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現役転職エージェントが思う、今の転職エージェント業界の問題点【1】連絡がしつこい、わずらわしい

リフレッシュタイムであるお昼休憩や、電車移動中、運転中などの会話が難しい時間。業務時間中で、明らかに携帯電話を触れないような時間。家族や友人とのご予定が入っている時間。

こうした時間にもかかわらず、転職エージェントから何度も電話がかかってきたり、しつこくメールが届く。
こうした転職エージェントによる対応に不快感を持ち、しつこい、わずらわしいと感じさせているのをよく聞きます。

求職者の方にとって、転職活動に対する優先度自体は高くはなるものの、とはいえ、現職の仕事、プライベート、家族のことなど、転職活動以外に大切なことは沢山あり、時には何も考えず休憩したい、という時もあります。

この記事では、どうしてこういう問題が起こるのか?その背景をまずは取り上げ、その上で、あるべき連絡の姿について、私が思うことをお話しさせていただきます。


① 転職エージェント側の心理

転職エージェントは、求職者に対する求人紹介とそこに紐づく転職サポートをビジネスとして行っており、自社から紹介した案件で求職者の採用が決まり(社内では成約と呼んでいます)、入社までに至るということが、ビジネスとしてのゴールとなります(その後のアフターフォローなどの考え方については、また別の記事で取り上げたいと思います)。

成約をする上で、「連絡」という面でエージェントが重視しているのが、【スピード対応 × 密な連絡】です。

それは、転職エージェントは他にもたくさんいて、求職者は複数のエージェントに登録をしているケースが多いため、他社よりも先んじて連絡を取り、求人を紹介し、速やかに案件を進行させることで、ライバルのエージェントに先を越されないようにしたい、と強く考えています。

1-1 登録して5分で電話がかかってくる理由

みなさんが転職エージェントにはじめて登録をした時、登録をして5分と経たないのにすぐに電話がかかってきた、という経験はないでしょうか?

それは、求職者に登録いただいたとしても、他のエージェント会社でどんどん面談予定が入り自社からの連絡が遅れてしまうと、求職者と連絡が取れなくなってしまい、面談実施もできない、ということが実際に起こります。

エージェントの中では、求職者に登録いただい時点から、他社との競争が始まっているのです。
私が以前在籍していた会社でも、登録後の対応フローがあり、その実施を徹底していました。

求職者が登録した直後、仕事中などですぐに電話が取れない状況と予想されるのにもかかわらず、どんどん電話がかかってくるのはこうした状況があるからです。

1-2 電話連絡がやたらと多い理由

新しい求人の紹介、紹介済み案件の応募可否の確認、選考連絡(特に書類選考や面接が通過した時など)、企業に対してフィードバックしなくてはいけない内容の確認連絡など、様々なシーンがあるたびに電話がかかってきます。

これは、いつ他社エージェントに持っていかれるか分からない、というエージェント側の危機感から来るものです。

確かに、複数のエージェントがかかわり、求職者自身の自己応募の行動、また求人企業側が採用活動をしていることもあって、転職活動は日々日々変化していきます。

3日前まではよく連絡が取れていた求職者が、急に連絡が取りにくくなった。
聞けば、他の案件で話が進んできて、それに伴って連絡が取りにくくなった、という話はとても多いのです。

エージェントには、こうした事への危機感が強く、何かあればいち早く連絡を取り、直接話をしたい、今の求職者の状況を確認したいと思っています。
必然的に、発信するメールの本数も多くなっていきます。

また、エージェントは企業がお客様でもあります。
企業に対して、エージェントとしても求職者の様々な情報を早く提供し、コミュニケーションをとることにより、企業からの信頼を得たいという心理もあります。

求職者の立場からすれば、今この時間は電話に出られるないのが分かっているはずなのに、どんどん連絡が来るのはこういう状況があるからです。

② スピード対応の是非

ただ、スピード対応自体が悪いという事では、勿論ありません。

登録後5分以内の連絡も、現実的に複数のエージェントが存在してる中で、早く連絡を取る事は当然必要です。
同時に、早く面談予約を設定すること自体は求職者にとって悪い事ではないはずです(急ぎではないという求職者はまた別の話になると思います)。

