退職理由を正直に言っても、何も問題がなかった話~「戦力外で退職しました」~
私は現在、京都地場の人材サービス会社で、「転職エージェント」と、「採用担当」の仕事をしております。
人材業界に20年間携わり、現在45歳で、これまで5回転職を経験しました。
20年のうち、転職エージェント9年、再就職支援3年と、20~60代の方まで様々な方の転職支援を経験し、今の会社では自社の採用担当もさせていただいています。
こんな私ですが、前職の会社(転職エージェントの仕事)は、個人成績が約1年強不振に陥り、戦力外となって退職をしました。
この時の転職(再就職)活動も、人材業界で同じような仕事か、未経験で可能性はかなり少ないが人事(採用担当)の仕事を目指しました。
ただ、やはり退職理由として「戦力外になりました」とはなかなか言いにくいな、と、チラッと感じました。
ただ、普段から求職者の方には、退職理由は正直に伝えていくことを奨めていましたし、転職活動をうまくいかせるうえでも、その方が効果的と考えていました。
それもあり、この時の私自身の転職活動においても、面接で退職理由は全て正直に伝えました。
結果としては、
43歳で転職5回目、この時の退職理由を考慮すれば、想定外に面接を受けさせていただけたと思っています(転職エージェント業界内では、応募から面接までの移行率は30%が一つの目安)。
この記事では、転職支援の実務経験と、私自身も退職理由を正直に話した体験から、
・どうして、退職理由を正直に話した方が良かったのか
・退職理由を話すときに心がけていたこと
について、体験談ベースでお話させていただきます。
一個人の経験にとどまる話ではありますが、求職中の方で、退職理由をどう答えるかお悩みの方にとって、何かしら参考になれば何よりです。
① 退職理由を正直に話した理由
1-1 話に具体性がなくなるから
退職理由を話す際、言いたくないことを隠そうと思えば、本当の理由に代わる内容で話さなくてはいけません。
私の場合は「戦力外で退職しました」でしたが、これを隠すのであれば、例えば、
「これまでの経験をより活かせる職場でキャリアアップを目指すため」
「事業方針が変わったことをきっかけに、自身の専門領域をより活かせるところを目指して」
などの言い方になるでしょうか。
このように企業側に伝えた場合、次の展開としては、
「今の職場では活かせない、ということですか?」
「事業方針が変わった、というのは、具体的にどういうことですか?」
と訊かれ、さらには、
「今の職場で最大限、ご自身の力を活かす努力はされましたか?」
「事業方針が変わって、そこに合わせられなかったことを、ご自身ではどのように思っていますか?」
などと訊かれるかもしれません。
もし「事業方針の変更」や「今の職場環境」が一番大きな、本当の理由であるならば、この辺りの状況を正直に(批判的にならないように注意する)伝えればよいでしょう。
実際、嘘ではない分、具体的に話すことができて、話に信ぴょう性が出てきます。
しかし、本当の理由でないと、悪く言えば随所に作り話を織り交ぜて、話をしなくてはいけなくなります。
ただ、作り話はやはり真実ではないため、具体性に乏しかったり、突っ込まれれば矛盾点が出てきます。
ましてや、履歴書、職務経歴書にこれまでのキャリアが書かれています(書類に本当のことを書かない、ということも可能性としてはありますが)。
勘のいい採用担当者であれば、それを読み込めば「あ、それ、本当の理由じゃないな」「多分この人の能力不足で数字出せなかったんじゃないか」と見抜かれます。
作り話や嘘がうまい方も中にはいらっしゃいますが、それらしい話を作って話をすることだけでも、かなり難易度が高くなります。
1-2 顔に出るから
作り話をした場合、バレてはいけないというプレッシャーがかかる為、それがしぐさに出たり、顔に出やすくなったりします。
話から見て目線が右上に向いた場合、嘘のサインだという話もあるくらいです。顔に出さないということも、とても難しいことです。
また、私の場合は良くも悪くも嘘を言うのが苦手で、面接のような緊張した場面で、本当のことを隠して話すこと自体に自信が持てず、気が進みませんでした。
1-3 自分のスキルを正確に理解してもらう
「戦力外になった」ことは事実で、当時を振り返っても、私の方で様々に至らない点、能力不足な点がありました。
そして、自分ができてている点、できていない点も含めて、それが私のスキルになります。
次の会社で私が力を発揮し、二度と戦力外で退職にならないようにするのであれば、私のスキルでは成果が出せないような会社、仕事を選んではいけませんし、企業側から間違った評価をされて入社になっても、不幸なことが起こります。
自分のスキルを正確に理解してもらうことは、結局は入社してからの事を思えば、重要な事です。
1-4 バレた時に信頼関係が一気に崩れる
嘘だとバレた時、それが重大な事であればあるほど、信頼関係は大きく崩れ、それを作り直すことは難しくなります。
もし面接時点でバレれば、不採用になってその時点で終わりますが、入社をしてからバレた場合、社内の雰囲気も険悪になり、仕事を任せる任せない、最悪、退職するしない等で揉める可能性も出てきます。
② 退職理由を話すときに心がけていたこと
2-1 至らなかった点を、客観的に話す
退職理由として起こってしまったことは、もう変えようがありません。
起こったことに対して、まず様々な視点から振り返り、
1.どうしてその結果になったのか?
