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これ、バイト先にバレたら終わる

「お待たすぃました。ま、マンゴーソーダとホットコーヒーですぅ。」

少し笑って誤魔化す。いや、誤魔化せていない。ただ、自分の中で恥ずかしさを笑いに昇華しただけ。接客中のミス何回目だろ。うまくいった回数を数える方が早いかも。今のカフェでバイトを始めて三ヶ月が経とうとしている。接客がうまく行ったことは一度だけ。それもバイト初日。緊張でアドレナリンが爆発していた私は、初日とは思えない流暢な接客を店長に披露していた。それがどうだ、初々しい緊張感は墓地へ送られ、アドレナリンの効果が失われた今、脱力を覚えた人見知りゴブリンの効果が発動し一日一回はバイトでミスする呪いをかけられている。先日は、予備のグァパソーダをアホみたいにスキップしながら運んだもんだから、コップに注ぐときにグァパソーダが吹き出して華々しくグァパロケットを発射させてしまった。キッチンの床はグァパグァパして、甘酸っぱい匂いが信じられないくらいグァパグァパしていた。グァパロケットよ、もうこのまま飛んでいけ。飛んで、この店を破壊し、閉店させろ。頼むから。そんな夢も泡と一緒に消えて、目の前には、びしょびしょの地獄だけが広がっている。まあ、ワンオペだから隠蔽すればいいんだけどね♪。こんな感じでミスを隠し続けてきた三ヶ月、思い返せばいろんなことがあった。アルバイトという言葉を理解できていない自傷エッセイストの店長、その代表の妹で腹の底が読めない副店長、真面目なのかやりラフィーなのかわからない中途半端イケメンのバイト仲間。雑という概念を擬人化した私。そんな愉快な仲間たちと過ごすワンダフルライフ。君はされたことある?売上を伸ばす提案をしろと怒られたこと。学生なのに学生気分じゃ困るって理不尽に怒られ、自分の自己肯定感が下がるくらいミスを掘り返されたこと。勝手に期待されて、勝手に失望されたこと。ああ、人生って素晴らしいね。こんな個性豊かな人たちと働ける人生、のり弁よりも彩り豊かだね。健康になっちゃうなあ!はははは!!全ての出会いに感謝!


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