求職者へのメリットで言えば、選考結果は良い結果もそうでない結果も、早めに伝えることで次の行動をすぐ取れます

新着求人も、他の求職者が応募する前に応募した方がライバルが減り、有利になります(総じて早く採用したいと企業側が考えている中途採用においては特に)。

求職者側から質問されたこと、確認依頼をされたことも、早く確認をして早く知らせてもらえた方が当然良いものです(待たされて嬉しいと感じる方は、そうそういらっしゃらない)。

「スピードは誠意」という言葉を使う方がいらっしゃるように、求職者との信頼関係を築き、転職活動を効率よく進め、成功させるためにはスピードは非常に重要になります。
取り急ぎの一方報告、という形でのメールも増えてきますが、是もスピードは誠意の一つの表れと思います。

③ 問題点

スピード対応が非常に重要であるのにもかかわらず、求職者から「しつこい」「わずらわしい」と思わるのは、私はエージェント都合でやってしまっていることにあると考えています。

3-1 考えてみれば、効率が悪い

考えてみれば、仕事中だと予想される時間に、会社にバレたくないであろう転職のことで電話が来ても、そういう話を社内でしたがらない方が自然と思います(そもそも物理的に電話を取れる状態でなく、話せない可能性が高い)。

求職者の仕事が終わった後であっても、通勤電車に乗っている時間であれば、電話で話しにくくなります。

冷静に考えればわかるはずなのですが、エージェント側にある、他社に先を越されてはならない事への焦り(危機感を通り越して)がこの冷静さを失わせているのだと、私は思っています。

3-2 今は電話に出たらがらない人も多い

今はスマホが世間で普及し、デジタルネイティブ世代の人が多く社会に出ています。
また、社会問題となっている詐欺事件の影響もあり、見知らぬ人と電話で話すことの負担感、抵抗感が増し、電話に出たがらない人が増えています(私自身も、以前よりも電話で話すことへの抵抗感は増している気がします)。

そうした状況も、エージェント側としてはもっと理解をしておく必要があると、私は思っています。


④ まとめ~ 一つの配慮を加える ~

こうした状況で、エージェント側はスピード対応をしながらも、求職者に受け入れてもらえ、求職者にとってプラスになるかかわり方が必要と感じています。

この「連絡」について、私が実践していることを紹介させていただきます。

  • 登録後の連絡は、メール+SMSをして、午前中にレスがなかった場合はお昼または夕方に電話を入れる。

  • 上記で、もしメールよりも先に電話をする場合は、つながらなければ必ず留守番電話を入れるか、留守電にならなかった場合は、後で送るメールで先に架電したことを添える。もし電話がつながった場合は、1分話せる時間があるか確認し、実際に1分で終わらせる。

  • 案件紹介はじめ、ある程度話す時間が必要な内容で、電話で直接話をしたい場合は、あらかじめメールやSMSなどで電話したい旨を伝え、電話が可能な時間帯を確認してから電話をする。

  • 電話でも伝わりにくい内容や、もう少し込み入った相談をする場合は、オンラインで打ち合わせをする時間をいただく。

心がけているのは、求職者が、私たちエージェントが連絡を取りたい時、

  • 実際に電話が取れる状態なのか?

  • 電話を避ける人ではないか?

をまず考えます。
その上で、事前に確認を取りながら連絡を取るようにします。
かつてよりも、ひと手間かけることで求職者への配慮を一つ加えることができ、その後気持ちよく話ができるようになればと考えています。

エージェント側のスピード対応自体は、これからも必要とされるもの。
そこに加えて、エージェント側の辛抱、焦りに巻き込まれないという事も、大切なことだと考えています。

最後までお読みいただきまして有難うございました。

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