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#2 【見えない苛立ちと時計】


二人だけの世界はどこにでもある。
例えば、机の中。ノートの中。
芸術の中。頭の中。

「大丈夫」とか「ありがとう」
その言葉が鼓膜を揺らし、
体を押した時、身震いを起こして、
あなたの胸へ倒れ込む。
心地よい窮屈さと、不安のない真っ暗な目の前には勇気と吸収。

せっかくあなたは白いシャツを
着ていたのに、そこだけ黒ずんだ。
どこにもいたあなたは、
いつも笑っている。

濃く光るカーテンの向こう側、
それを想像して、二人は笑う。
さすがのくだらなさに、
おかしくなってしまう。
風が吹き、カーテンとあなたの
香りが目の前で舞い上がり、
教室の隅々まで、
その粒子で埋め尽くす。

あなたは、
僕の腕枕で天井をみている。
あなたと同じ場所を見た。
その時、秒針の音が遅くなった。
あなたといる時くらい、時計の数字が
増えればいいのに。それか、
時計が街を覆うくらい、
とてつもなく大きければ、
進む時間が遅れるのでは
ないだろうか。

その時、
一本の管が2人の脳みそを繋げた。
ぼくらは、
何もかもどうでも良くなった。
世の中の難題を丁寧に軽んじて、
お互いの目から、全てを覗き込んだ。
自分の時間がどこにあるのかも。

この二人の時間が、
どこまでも続くのなら、
健康で生きていたい。
時計を壊して。

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