2.自分として何が至らなかったのか?
を、自分事ととらえて話すようにします。
起こったことには、必ず原因があり、そこには、自分としてできなかったこと、すべきだったことなどが必ずあります。
次に同じ失敗をしないためには、その原因を振り返り、そうならないための対策、改善方法を考える。
転職活動においても、そこは何ら変わりありません。
2-2 これからどうしていくのか、を具体的に話す
振り返りをした上で、
1.同じ失敗をしないための対策
2.今後、活かしていく自分のスキル、専門領域
を、具体的に話をしていきます。
ポイントとしては、特に2.については応募企業ごとに良く分析をして話ができるようにします。
私の場合は、戦力外での退職でしたが、その会社で戦力外になっただけで、自分の中で得意な領域は複数ありました。
応募する会社の募集案件ごとに、自分のどの領域、どんな仕事の進め方、専門知識が生かせるか、を分析した上で、逆にPRするようにしました。
2-3 意気込みを伝える
後ろ向きな退職理由だと、どうしても気持ちが引き気味になるかも知れません。
でも、採用側としては、戦力になる人を欲しているし、失敗したのであれば、そこから学び、果敢に挑む人を求めるでしょう。
次は改善をした上で、成果を上げます!と気持ちを伝えるよにしました。
事例:私の退職理由の答え方
前回、私が転職活動をした時、退職理由は次のように話をしていました。
「お恥ずかしい話、今の会社では昨年の数字が非常に悪く、今年になってある程度持ち直したものの、会社が求める基準に達せず、戦力外で退職することとなりました。
実績を上げていたときは、チームメンバーとコラボして、協力しながら数字を上げることができていましたが、数字を落とした時は、私のやりたい事とチームメンバーとのそれがズレていくのを感じていて、私のほうで協力を取り付けながら進めていく、ということができす、こうなってしまったと思っています。
ただ、これからも私は転職エージェントの仕事でキャリアを作っていきたいと思っていますし、関西の中堅中小の製造業に特化してやってきましたので、これからもその経験を活かしながら、次の会社で業績向上に貢献していきたいと考えております。」
これに対する、当時、面接を受けた会社の反応は、
その他、面接に進んだ会社は3社あり、人材サービス会社1社はかなり色々と突っ込まれて、選考お見送り。
別の人材紹介会社1社はさほど突っ込まれることはありませんでしたが、選考お見送り。
もう1社、サービス業(人事職)は、そもそも聞かれることはなく、条件交渉まで進むも、条件合わずお見送りとなりました。
この転職活動では、実際には、書類選考の段階でお見送りとなり、アピールする機会が得られなかった会社も多くありました。
あくまで面接での企業側の反応として紹介させていただきましたが、大切なのは、振り返りの内容と、その内容を踏まえて次にどうしていくのか、なのだと個人の経験から感じました。
また、正直に話をすることで、面接官の方と腹を割って話をすることができました。限られた時間の中で、面接に臨んだ全ての会社で濃い時間にすることができたと思っています。
Column:本当のことを伝えなかった、あるエージェントの対応
当時の転職活動では、私自身も数社の転職エージェントに連絡し、求人紹介を依頼しました。
退職理由についても、当然全て包み隠さずお伝えしました。エージェントにも、うまい言葉で推薦する企業をごまかすのではなく、正直に伝えていただくことを意図していたからです。
ところが、ある大手エージェントは、応募を依頼した際、退職理由について次のような対応をした、と連絡がありました。
この対応に、私は率直にガッカリしました。
勿論、この担当者は、応募する企業の考え方、関係性、良い部分を引き出すなど、色々なことを考慮してこのようにされたのでしょう。
また、正直にと言っても、常にマイナスな言い方をすることではありません。
まずは面接の機会を得ることが大事、と考えてそうしたのかもしれません。
しかし、この”推薦文”は、私の言葉ではなく、本音もありません。そもそも、本当のことを隠してくださいと、私からお願いもしていません。
また、エージェント(推薦する立場)は、良い部分も悪い部分も全て取り込み、総合的に見てその企業に合う部分を見出し、推薦することが仕事だと思っています。
総合的な観点から推薦をして、それで面接に行けないのであれば、仮に面接に進んだとしても、良い結果は得られないと、私は考えています。
その意味で、この担当者は、悪い部分に目を背け、総合的な観点での推薦をして頂けなかったのだと思います。
③ まとめ
面接における、退職理由を答える部分は、ネガティブな内容を含むものになるため、どのように答えてもマイナス評価にこそなってもプラス評価にはなかなかなりません。
退職理由はできるだけ簡潔に話し、長く話さないことを推奨する方も過去にいらっしゃいましたが、情報開示が少なければ、色々と質問を重ねて深堀をしてくる面接官も多く、隠しているように思われれば逆効果となります。
どのみち、プラス評価になりにくい部分ですので、最初から本音を話し、これからどうしていくか、という未来の話をして頂く方が、お互いに理解が深まり、合わない会社に間違って行くことなく、合うべき会社に転職ができるようになると思います。
このお話が、何かの参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきまして有難うございました。
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