ではないけど3年で会社をやめて、生きていかなければならないので業を起こすという感じだったんです。

テント販売ー「つくいち」

つくいち公式HP:「つくいち」 背景までおいしい、つくばのマーケット

Q)現在はお店以外にどのようなサービスを提供していますか?

A)キッチンカーは壊れちゃって廃車にしちゃったの。でもテントで営業許可が取れたので、今はテントでやっています。車でやっていたことをそのままテントで行っているから、変わらない印象だと思います。

Q)テントというのは?

A)折り畳み式のテントで、よくマルシェとかで立っている青い屋根の簡易式テントです。

Q)テントでもお店と同じようにスペシャルティコーヒーを提供しているのですか?

A) はい、そうです。豆販売もやりつつ、メインはドリンクの提供です。テント販売は喫茶営業なんだけど、保健所の基準を満たしたブースづくりをして、コーヒーをたてて。あとは、手作りフルーツシロップのドリンクも提供すると結構喜ばれます。この前は植物園でも営業しました。

Q) ちなみに、今後どこで行う予定ですか?

A) 『つくいち』、つくば駅前の公園のところで、毎月第二日曜日に開催しています。2008年から行っているのですが、今は運営のコアメンバーとしてやっています。他のコーヒー屋さんも出ているから、よかったらフラッと見に来られるといいのではないでしょうか。コロナで一旦中断したのですが、10月から再開しました。今後感染者がまた増えてしまったら、中止になることもあるので、SNS等でチェックをお願いできればと思います。

Q) 『つくいち』は、コーヒー屋さんだけが集まっているものですか?

A) そうではなく、もともとファーマーズマーケットがスタートなんです。農家さんが農作物を売る時に、モノづくりや飲食店、パン屋さんも一緒にということで。個人店ベースで頑張っている人を応援する意味合いもあります。品質も高く、10年続いています。

Q) つくばのコーヒー屋さん同士でも交流が多いですか?

A) もちろん、『つくいち』に出店していたコーヒー屋さんは、もともと交流があったし、コーヒーフェスティバルを開催したことで、他のコーヒー屋さんとの繋がりも深まった気がします。仲いいですよ、みんな。

『つくいち』『コーヒーフェスティバル』…街を豊かにする取り組みに、つくばのお店同士のつながりが垣間見えた。(つづく)

画像5


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?