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下請けの仕事がメインの中小企業が抱える課題と解決策

先日23日、関西エリアの製造業・メーカー系企業で働く人のコミュニティ
関西メーカーサポートプロジェクト(通称カンサポ)
主催のウェビナー「製造業で働くエンジニアのこれから vol.02」に視聴参加させていただきました。

当日のゲストは、京都の中小製造会社で自社の強みを活かした新規事業立上げに成功し、現在は経営コンサルタント/事業再生士として、製造業はじめと多くの中小企業をサポートをされている澤田晃仁さんでした。

澤田さん自身、以前に下請メインの中小製造企業で、営業/製造部門管理者/商品開発責任者を兼任し、新規事業の立上げをする中で、こうしたタイプの中小企業が抱える様々な課題と、それを打破するための取り組みをお聴きしました。

私自身、転職エージェントとして8年以上、中小製造業に特化して採用支援をさせていただく中で、共感する部分が多々ありました。

この記事では、先日のウェビナーを通じて、私自身が感じたこと(課題感と解決策)についてお話いたします。
中小製造業の課題および成功事例は、今回取り上げる内容以外に様々なものがあると思います。今回は一つの視点として参考になればと思います。

当日澤田さんがお話された体験内容を詳しく知りたい方は、下記カンサポさんのURLからメール登録をお願いします。
当日のアーカイブ動画がご覧になれます。
https://4510.omoroiworks.com/project_kmsp/kmspevents/20230207-12663/

オモシゴジャーナル|カンサポ

■ 澤田晃仁さん略歴

ウェビナーで登壇された澤田さんの略歴を改めて紹介いたします。

大学卒業後、地方銀行で13年間勤務後、京都の中小製造業(下請けがメインの電子デバイス製造会社|社員40名、パート等含めて100名程度)に転職。

約4年間、営業/製造部門管理者/商品開発責任者を兼任し、自社の強み新規事業の立上げに成功。

現在は経営コンサルタント/事業再生士として、製造業はじめとする多くの中小企業をサポートをされています。
■澤田さん経営の会社:合同会社Libra近江:https://libraohmi.co.jp/

【課題①】下請けメインで付加価値が取れない

中小企業の中には、大手製造メーカーの下請けの仕事をメインとしている会社が少なくありません。
脱下請けをしないといけないと考える経営者は多い一方、日々のご飯を食べていく上でもそれが必要であるのが現実としてある、と澤田さんは言います。

私自身、採用支援という形で多くの中小企業様を回らせていただく中で、多くの企業で「年収条件」が一つの課題になっています。
他社も条件を上げている中で、上げなくてはいけないとわかっていてもそれが十分にできない会社もあります。

上げられない要因としては、会社として上げられている利益が少ない、付加価値が取れていないことがあります。
大手メーカーから製造という部分だけを担っているため、大手メーカーのエンドユーザーから直接要望を聞き、それに対して付加価値を付けた提案をする、ということがありません。

自社ブランド品であれば、エンドユーザーとのやり取りがあるためそれを嫌でもしなくてはいけなくなります。
しかし、下請けの仕事になると、大手メーカーから依頼された製造をこなすだけに留まり、どうしても付加価値がつけにくく、製造面で改善の工夫をするしかなくなります。

中には、大手メーカーから厚い信頼を受け、製品仕様に関わるところへの提言をしたり、エンドユーザーとの打ち合わせにも参加している会社もあります。
そうした会社は、製造面の改善だけにとどまらない視点で提案をして、付加価値を付けることをしていますが、まだ少数派と言えるでしょう。

また、長く取引をしていると、その分下請け側も依存度が強くなり、なかなか価格転嫁がしにくくなり、付加価値が取れなくなる一因となります。

付加価値が取りにくいものからの依存から脱却する動きが必要となります。

【課題②】新しい事をしようとする人材がいない

エンドユーザーに対する付加価値提案をしようと思えば、

  • 顧客からの要望を聞き取る

  • その要望から、顧客の真の課題をキャッチする

  • それを解決できるものを考え出し、提案する

こうしたプロセスが求められます。
このプロセスには、真の課題をキャッチする、解決法を考え出すという「新しいことを考え生み出す」という行動が求められます。

私自身、様々な企業とお会いした経験。また業界は異なるものの私自身がこれまで様々なサイズ感の会社に在籍してきた経験から、「新しいことを考え生み出す」行動は、自らそれを必要と思い、行動を起こさないと定着しないものです。

しかし、依頼された製造をするだけのような仕事が続くと、どうしても新しいことをする意欲が育ちにくくなります。新しい事をする、ということを求められないからです。

製造受託の仕事だと納期があり、時には休日出勤を辞さない覚悟で間に合わせるため、仕事をサボらず真面目に取り組む人が多くなり、それは会社としての強みになります。

それが行き過ぎると「言われたことはきちんとこなすが、それ以上のことはしない」となりかねません。
澤田さんも、当時の課題として「サボることはないが、新しい事をする意欲がなく、そういう風になりがち」ということを挙げておられました。

実際、いざ新しいことをしようと考え、社内で新規事業や真新しいアイデアを募っても、普段から考えていない状況であれば、良いアイデアが出ないどころか、発言すら出てこない、という状況にもなり得ます。

