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【MMPI研究6.3】MMPI-2の内容尺度、補助尺度、PSY-5尺度~③PSY-5尺度

 「MMPIでMMPI-2を使う」ことを目指して学んでいます。「MMPI2(by1)」計画と呼んでます。その学びの一端をシェアしたいと思います。本ノートはMMPIヘビーユーザー向けです。

   MMPI-2トレーニングスライドの「内容尺度、補助尺度、PSY-5」です。       
 このセクションはMMPIでいうところの「追加尺度」。これが整理されて、「内容尺度」「補助尺度」「PSY-5」になったわけです。今回はPSY-5尺度。


パーソナリティ精神病理学5 (PSY-5)
 
人格障害は正常な人格のバリエーションなのか?
・Costa,Widigerと5因子モデル
 ―外向性
 ―調和性
 ―誠実性
 ―神経症的傾向
 ―経験への開放性
・語彙的アプローチに基づく5因子モデル
 ―Allportと辞書
 ―非評価的な用語
PSY-5: 背景
・Harkness(1992)は、一般の人がパーソナリティとその障害をどのように記述するかを調べた。
・DSM-III-R人格障害の基準を、素朴な言葉に「翻訳」 され、他の人格の記述とともに提示され、評価する人に、記述同士の類似性を判断するよう評価するよう求められた。
・60 のパーソナリティの記述のクラスターがみいだされた。
・Harkness とMcNulty (1994) は、60のクラスターの一般人ベースの類似性分析をさらに実施し、5つの因子を導き出した。 そしてPSY-5が構成された。
PSY-5 および DSM-5 セクションIII (※1)
PSY-5 : DSM-5 セクションIII 特性領域
攻撃性 : 対立
精神病性 : 精神病性
非抑制性 : 脱抑制
否定的情動性・神経症性 : 否定的感情
内向・低肯定感情 :離脱

PSY-5: 尺度の構成
Harkness、McNulty、Ben-Porath (1995)
 ―論理的な選択が複製された。
 ―専門家のレビュー
 ―心理測定パフォーマンスレビュー
PSY-5尺度
・症状ではなく人格特性を測定するため、より長期に継続する病理である。
・問題が慢性的であることだけでなく、根底にある人格特性/病理を決定するのに役立ち、治療療計画における重要性があると見込まれる
・ 65のT値は上昇したとみなされる
・あてはまるなら、T<40は低スコアと見なされる

PSY-5 攻撃性 (AGGR)
・道具的攻撃性(※2)を測定する
―他人を脅かすことを楽しむ
―支配と憎しみとが結びついている
―攻撃的、道具的攻撃性
―身体的虐待の経歴がある可能性が高い
―セラピストによって反社会的として評価され、攻撃的な特徴を持っている
―男性は家庭内暴力、女性は逮捕の経歴がある。
・誇大的な態度
・自己主張的/社会的な能力がある
・低得点者は依存的で、受動―従順的であり、自尊心が低い
PSY-5 精神病性 (PSYC)
・現実からの断絶を評価する
―共有されていない信念
―異常な感覚的および知覚的経験
―疎外感
―非現実的な迫害感
―現実からの断絶
PSY-5 非抑制性(DISC)
・行動上の脱抑制と刺激欲求を測定する
 ―危険を冒す
 ―衝動的
 ―社会規範に不適合
 ―すぐにあきる
 ―反社会的
・低いスコア
 ―自己コントロールが強い
 ―規則に従う
PSY-5 否定的情動性・神経症性(NINE)
・否定的な情動・気分を経験する傾向を測定する。
 ― 嫌悪的な出来事の回避
 ―不安, 心配しやすい
 ―過度に自己批判的
 ―罪悪感
 ―取り越し苦労する
 ―ネガティブに焦点を当てる
PSY-5 内向・低肯定感情(INTR)
・快楽の能力を測定する
 ―喜びを経験する能力
 ―肯定的なものへの没頭(※3)
・高いスコアと関連するもの
 ―悲しみ
 ― 不快感
 ―内向性
 ―社会的ひきこもり
・低いスコアと関連するもの
 ―外向性
 ―活動的
 ―社会活動への没頭

https://www.upress.umn.edu/test-division/mtdda/webdocs/mmpi-2-training-slides/interpretation-of-mmpi-2-content-supplementary-and-psy-5-scales
P24~29



[注釈へのコメント] 
(※1)図表の補足
 DSM-5とPSY-5の対応をより詳細に示すと以下の図になります。

DSM-5第3部の代替診断モデルの6種のパーソナリティ障害と病的パーソナリティ特性との関連+PSY5
パーソナリティ障害 - 脳科学辞典 (neuroinf.jp) より改変

(※2)道具的攻撃性  instrumental aggression

~前略~ 攻撃行動はこれまで、生じるメカニズムやその行動の働きの観点から、大きく能動的攻撃(proactive aggression)と反応的攻撃(reactive aggression)とに分類されてきました。能動的攻撃は道具的攻撃(instrumental aggression)とも呼ばれ、人を傷つけること以外の目標を果たすために、手段として攻撃行動を用いるもので、怒りの喚起・表出を伴わない攻撃行動です。 ~後略~

http://www.human.tsukuba.ac.jp/psyche/college/digitalbook/pageindices/index18.html#page=19

(※3)肯定的なものへの没頭 positive engagement
「engagement」を調べてみると
・組織心理学では

~仕事に対するポジティブな感情で、定義としては『活力』『熱意』『没頭』という3つの要素で特徴付けられるものです。~

https://shiruto.jp/business/3632/

・ポジティブ心理学では

“‘Engagement’, in terms of positive psychology, describes a specific way of being involved with a task. It is often described as being so invested in a task that time flies by. Another name for this is ‘flow’”

https://schools.au.reachout.com/articles/engagement-and-positive-psychology#:~:text='Engagement'%2C%20in%20terms%20of,at%20a%20task%20(e.g.%20maths)

[コメント]
 PSY-5は、MMPI-2以降、MMPI-3にも引き継がれています。上記の記載からは詳細がわからないけれど、どうやらビックファイブ(性格の5因子)の研究をベースにしているようです。でも尺度作成の実際的な基盤は、「人格障害」概念。そしてなによりDSM-5に対応しています。

 DSM-5秒的パーソナリティ特性 ⇔ MMPI PSY-5 ⇔ 性格5因子 

 という関連・対応があるようです。(DSMー5と性格5因子もリンクするのでしょうか?)

 測定するのが、まさに「人格」。これは「慢性的」で「長期に継続する」もの。「根底の」傾向。このあたりの表現が、どうにもピンとこないというか、ちょっと眉唾をしてしまうところがあります。だってそもそも「人格」検査のMMPI。検査全体が「人格」=慢性的で長期に継続する根底的傾向を図ってるのとちがう?そんなこといったら変動する可変的な「症状」ってなによ?それって「人格」なん?・・・・・・といった疑問はでてきてしまいます。
 この尺度の理念・設計が、「根底の人格特性」に焦点をあてているもの、なのでしょう。ぼくの現場の実感としては、MMPI/MMPI-2の2点コードの記述の一部は「慢性的に長期継続する根底の」要素じゃないかなあ、とおもっております。その意味じゃスコアの高低こそ変動があっても5つ尺度のパタンは固有の人格を描く、のだったりするのかな。TEGみたいに。
 いずれにしても使用してみないことによくわかりません。MMPI2(by1)計画をしていて少しつかってみてはいますが・・・・・まだよくわかりません。

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