普段から「新しい事を考える」ことをしていないと、それを担える人は不足したまま。脱下請けの起点を作ることも難しくなります。

〖解決策①〗新しい事をする人材の育成

下請けから脱却するには、付加価値を付けたモノづくりをすること。それを担う人材を増やしていくことが大切になります。
根幹になるのは、やはり人材育成、教育と言えるでしょう。

3-1 人材育成を粘り強く進める

ただ、人材育成をする、挑戦できる人材を増やすといっても、決して簡単な事ではありません。

澤田さんも、『製造に力を入れていると、現場レベルでは作業に追われる、納期に間に合わせないといけない、という中で、どうしても教育を受ける暇がないと考える。「今忙しいのに…」となってしまう。』とお話しされました。
一方、それであっても、『人材育成、教育はやり続けないといけない』とも仰っています。

人材育成をする上で、同じ習慣の中で仕事をしてきた人が変わるのは、容易ではありません。

人材育成をするには、まず経営陣が育成に対してコミットしている事。
ただ経営陣が本気であっても、育成の実務まで経営陣が直接できない会社が非常に多いと思います。

育成の実務を推進するうえで、

  1. 社内で適任者を抜擢する

  2. 抜擢者に一定の権限を与える

  3. 経営陣がきちんと後ろ盾になるバックアップする

事が大切と思います。
特に3.はかなり重要ポイントでしょう。

人のそれまでの行動習慣を変えるのはかなりのエネルギーが必要。変わっていく過程で、変わりたくない人、素直でない人からの反発や無気力対応という抵抗も起こります。
真面目だが勉強が苦手な人であれば、そもそも新しいことが理解できない、という事も起こります。
そうなった時、育成の実務担当者がいくら優秀であっても、一人で変えていくことは非常に困難です。

そんな時、経営陣という社内でもっとも強い力を持つ人が後ろ盾にあると、影響力が格段に上がります。
教育には粘り強さが求められること自体は変わりませんが、粘り切るだけの力を得ることができます。

もし、社内で抜擢できる人材がいなければ、この時は中途採用で人を採用する、という事も検討の余地があると思います。
社外から採用した場合も、

  1. 経営陣が後ろ盾になりバックアップする

  2. 早急な改革を求めず、まずは現社員との関係性構築をさせること

こうした配慮が必要になるでしょう。

3-2 挑戦しやすい環境を作る

また、育成をするには挑戦ができる環境を作ることも大切です。
製造業であれば、新規開発がありますが、これも一定以上のコストと時間がかかります。

そして、成功する確率よりも失敗する確率の方がはるかに高いものです。
多くの企業で、開発を始めてモノになるのに早くても3年。ある程度腰を据えて取り組むとして、5年みる企業も多くあります。

新しい事をするのに挑戦は切っても切り離せないものですが、失敗するたびにペナルティが付いたり、査定で大きなマイナスをつけられたりすると、ほとんどの方が挑戦をしようとは考えなくなります。
(もちろん、失敗した時になぜ失敗をしたのかを検証し、改善をすることは絶対必要です)。

この点についても、経営陣が挑戦することに対して理解がある事が必要となります。
ある程度コストがかかる事は覚悟し、それも人材育成のための投資と思って挑戦にゴーサインを出す、という事が大切と思います。

〖解決策②〗自社の強みを活かす

4-1 自社分析をする

特に、一定の歴史がある会社であれば、続いているだけの理由が必ずあるはずです。
それは、他社ではできない短納期対応力、様々な製造工程をワンストップでできる一貫体制、品質、など、何かあると思います。

自社分析には、3C分析、5フォース分析、SWOT分析など様々な手法があり、こうした分析を経て他社よりも秀でた部分が見つかります。

こうした分析をリードできる人材が揃った上で、社内の有力メンバーと一緒に行う。リードできる人材がいなければ、外部から招聘してそれを行うなどして、自社の強みを見出すことが重要です。

澤田さんは、こうした分析の他に、『今取引のある顧客から「なぜ当社に発注をいただけているのか」をヒアリングすることも効果的』とお話されています。

自分たちには何のとりえもない、という意識から脱却することです。

4-2 拡販方法を考える

新規商品を作り出せたとしても、それまでそうした拡販をしたことがない会社が、それを効果的にすることは難易度が高いものになります。

澤田さんも『下請けの会社は商流がない。商流作りは慎重になるべき』とお話しされています。

いわゆる新規開拓が必要となります。
とはいえ、根性一辺倒な新規開拓ではなく、人脈を活用する。SNSの活用。プレスリリースなど広報的な戦略を考えるなど、様々な視点で自社の認知をしてもらう活動が必要です。

この辺りは、拡販を効果的に成功させた人を一時的に招へいする等、外部人材に素直に頼ることが必要でしょう。

■ まとめ

今は有名大手企業であっても、気が付けば市場シェアを奪われ、利益を出せず凋落していく会社もあります。

一方、中小規模ながらも強みを活かし、他社にはない付加価値を市場に提供し長く生き残っている会社もあります。
更にその中でも、収益を従業員に積極的に還元する会社であれば、大手企業に匹敵する位の年収を得ている人もいます。

会社も人材も、いかに自身の付加価値を考え生み出し、発信をしていくか。
私自身、採用支援の人間として、また自社の事業をみる人間として、容易ではないながらも可能性はある、と改めて思えました。

最後までお読みいただきまして有難うございます。

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